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『春ちゃんは元気です』


『春ちゃんは元気です』

春ちゃんが病気になりました。
病気の名前は「急性リンパ性白血病」
4才になってまもない秋のことでした。

 病気が見つかったその日から、春ちゃんの入院生活がはじまりました。
お医者さんや看護士さんがたくさんいるナースステーション パジャマ姿で点滴をつけたお友達
春ちゃんは初めて見る世界にとっても不安になりました。

「ママ 春ちゃんいくつ寝たらお家にかえれるの?」
春ちゃんがたずねるとママが言いました。
「うーん とっても長くなるかも」
「やだやだ 春ちゃんお家帰りたい」
春ちゃんは大きな声で泣きました。

 次の日から、検査と治療がはじまりました。
春ちゃんは処置室で 点滴のための針をさされたり、骨髄という骨の中にある血のもとを調べるため背中の注射をしたり 何をされるのも怖いことばかりで 何度も大きな声で泣いては先生や看護師さんを困らせました。

そして春ちゃんにとって もうひとついやなことは とってもにがいお薬を飲まなければいけないことでした。
春ちゃんはお薬を出されるたびに泣いてしまいました。

春ちゃんには、大好きな弟妹がいました。
弟は、オウちゃんといい、妹のアイちゃんと言いました。
春ちゃんは 家族みんなですごすことが何よりも大好きでした。 

今日はパパが二人の兄弟を連れてきてくれました。
小さなきょうだいは病室へは入れないため、春ちゃんたちは廊下で楽しく過ごしました。
でもいつまでも一緒にいることはできません。
やがて二人のきょうだいはパパと一緒にお家へかえっていきました。
春ちゃんはパパたちの後姿をながめながら、さびしくて泣いてしまいました。
ママが春ちゃんの頭をやさしくなでてくれました。
春ちゃんは早く病気をやっつけて帰りたい 強く思いました。

しばらくすると友達もできました。
みんないろんな病気をやっつけようと がんばっているお友達でした。
とくに仲良しなのは 春ちゃんと同じ病気で同じ4歳のうーちゃんでした。

前から入院してうーちゃんは髪の毛が全部ぬけていました。
でも春ちゃんはうーちゃんが大好きでした。
毎日ぬり絵をしたり お人形で遊んだりしてすごしました。
うーちゃんは粒のお薬をゴクンと飲めました。
「春ちゃんも うーちゃんみたいにお薬をゴックンしてお家に帰る」
春ちゃんはママにそういうとテーブルの上にあった粒のお薬をゴクンとのみこみました。
「すごいすごい 春ちゃんはやっぱりすごい」
ママは春ちゃんをいっぱいほめてくれました。

春ちゃんが入院して ひと月がたちました。
そこには毎日のお薬のせいでほっぺがまんまるに大きくなった春ちゃんの姿がありました。

この一カ月は春ちゃんにとって いやなことだらけの毎日でした。
大嫌いなお背中の注射では朝からご飯をたべさせてもらえなかったり
MRIという検査では狭い穴の中に入れらるのが怖くて大声で泣いてしまったり、お目眼の検査も大嫌い
それに点滴をなんどもさし直したりするのもいやでした。

初めは泣いて先生をこまらせてばかりでしたが ママから
「泣いてさわぐと時間がながくなるよ」
と言われて 春ちゃんはとっても怖いけれどガマンしました。

強いお薬で気持ち悪くなったり お熱がでたりするのもいやでした。
でも春ちゃんは
「春ちゃん病気なおしてお家にかえる お家にかえったら おーちゃんと あいちゃんといっぱい遊ぶ」
毎日そう言いながら がんばりました。

  これから一年 ここで頑張ればお家に帰れる。
春ちゃんもパパもママもそう思っていました。
でも春ちゃんの病気は白血病の中でもすこしちがったものでした。
Ph1陽性といって このまま薬の治療を続けても治りにくく、病気をやっつけるには、別の病院で骨髄移植をうけなくてはならないものでした。

骨髄移植というのは、春ちゃんの病気をやっつけるため今までよりずっと強いお薬で治療をしたあとに、ほかの人からもらった骨髄という血の素を、体に入れて病気をやっつけるものでした。
そのためには、春ちゃんの血にぴったり合あったドナーさんという骨髄を分けてくれる人を探さなくてはなりません。

