「子どもをリスペクトする」練習
クローズアップ現代で、「教育虐待」を特集していただいて
「子どもをリスペクトしていない」と書くか、
「子どもをリスペクトできない」と書くか、
スタッフとやり取りしました。
私は、教育虐待の場合、多くは後者だと思っています。
リスペクトされたことがないと、リスペクトするということがわからない。
でも、育ちの中で自然に獲得されていなかったことでも、
学べば獲得できます。
ですから、その練習方法を提案しておきます。
ここでは、3つの練習方法をあげておきますね。
1)相手が嫌なことをしない
1日でもいいから「自分が誰かにされて嫌なこと・腹が立つこと、あるいは自分より立場が上の人にしない・言わないことは、子どもにしない・言わない」と決めて生活してみましょう。その結果を人に聞いてもらいます。
(聞いてもらうのは、言語化して、整理して、自分の声を耳から聞いて、自分自身に伝えるため)
2)相手が求めていることをやってみる
次に、子どもが親としての自分に求めていることは何かを考え、そういう親を演じて生活してみます。声のかけ方、ふるまいかた、表情、服装・・・子どもの理想の親になるのは大変だと思います(なんだったら、理想の親ランキングを検索してみましょう!あるいは自分がなりたい「佐藤ママ」をめざしてみますか?)。・・・自分は今のままで、子どもには非現実的な理想の子どもになることを求めていませんか?まずは、それは理不尽だと実感してみましょう。
そして、この結果も人に聞いてもらいましょう。
3)共感性を高める「ふりかえり」の方法
また、次は、子どもへの共感力を高め、同時に、自分と子どもとの間にバウンダリー(境界線)を設けることの必要性に気づくふりかえりの練習です。
例えば、この写真。この子は今、どんな気持ちでいるでしょうか。
そして、その後ろにいる親の「あなた」は?
① 自分と子どもの日常よくある生活場面を思い浮かべて(上のような写真を使ってもいいでしょう。できるだけ日常の写真がいいです)、
② そのときの子ども(Child)の表情や様子から、1-4を推測、想像してみましょう。
③ 子どもの1-4に対して、親の自分(Parent)がどう対応しているか、自分の1―4もチェックして、子どもの心に自分が対応できているかどうか吟味してみましょう。
つまり、親が
必要であると考え(P2)、
やらせたくて(P4)
必死で(P3)
強制している(P1)勉強であっても、
子どもも
必要だと認識(C2)し、
わくわくしながら(C3)
やりたい(C4)と心から思って
取り組まない(C1)
限り、脳はよく働かず、学力はつかないばかりか低下しかねない、親子の関係は悪くなり、子どもの心は傷ついてしまう、
ということに気づく必要があるのです。
例えば、上の写真で言えば、
子どもはもう絶対にやりたくないという状態(C4)になっていて、
この場をもう離れたい、終わりにしたい(C4)
と思っている(C2)でしょう。
嫌だという気持ちでいっぱいになっていて(C3)
突っ伏している(C1)
でも、親たちは怒り(P3)に任せて
いつまでも怒っています(P1)。
なんとかやらせなければならないと考えている(P2)
絶対に言うことを聞かせたい(P4)・・・
でも、この状態ではたとえ勉強を始めても頭に入っていきません。
このとき親たちは、もはや、この子が学ぶことを望んでいるというよりも、
「どうしようもない子に言うことを聞かせたい」(P4)
ということが先に立ってしまっています。
親たちのもともとの「Want」はなんでしたっけ?
この状態を続けて、その「Want」は達成されるでしょうか。
どうしたら、親たちの希望は叶いますか?
これは、写真を見ながら一人でもできるワークなのですが、
慣れるまでは、誰か(CF:クリティカルフレンド:自分のことを批判したりしないで受け止めつつ、客観的に考えてくれて、考えが促進されるように手伝ってくれる人)と一緒にやるといいです。
①とりとめもなくしゃべっている間に、CFに(用意しておいた)表に書き込んでもらって、書き込めない部分(人によって違います)を「ここは?」と聞いてもらって、なぜそこが埋められないのかを一緒に考えます。
②次に、自分と子どもの1-4のどこがズレているかをよく調べて、
③そのズレがなぜ生じているのか、ズレをなくすためにどうしたらいいかを考えます。
CFに手伝ってもらうといいですね(考えるのは自分です。CFは教えるんじゃなくて、手伝うだけ)。
※ 一人でやるときは、
① 自分が気になった親子のやり取りのエピソードを日記のように書いて下さい。(写真を使うとよりリアリスティックにできます)
例)今日は、息子を叱った。私は絶対にこの宿題をやらせなければと
思って、かなりきつく注意したのだけれど、息子はゲームに夢中
で一向にやる気配がない。・・・・・
② 次に、その文章の中で、子どもについて描写してあるところには下線を、自分について描写してあるところには波線をひきましょう。
③ 下線や波線をひいたところが、1-4、つまり、行動(Do)か、思考(Think)か、感情(Feel)か、欲求(Want)か、書き入れてみましょう。
これを書いた人は、エピソードを記述するにあたって、P、つまり自分についてたくさん書いているのですが、相手についてあまり書いていません。相手に対して関心が持ちにくい、あるいは相手のことを気にかけるよりも、自分が先に来る人かもしれません。
そんな特徴も見えてくるので、まず自分で思う通りにエピソードを記録してみて、自分の特徴を把握しましょう。
言葉で書くと、ややこしく思われるかもしれませんが、慣れれば日常生活の中で、う~~ん、どうも関係がうまくいかないな、という場面で、「相手を変えずに自分を変えることで状況を動かす」ためのいい方法です。
いかがでしょうか。
実は、「自分より弱い立場にいる人をリスペクトする」というのは、自分がそうされてきた経験がたくさんある人でないと、実は難しいものです。
だから、できない人は、自分もまた、リスペクトされてこなかったという成育史がどこかにあるのです。
皆さん、そうできない「偉い人」をたくさん見てきたのではないでしょうか。
自分も、いつの間にか、自分が家族の中の「偉い人」「影響力の強いボス」になりたいと思ってしまっているのではないでしょうか。
とりわけ、自分の弱さを心の中で感じている人は、弱い人に対して虚勢を張ってしまいがち。
でも、それって人間だから、あるあるです。
だから、意識してみましょう。
自分の力のなさを「偉ぶる」ことでごまかしていないかどうか。
そういう行動が身についてしまっているのではないか。
子どもと対等になって、子どもと仲良くなって、楽しく生活することを目標に、まずは自分が子どもをリスペクトすることを心がけましょう。
これまでの長い年月の積み重ねでできてきた家族文化だから、簡単には変わらないかもしれません。同じ以上の年数がかかるかもしれません。
「うぜぇんだよ」と言われ続けるかもしれません。
でも、変われます。
きっと子どもも、親をリスペクトするようになってくれるでしょう。
頑張ってみませんか?
※ 写真は、NHK放送センターの個室Cのドアの掲示
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