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過去の物事と感情

冬から遠ざかるような梅雨前の初夏みたいなそれでも確かに秋である一日が終わろうとする否終わったであろう午前1時、月光に照る雲雲が南風に飄々と吹き流されている。机の上に置かれた梅酒の注がれたグラスの水中に常夜灯が反射し、橙色の暖光が揺らめく。幾度か読み込んだ幾十年前の随筆を読み始めると、明確に覚えていたはずの過去の物事と感情が少しずつ曖昧になって、沈む夕陽が夜闇に溶けていくみたいに、海馬の片隅に鎮み溶けていく。

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