さっそく、パパとママ、それに二人のきょうだいが検査をうけました。
でもその時、家族から春ちゃんにぴったりのドナーはみつからず、春ちゃんは骨髄バンクというところでドナーさんを探してもらうことになりました。 

ドナーさん探しをしている間も春ちゃんの治療は続きました。
春ちゃんは手術で胸にCVという管をつけてもらいました。

おかげで点滴ではなく胸のチューブからお薬をいれたり、検査のための血をとったりできるようになりましたが、春ちゃんはどこへ行くにもお胸からつながった点滴をガラガラと転がしていかなければなりませんでした。

やがて強いお薬のせいで 春ちゃんの髪の毛もぬけはじめました。

春ちゃんは枕の上の抜け落ちたたくさんの髪の毛をみつけると あわててお部屋の鏡をみました。
するとそこには頭のてっぺんがつるつるになっている春ちゃんがうつっていました。

「ママーたいへん!春ちゃん 髪の毛とれちゃったよー」
春ちゃんはびっくりしてママに言いました。
ママはニッコリ笑うと
「髪はみんな毎日ぬけかわるものなのよ」
と言いました。
春ちゃんはお友達のうーちゃんのつるつるの頭を思いうかべると 
「ママ 春ちゃんの髪 また出てくるの?」
心配そうにたずねました。
「出てくるから、大丈夫よ」
ママの言葉にほっとした春ちゃんは
「春ちゃんなんだか変なおじさんみたい」
鏡の前で髪の抜け落ちた頭をさわりました。

 

やがて春ちゃんは、骨髄移植をうけるため、別の大学病院へ移ることになりました。
これまですごした病院をはなれる日、先生と看護士さんたちが春ちゃんを抱きしめてくれました

「春ちゃん病気をやっつけたら また遊びにきてね」
春ちゃんは、先生の言葉にニッコリ笑いながらうなずくと、それまでいっしょに頑張ってきたお友達を見ました。
そこには大好きなうーちゃんも寂しそうに手をふっていました。

春ちゃんはみんなに見送られ お世話になった病院をあとにしました。

新しい病院には大きな木がいっぱいの広いお庭がありました。

パパがお庭の木を指さして言いました。
「みてごらん、今は小さな葉っぱが出たばかりだけど、いつかこの葉っぱが大きくなって緑でいっぱいになったころ春ちゃんは退院してお家に帰れるからね」
春ちゃんは静かにうなずくと、パパに続いて新しい病院の中へ入っていきました。

春ちゃんは新しい病室に荷物をおくと、さっそくプレイルームへ行きました。
プレイルームでパパと過ごしていると これから春ちゃんの治療をしてくれる先生がやってきました。

「こんにちは~春ちゃん よろしくね」
先生は春ちゃんに手をふってくれました。
やさしそうな先生を見て春ちゃんはほっとしました。

そこで先生から
「骨髄バンクでドナーさんが見つかった」
といううれしい知らせがありました。

「くわしくはお話しできないけど 春ちゃんのドナーさんは、若いお姉さんですよ」
先生はそう教えてくれました。

春ちゃんは、ドナーのお姉さんってどんな人だろう やさしい笑顔のお姉さんを思いうかべました。

新しい病院ではお友達もたくさんできました。
ときどきボランティアのお兄さんも来て遊んでくれました。

春ちゃんは やさしいお兄さんのことが大好きでした。
春ちゃんは検査も一人でいけるようになりました。

パパとママがいないときも ナースステーションへ行ってぬり絵をしたり、自分から進んで 何でもできるようになりました。
それに春ちゃんは病気をやっつけるためといって作ってもらったものは何でもがんばって食べました。

 

病気が見つかって半年
6月のはじめころ ついに春ちゃんの骨髄移植がはじまりました。
強い薬や治療のため、春ちゃんのからだは菌とたたかう力が弱くなってしまいます。
そこで春ちゃんは みんなのいる病室から、クリーンルームというお部屋にうつることになりました。 

そこはガラスとビニールに囲まれた小さなお部屋でした。

ママも帽子とマスク それにお医者さんのような白衣をきて、春ちゃんといっしょにすごしました。
そこでは今までよりも ずっとにがいお薬を毎日飲まなければなりませんでした。

