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少年の国

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太平洋戦争が終わり、祖国である朝鮮半島へむかった少年、金海守(きむへす)の自伝的小説パンチョッパリ完全版。
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2016年2月の記事一覧

少年の国 第24話 萬守叔父さん戦場へ

戦争が膠着状態になると、米兵の姿も見られるようになった。映画『マッシュ』で見られるように、米兵は現地の子どもたちとよく遊ぶ。僕たちも米兵とは仲良くなった。  近くの橋を防御するために、土嚢を積んだトーチカのようなものがあり、機関銃を据えた米兵が警戒にあたっていた。夜になるとこっそり家を抜け出し、そこへ遊びに行くようになった。寒さしのぎに、彼らはガソリンを入れた缶にそのまま火を点けていた。やはり、アメリカ軍の物資は豊富なのだった。  彼らは顔慣れた僕がやって来ると、弾を抜い

少年の国 第23話 永吉のけが

 僕たちの「泥団子戦争」は血を見ることなく平和的に終わったが、南北の戦いはさらに続いていた。  日本での戦争は米軍機の空襲が主だったが、こちらは地上戦である。軍用トラックには武器、弾薬などが満載されている。道路が舗装されていないところでは、でこぼこ道でトラックは大きくバウンドする。すると荷物の一部が荷台から落ちてしまう。つまり、子どもたちの目の前に本物の銃弾が出現することになる。正泰の事件は、こんな環境が引き起こしたことの一つにすぎない。  子ども、とくに男の子は、こうし

少年の国 第22話 泥団子戦争の終幕

 翌日、龍大が僕の家にやって来た。嬉しそうな顔をしている。 「どうだ、海守、すごいだろう」  龍大は小さな袋から、自分で研いだ釘を取り出した。 「やっぱり、研ぐと全然違うな。昨日の夜中まで研いでたんだぜ」  龍大は、釘の頭を持って、地面に叩き付けてみせた。釘は地面にぐさっと刺さった。 「凄いだろう。海守のも見せてみろよ」 「ああ……」  僕が袋から、夕べ研いだ釘を取り出すと、龍大はそれを奪い取るように手にして、 「うおお、これも凄えな、これなら矢の先に付けたら