見出し画像

一歩踏み出すことから始まる探究 【週刊新陽 #158】

札幌は青葉が眩しい季節になってきました。藻岩山や真駒内公園など新陽高校の近隣にも緑が豊かなスポットが多く、冬から春、春から初夏へ、一日ごとに景色が変わります。

自然が身近な札幌ならではの休日の過ごし方にも慣れてきた4年目。GWには近所をぶらぶら散歩して、散り始めた桜と芽吹いた新緑を楽しんできました。

お天気が今ひとつだった連休後半は、積読していた本を読んだり動画をチェックしたり。

そこで、今号では、「先生の学校」YouTubeで私がMCを務める『社会を彫刻する人たち 〜半径5メートルから始める社会彫刻〜』から、最近の動画をご紹介します。


誰だって社会を彫刻できる

この番組タイトルの「社会を彫刻する人たち」とは、ドイツの現代アーティスト、ヨーゼフ・ボイスが提唱した概念「社会彫刻(social sculpture)」が元になっています。

ボイスは「あらゆる人間は自らの創造性によって社会の幸福に貢献できる。誰でも未来に向けて社会を彫刻することができるという意味で、すべての人間は芸術家になりうる」と言っていて、その概念をNPO法人インビジブルの仲間から教えてもらって以来、私自身「社会彫刻家」を自称しています。

『社会を彫刻する人たち 〜半径5メートルから始める社会彫刻〜』は、自身の意思に基づき新たなワンアクションを起こしているゲストをお迎えし、ゲストが何者でもなかった頃から今に至るまでの人生と今描いている未来に迫っていく番組です。

プロデュースしてくれているのは「先生の学校」を運営している(株)スマイルバトン代表の三原菜央さん。お話を伺うゲストは、菜央さんがセレクトしてくれた候補の中から、私たちがお話を聞きたい方や「今こそ全国の先生に届けたい!」と思うストーリーを持っていらっしゃる方に出演依頼をして決まります。

どんなお話を伺うか事前に菜央さんと相談しますが、ゲストご本人とは収録当日に「はじめまして」のこともあり、トークは全くのノーシナリオ。その時の流れで話を進めていくので、盛り上がりすぎて長くなってしまったり、私の質問があちこち飛んでしまったりすることも。でも完成した動画はうまく編集していただき見やすくなっているので、プロはさすがです。

4月に公開されたのは、一般社団法人「みつかる+わかる」代表理事で探究学習の実践者、市川力さんをゲストにお迎えしたEpisode.07(収録したのは昨年末)。

内容が濃いだけでなく、とにかく力さんの明るさと熱量ある語りに元気をもらえる動画となっているので、ぜひご視聴ください!力さんに引っ張られて、私のテンションも高めです(笑)。

〜動画はこちら↓↓↓〜

【Episode.07 前編】"for children" ではなく "with children"な学び場を。大人と子どもが共に成長する学びに40年以上取り組む理由とは?

【Episode.07 後編】探究するコンテンツは何でもいい!ってどういうこと?市川さん考案の探究のストレッチ「Feel度Walk」が広がる理由とは?


コンテンツとコンセプト

お話の中で、一番印象的だったのがカレーライスのくだり(詳しくは前編動画をご覧ください)。

今や、小中高校、どこでもだれでも取り組んでいる探究学習。そこで先生たちは、生徒が探究するコンテンツを何にしよう?と悩み、SDGsや平和学習に適するコンテンツとは?と探しがち。

でも力さんは、概念を探究するコンセプトベースの学びにおいて「コンテンツはなんだっていい!」と言うのです。

たとえば、カレーライス。(この時点でカレーライスを選んだことに意味はありません。とりあえず思いついた身近なもの。)

概念として捉えると、まず思い浮かぶのは「食」。
でもこれでは広すぎる。
ならば、「好きな食」と少しだけ狭めてみる。
「好きな食」ってなんだ?
なぜ好きなの?子どもの頃から食べているから?
「家庭で食べ慣れたもの」が好き?
じゃあ「家庭で食べていたもの」の持つ意味は?
家庭で食事できない人っているんだろうか?
それぞれの人にとってカレーライスに当たるものは何か?

・・・と、いくらでも繋げて深めていくことができる。あるいは、なぜカレーライスが思い浮かんだか、という観点から広げていくこともできる。

ここでポイントなのは、カレーライスの作り方やカレーについて知識を深掘っていくわけではない、ということ。もちろんそこに興味が湧いて調べたり試したりしたくなったのなら究めていいのですが、コンテンツをコンテンツのまま深めさせようとすると単なる調べ学習になってしまいかねません。

力さん曰く、コンテンツの背後には意味がある、そして意味は一つではなく多様な捉え方ができる。だからこそコンテンツはなんでもいい!と。

そして、このコンセプトベースの学びに限らず全てのお話から感じたのは、力さん自身が楽しんでいること、ワクワクの当事者であること、です。

前編動画の冒頭でもおっしゃっている「for childrenではなくwith children」というスタンスが概念探究のコツであり、力さんが探究学習の実践者であり先駆者である所以だと思いました。

なお、力さんのこのスタンスが現れている「あり方」の一つが、「ジェネレーター」ではないかと思います。

プロジェクト等に自らが関わり創り出す側になるジェネレーターについては、力さんと、慶應SFCの井庭崇先生が書かれている本に詳しいので、ぜひ。概念探究やProjec-based Learningでの自分の役割に悩んでいる先生には特におすすめです。

あるいてあつめておもしろがる

for childrenではなくwith childrenの学びを実践し体感できるのが、力さんが考案した『Feel度Walk』。

Feel度Walkとは、あてもなく家の近所や学校の周辺、街などを歩いて、何となく気になったモノやコトを記録し、集める活動です。

そして集めて感じたことを一枚の紙に自由に描く、自分なりの発見の記録、好奇心の記録が『知図』。

Feel度Walkと知図づくりを通して、子どもも大人もいつの間にか好奇心のフタが開いて、誰もが「面白がり屋」になります。

難しく考えず、まずは歩いて感じてシェアする、と気軽に実践することができるので、探究学習だけでなく、地域コミュニティづくりの文脈で活用している人も増えているそうです。

一般社団法人「みつかる+わかる」のWebサイトにもFeel度Walkの様子や知図を集めた知図展のレポートなどが載っているので、ぜひ見て、まずはやってみてください!

力さんの本「知図を描こう!」も参考になります!

【編集後記】
Feel度Walkを知ってから、私もときどき「あるいてあつめて」みています。するとFeel度Walkしていない時でも、おもしろそうなものを見つける感度が高まってきた気がします。
『社会を彫刻する人たち』では、力さんの後、一般社団法人こたえのない学校・代表理事の藤原さとさんやシステム思考教育家の福谷 彰鴻さんとも対談。これから動画が公開されていきますので、お楽しみに!

つい最近、豊平川の柵にサケがいるのを発見!
3年間で何度も通っていた道なのに、
これまでまったく気付きませんでした。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?