「春ちゃんこれ飲んでお家にかえる」
そういいながら春ちゃんは 頑張ってお薬を飲みました。
先生も看護師さんも春ちゃんをほめてくれました。

薬のせいで春ちゃんのお口の中はガラガラになりました。
下痢もひどくてつらい毎日でした。

何よりも悲しかったのは 夜になると春ちゃんはたった一人クリーンルームで眠らなければいけないことでした。

春ちゃんは悲しくなると看護師さんを呼びました。

「さみしいから 春ちゃんのおそばにいて」
看護師さんはやさしくそばにいてくれました。

それでもさみしいとき 春ちゃんは病院の近くのお部屋に泊まっているママにお電話をしました。

「すぐにきてー」
春ちゃんは泣いてママをこまらせました。

 今日は春ちゃんにとってもう一つの誕生日になる日です。

それは骨髄移植、ドナーさんからいただいた命の血を春ちゃんに移植する日でした。

先生が骨髄がいっぱい入った袋をみせてくれました。

「春ちゃんのために ドナーさんがとっても痛い思いをして骨の中にある血をわけてくれたのよ」
ママの言葉に春ちゃんは静かにうなずきました。

先生が春ちゃんの点滴にドナーさんからもらった骨髄をつないでくれました。
春ちゃんはポタポタと点滴におちてくる血を見ているうちに眠ってしまいました。

目が覚めるとそこには パパもいました。
ママとパパはドナーさんからいただいた骨髄がポタポタと時間をかけて春ちゃんの体にはいっていくようすを見つめていました。

「あとひとがんばり どうかこの骨髄が春ちゃんのからだで新しい血を作ってくれますように」 
パパとママはそう祈っていました。

ある日 クリーンルームの外から拍手とうれしそうな声が聞こえ、ママが春ちゃんのもとへやってきました。

「もう少しでここから出れるよ」
ママがそう話してくれました。

ドナーさんの血が春ちゃんのからだで新しい血をつくりはじめたのです。

それから数日、春ちゃんの体で新しく生まれた血はどんどん数をふやしていきました。
そしてついに春ちゃんはクリーンルームを出ることができました。

春ちゃんの骨髄移植が成功したのです。

みんなのいる病室へもどった春ちゃんは、お姉さんの血のおかげで どんどん元気になっていきました。

体じゅうにポツポツができて とってもかゆいのだけはいやでしたが、春ちゃんは毎日病院のろうかをペッタペッタと楽しそうに歩き回っていました。

春ちゃんの退院の日が来ました。

お世話になった先生や看護師さん、それに新しい病院のお友達にみおくられ、春ちゃんは病院をでました。

木には小さかった葉っぱが 大きく育って、たくさんの蝉も鳴いていました。

「この木の葉っぱが大きくなって緑でいっぱいなったころ、お家にかえれるよ」
パパが言ったとおり お家に帰れる。大好きな弟妹のいるお家に帰れる。」春ちゃんは、うれしくて、うれしくて帰りの車の中でニコニコしていました。

春ちゃんが退院して一週間がたちました。

今日は春ちゃんの5歳の誕生日です。

がんばった春ちゃんのために、おじいちゃんやおばあちゃん、それにたくさんのみんなが春ちゃんのお家にあつまってくれました。

「おめでとう、春ちゃん」

「いっぱいがんばったね春ちゃん」
春ちゃんはみんなからたくさんのプレゼントをもらって幸せいっぱいでした。

 春ちゃんは家族そろって大好きな温泉にもいきました。楽しい旅行にも行きました。
パパとママと弟妹と みんなでいっしょにクリスマスもすごしました

「来月になったら幼稚園にももどれるよ」
ママから言われ春ちゃんは もう うれしくてしかたありませんでした。


夜 となりにはパパがいました。はんたいにはママも、そしてオーちゃんとアーちゃんもいました。

春ちゃんは時々目がさめてみんながいっしょに寝ているのをみるたび うれしくてニコッと笑いました

春ちゃんはこのまま ずーっと家族いっしょ、そう信じていました。

でも、お正月が終わってまもないある日、病院でママは一番怖かったことを先生から言われてしまいました。

それは春ちゃんの「白血病の再発」という言葉でした…

 「春ちゃん、また病院にもどらなければならないんだ」
お家の戻った春ちゃんはパパからそう言われました。

春ちゃん悲しくて悲しくて
「やだー、春ちゃん もう病院やだー。お家がいい、お家にいる」
大きな声で泣きました。いっぱい いっぱい泣きました。

いっぱい泣いた春ちゃんは そのあと弟妹といっしょにテレビをみていました。
でもときどき 悲しくて 春ちゃんは パパとママとみんなにわからないように涙をふいていました。

