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ストーリー11 自治会で奮闘するクニオさん

クニオさんは自治会長をしています。この地域は郊外のベッドタウンです。四十年以上前に住宅地として開発されたとき、若い家族が移り住んできました。いまや子どもたちも独立し、定年後の夫婦で暮らす家が多くなりました。一方で、四十年前と同じように、若い家族の転入が増えてきました。地域には、古くからの老夫婦と新しい若い家族が混ざりあって、生活しています。

クニオさんの悩みは、新しい若い人たちが自治会の活動になかなか参加してくれないことでした。楽しいイベントには参加してくれるのですが、運営や地道な活動には思ったような協力が得られません。他人任せになっていると危機感を覚えていました。

そのうちクニオさんは「若い家族のことをもっと知ろう」と思うようになりました。自治会のために協力してほしい、といくら呼びかけても見向きもされません。そこで、彼らがどういう生活をしているのか、どんな必要があるのか、どんな街にしたいと思っているのか、まずはしっかりと耳を傾けてみようと考えたのです。

若い家族を見かけたら挨拶するように心がけ、話しかけて自己紹介をし、ふだんの暮らしの様子をさり気なく聞かせてもらいました。子どもたちの塾や習い事の先生やスポーツチームのコーチにも話を聞きました。自治会のお祭りでは簡単なアンケートにも答えてもらいました。若い家族がどんな思いで生活しているのか、少しずつ理解できるようになってきました。

アンケートはスマホで、と思いついたものの、自分ではどうしていいのか見当もつきません。ちょうど公園で話しかけた若いお父さんがIT関連の仕事をしていると分かりました。遠慮がちに相談してみると、あっという間にそのしくみを作ってくれました。びっくりでした。

その他にも個人的に声をかけてみると、意外にあっさり協力してくれるお父さんたちが出てきました。イベントのチラシを作ってくれたり、運動会で自治会代表のリレー選手になってくれたり、自治会館の看板を作ってくれたり。気がつけば、少しずつ若いお父さんたちの輪ができ始めていました。
自分も最初の頃は渋々と自治会の仕事に加わっていたことを思い出しました。

「やっぱり自分たちの街のことは自分たちでやらなくてはいけない」
そう使命感を覚えたのは、しばらくしてからでした。

「この街の若い家族にも同じ思いをもってほしい。もうしばらく個人的に声をかけ、みんなに小さな関わりを見つけてもらいます」

ほめられると調子に乗って、伸びるタイプです。サポートいただけたら、泣いて喜びます。もっともっとノートを書きます。