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ストーリーは背景である

物販をしている中で「ストーリー」という単語を非常によく聞くようになった。

おそらく、オンラインでの購買やD2Cという形態が認知を広めるとともに広がりつつある、一種のバズワードのようにもなっていると感じる。
私自身、自分の言葉で記事を書きながら、製品やブランドにまつわるストーリーを発信していた人間の一人だという自覚はある。

と、同時に早くも「ストーリー疲れ」が起きているという記事を読んだ。
こういった流れの中で思うところがあったのであくまで一人の意見として見てほしい。

そもそも、ストーリーとは...

事業者が売るものはサービスとか、プロダクトとかといったもので
おそらく「ストーリー売りまっせ」という会社は(あるかもしれないけど)そんなにないと思う。
創業に至るまでの道のりだとか、商品の企画や制作のプロセスで生まれたドラマとか、販売をする中での苦悩や苦渋の選択の記録、そういったストーリーは

言って仕舞えば、「背景」である。

背景、という以上はメインではない。
プロダクトやサービスをほんのりと彩る、そう言った背景がストーリーだと解釈している。

本来、ストーリーはプロダクトの後ろにあるものであって
以前までの流れで言えばプロダクトを知って、ストーリーを知る、という流れだったんじゃないかと思う。

ある程度有名ならブランド→プロダクト→ストーリーかもしれない。
ある種、そのブランドやプロダクトのストーリーを語れるのは玄人の嗜みのようなものに感じられた。

お鮨屋さんで
「これ美味しい!」と言う感動から
「実は、今年は〇〇の影響で〇〇で取れる〇〇はすごく美味しくて」
と、その一品のストーリーを聞いてより食事に彩が生まれるような
そんなイメージである。

流れが逆行した購買行動の時代

現在は、ストーリーからプロダクトへの流れがある。
これは、オンラインで購買が完結する時代ならではの変化でもあると思う。

店頭、というものがなくなって
自然に手に取ること、試すことも難しい中で
自社プロダクトを選んでもらう、というのはビジュアルや雰囲気だけでは些か難アリなのは自分で商売をしていて痛いほど感じるところである。

どんな背景があるのか、ビジョンを持っているのかを知ってもらい
目を向けて、購入ボタンをタップしてもらうために、その背中を押すために
選んで頂く「キッカケ」としてのストーリーが一手法として広がっていったのだろう。

話を戻してプロセスを分解すると
ブランド→認知
↓(興味)
プロダクト→実感
↓ (深堀り)
ストーリー共感/好意

というものが大筋にあるだろう。
現状のストーリー発進の購買行動で考えると共感や好意から購買につながり、プロダクトを購入してやっと実感できる。ある種確認作業に近い面もある。

やはり共感を担保にした、信用の前借りのようなものだと思う。

結局、核はプロダクトである。食べたり使ったりしてダメな商品を心につけ込んで手元に届けてもサイクルは回らない。
焼き畑のような取り組みはいずれ首を締める。

ストーリー偏重の時代だろうが
プロダクトの中で価値提供を十分に完結させられなければその先はない。

ストーリーは美味しくもなければ便利なものでもない。
あくまで背景の物語に過ぎない。売るためのツールとして広がれば「お話」が多過ぎて、長過ぎて疲れるのはごもっともな流れだ。
そして疲れた末に物語の見えない、必要最低限の売り場に人が帰っていくこともあると思う。

以前一品ごとにじっくりとその料理や素材の背景について説明をしてくれるコース料理を頂いて、終わる頃にはただただ疲れてしまったことがあった。
立て板に水の喋りも水のように流れて何も覚えていない。なんせ聞こうという自分の姿勢が整っていないのだから。
自分たちだってそう言ったストレスを与えかねないことを留意せねばと感じた。

あくまで、良いプロダクトやサービスにもっと心を寄せたくなったり、共感とともに愛せると感じられたり、そう言ったブースターの役割を果たしてくれる。
そういうものなんだろう。

決してストーリーを否定する意図はないのだけど
何にせよ「借りた共感や信用はプロダクトで返す」という当たり前の心構えがないといけないよねと言う話。

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余談

勝手ながら私の個人的な理想は、商品を味わって見て「美味い!!」と感じて
自然と検索してくださるような流れなんである。理想は理想でそんな簡単ではないのだけど。

なので、あまり押し付けがましく感じさせるコンテンツは同封したくないし
2度目からはゴミになってしまうであろうリーフレットも悩ましい。
はたまたアペタイザーに情報やストーリーを用意することが果たして正解なのか、どうしても疑問が残ってしまう。

きっと、「リーフレットも何もないのか!」とがっかりされるお客様もいらっしゃるであろうことは覚悟しながら
気にしていただけることを願い、ネット上にコンテンツを並べている。




ちょっと、いいコーヒーが好きです