弟妹がねむったあと春ちゃんは静かに自分のリュックへおもちゃや色鉛筆をつめはじめました。

「春ちゃん何してるの?」ママが聞くと

「春ちゃん これ病院もっていくの」
そう言いながらせっせと自分から入院のためのじゅんびをはじめました。

やがて春ちゃんは小さな紙に お手紙を書きはじめました。

春ちゃんは出来あがったお手紙を神棚にのせると 弟妹が寝ているベッドの中に入っていきました。

パパとママは春ちゃんのお手紙を見ました。
そこには

「パパ ママへ はるちゃん かえってくるから かえったら またいっしょにあそぼ」
小さな字でそう書かれていました。

その夜、春ちゃんはパパにぴったりくっついて眠りました。

翌朝 病院に来た春ちゃんは しばらくの間持ってきたおもちゃであそんでいました。

でも先生からまた点滴をつけると言われた春ちゃんは 

「いやだー、いやだー」
大きな声で泣いてしまいました。

小さな春ちゃんにとって またつらかった思い出が大きくなり 悲しくて泣いてしまいました。

先生も看護師さんも春ちゃんが泣き止むのをじっとまってくれました。

ママが春ちゃんの気持ちが大丈夫になったら言ってねと言いました。

春ちゃんはしばらく泣いていましたが やがてママに
「春ちゃん処置室いく」と言いました。

処置室にはいるとまた前に見た怖かったベッドと包帯がおかれた台がありました。
勇気をふりしぼって入った春ちゃんですがきがつくとまた大きな声で泣いて先生と看護師さんをいっぱいこまらせてしまいました。

 

翌日からまた春ちゃんの病気をやっつけるための治療がはじまりました。

再発した白血病は前の薬を覚えてしまっているためなかなか薬も効きいてくれず春ちゃんのからだを容赦なくおそいはじめました。
春ちゃんは高いお熱をだしたりお腹を何度もこわしたりをくりかえしました。 

先生と話し合って 今度はパパの骨髄をつかって春ちゃんの病気をやっつけることになりました。

春ちゃんとパパの血は少しだけちがうけれどそのちがうことで再発した病気をやっつけてくれるかもしれません 先生はそうお話していました。

春ちゃんは最初に入院した病院で治療をしながら移植を受けた病院へうつる日をまちました。
でも、そこは春ちゃんと同じ骨髄移植を受ける子供がいっぱいですぐに移植を受ける事が出来ません。
春ちゃんは別の病院を探して再移植をすることになりました。 

やがて春ちゃんの再移植を引受けてくれる病院が見つかりました。
そこは大きなこども病院で全国から来た子供たちがたくさん入院していました。
建物も新しく子供たちにとって過ごしやすい環境のととのった病院でした。

ただ、そこはパパもママも、夜は春ちゃんのそばに寝ることができず、病院をでなければいけないきまりがありました。

パパもママも春ちゃんが一人で悲しくないか心配しました

でも春ちゃんは
「春ちゃんだいじょうぶ、一人で寝れる」
そう言ってパパとママをおどろかせました。

こども病院へ来てしばらくすると春ちゃんは小さな子供たちのお世話をするようになりました。

折り紙を作ってあげたり、いっしょにぬり絵をしたりそこには入院したころとは別の成長した春ちゃんの姿がありました。 

一度目の移植を乗り越え、再発してからもニコニコ笑顔で過している春ちゃんは これから移植を受ける病院のお友達や家族にとって明るい希望の光になっていました。

二度目の移植をまえに春ちゃんは外泊をできることになりました。

春ちゃんにとって家族みんなですごせる外泊は何よりも楽しみな時でした。

大好きな弟妹といっぱい遊んだあと、春ちゃんはママにお願いして、幼稚園の制服をだしてもらいました。

「ママ、春ちゃんこれ着て写真とる」
春ちゃんはそう言うと、少し小さくなった幼稚園の制服を着ました。

「退院したら作り直そうね」
ママが言うと
「ううん、春ちゃんこれでいい、パパお写真とって」
そう言ってぴちぴちの制服でポーズをとりました。
パパは春ちゃんの写真をとりました。

