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延藤 直也
2023年4月30日 10:36
雲の上に乗れると思っていた頃雲の上に乗れないことを知っていた人は笑った雲の上に乗れないことを知った時雲の上に乗れると思っている人を笑った雲の上に乗れないことを知っている自分と雲の上に乗りたいと思った自分は笑った
2023年4月29日 09:44
大きな大きな、とても大きな怪物が街にやって来た海より山より自然より大きかった比べるすべてのものより大きかった川の水を飲み干し森の木を食べ尽くし街の宝を踏み潰した人々は悲しむことも苦しむことも泣くこともできず怪物が眠る夜、逃げた夜が明けるとほとんど同時に隣の街に辿り着いた地平線の先から静かにゆっくり昇る朝日がとても眩しくて数滴、涙を流した流した涙は拭わなかった
2023年4月28日 11:09
小さいこと、大きいこと、中くらいのこと、色んなことが沢山ある雨上がりの朝も新月の夜も気怠い春も背筋伸びる秋もなんでもない日もせわしない日も色んなことが沢山ある色んなことが沢山あったことをなにも知らないで地球は昨日と同じ速度で今日も自転する
2023年4月27日 14:10
誰にも気づかれないように沈んでいく音を立てず黒く暗く深い海の底は遠い沈みゆく途中も音を立てず静かな海は沈むほど静かで底に着くまでも音を立てず声なき声を上げても音にはならない静寂の中で音は音にならず泡となる水面に上がっていく泡をひとり見ている
2023年4月26日 20:45
今頑張らないで、いつ頑張るんだ未来の自分は言う考えてくれない教えてくれない助けてくれない今頑張らないで、いつ頑張るんだ同じことをもう一度、未来の自分は言う考えてほしい教えてほしい助けてほしい今頑張らなくても、いつか頑張るから過去の自分は言った考えろ教えろ助けろ今頑張ってるから、今の自分がいる今の自分が、今頑張るしかない
2023年4月25日 18:37
暗闇を抜け出したくて朝日が昇るのをじっと待つ暗闇を抜け出したくて壁に付いているスイッチを探す暗闇を抜け出したくて微かに見える一点の光の方へ向かう立ち止まる何も見えない何も聞こえない何もわからない一歩を踏み出す次の一歩が一歩になることなく消えるかもしれないけれど光の方へ一歩を踏み出す
2023年4月24日 22:12
ここではないどこかとおくのくにへ夜、眠りにつく前に唱えるおねがいごとのようにおまじないのようにおいのりのように夢の中で叶うようにどこにいくこともできずここにいる朝、起きて少し安心する
2023年4月23日 21:29
暗闇の中に一点の光が差し込む光の射す方へ向かっていく光は強くも弱くもならない光は大きくも小さくもならない光は明るくも暗くもならない光は近くなることも遠くなることない光は光のまま消えることなく灯り続けている光は見える光の射す方へ向かっている光の先は見えない歩き続けた足を止める前を向き続けた目を落とす信じ続けた心を疑うもう一度光の射す方へ踏み出し顔を上げる光はいない
2023年4月22日 16:22
強く激しく熱く草も木も森も芽も花も実も地も空も風も雲も雨も嵐も燃やし燃えたぎる絶望の中の光となり暗闇の中の灯となり迷路の中の標となり厳寒の中の暖となる空より青く海より青く月より青く消えそうで消えないで命の中で永遠に燃え続ける
2023年4月21日 11:28
きっと誰かが朝一番ここに来て小さなじょうろで水をあげている晴れた暑い日も雨が降る肌寒い日も「良い天気だね」「ちょっと寒いね」「これから暑くなるよ」「きれいに咲いたね」音無きやさしい声を掛けてもらった花は小さく大人しく晴れやかに咲く
2023年4月20日 08:32
良いこと悪いことそのどちらでもないこと喜怒哀楽も全部を落ちていく夕日に乗せる空みたいに赤く焼いて夜みたいに黒く灰になって朝みたいに全部なかったことにして昨日のない今日として明日を生きられたら
2023年4月19日 20:41
母の大きな背中に隠れた子供は後ろに座って泣いているきれいだよ、見てごらん母の大きな背中に隠れた夕日を横から顔を出して見上げるきれいだねそうだね、きれいだね
2023年4月18日 18:23
あの時はしんどくて辛くて苦しかったと、いつかの幸せな自分が言っている今、はその、あの時、なんだと、なんとか心の片隅で思っている今、がその、あの時、になるまでと、なんとか心の真ん中で思って頑張るよ
2023年4月17日 21:00
暖かい陽の下で夢と現実を行ったり来たりしているいつからか境目が分からなくなって春の海にそっと沈んでいくまだ冷たい海水に目が覚めて必死に水面へ浮上する