「春ちゃんいなくなったら、4人家族だね」
春ちゃんの急な言葉に
「何を言ってるの春ちゃんはいなくならないし、うちはずーっと5人家族なんだよ」
パパがそういうと春ちゃんは
「春ちゃん、生きるために生まれてきたの?」
二人にたずねました。

「あたりまえでしょ、そのために先生もがんばってるのよ、ずっと生きるため生まれてきたに決まってるでしょ」

ママの言葉に春ちゃんは
「うん!」と明るくうなずきました。

外泊から戻るとさっそく、春ちゃんにとって 二度目の移植へ向けた準備がはじまりました。 

「ドナーのお姉さんと一緒に今度はパパの血も春ちゃんの病気をやっつけに行くからね、春ちゃんもがんばって病気をやっつけてお家に帰ろうね」

ママの言葉に春ちゃんは目を輝かせると、いっしょうけんめい紙に何かを書きはじめました。 

はるちゃん なおったら おんせんいく はるちゃん なおったら ラーメンいく  はるちゃん なおったら でずにーらんどいく・・・ 

春ちゃんは退院した後にやりたいことをいっぱい紙に書きだすと 病室のかべにペタペタとセロテープではりました。

そして春ちゃんはパパとママに
「春ちゃん、大きくなったら春ちゃんの赤ちゃんをだっこさせてあげる 男の子と女の子 だっこさせてあげる」
そう言って嬉しそうに笑いました。

いよいよ二度目の移植の日が来ました。

パパが手術室にはいって間もなく、大きな点滴袋に入ったパパの骨髄が春ちゃんのもとへ届きました。

先生はそれを点滴につなぐと、少しだけパパのお部屋に連れて行ってくれました。

パパは麻酔で眠っていましたが 春ちゃんが来たことに気が付くとベッドの上から優しく手をふってくれました。

春ちゃんはパパの姿に涙がでました。

あとはパパの血が春ちゃんの体で新しい血を作ってくれることを待つだけです。

パパもママもみんな早く春ちゃんの新しい血が生まれることを祈りました。

でも こんどは二度目の移植です。

悪い病気をやっつけるための強い薬のせいで なかなかパパの血は春ちゃんの体で新しい血をつくってくれませんでした。 

新しい血を作ることが出来ない春ちゃんの体は闘う力がありません。

春ちゃんの口の中は前の移植の時以上にボロボロになってしまい、つばも飲めなくなってしまいました。

春ちゃんは時々辛くて泣きました。
つらくて声もだせず毎日じっと横になって過ごしました。

「春ちゃんがんばれ」「春ちゃんがんばれ」

春ちゃんの耳元でパパとママの声が聞こえてきました。

「春ちゃんがんばれ」「春ちゃんがんばれ」

大好きなおーちゃんとあーちゃん、それにおじいちゃんとおばあちゃん、そしてみんなの声が聞こえてきました。

「春ちゃん がんばれ」「春ちゃん がんばれ」

春ちゃんは みんなが応援する声を聞きながら 
「お家に帰る お家に帰って家族でくらす」
そのことばかり考えていました。

「春ちゃん がんばれ」

「春ちゃん がんばれ」  

 

 春ちゃんの二度目の移植から6年の月日がたちました。
そこには新しく通う中学校の制服を着た春ちゃんの姿がありました。

そうです、春ちゃんは病気をやっつけて元気ななったんです・・・

お友達のみんなより少し背は小さいけど

それにかけっこも遅いけど 春ちゃんは幸せでした。

ときどきケンカすることもあるけど 大好きなオーちゃんとアーちゃん、それにパパとママ みんなと一緒に毎日お家ですごせることが春ちゃんには最高の幸せでした。 

中学校へ行くため玄関をでた春ちゃんはそっと振り返りました。
そこには大好きな家族みんなが春ちゃんに手をふってくれていました

春ちゃんはニッコリ笑いました。

p.s. 春ちゃんは今日も元気です。

春ちゃんは元気ですー終わりー

「おそとであそべる」

寒いのなんて気にしない
だってお外であそべるんだもの

よごれたってだいじょうぶ
だってお外であそべるんだもの

大好きなみんなと やっと
お外であそべるんだもん

落ち葉さんたちが おいでおいで
いっしょに遊ぼうって楽しそう

くぬぎのおじいちゃんが
おかえり いっぱいがんばったねって笑ってる

春ちゃんは元気です 朗読動画

春ちゃんは元気です ウェブサイト


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