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かつての

桜の木があった
木蓮の木があった
レンギョウも咲いていた
桜の木の下でよくおままごとをした

桃の実を食べた。小さな実だったけれど、毎年
茱萸も実をつけた。ちょっぴりの渋みがあった

八つ手の木もあった
玉すだれなのか つむじという名か
白い花が咲く草もあった

路地を三輪車で走った
縄跳びをした
おはじきやビー玉もした


何もなかった
路地以外、木もなかった
路地は短くなっていて
家々は庭を隠すように路地いっぱいに建っていて
お醤油を借りに言っていたおばちゃんの家は
○○荘、と苗字は残っていた
鶏を飼っていて時々卵をくれたおじいちゃんの家は
家が二軒になっていた
地主さんとかいう広い池のあった家は残っていたが
池の分、庭を狭くしたみたい

坂の上では
今でも港の花火は見えるんだろうか
地域で盆踊りなんてしないんだろうか
坂の下の市電ははるか昔に無くなってしまったけれど


行ってみたかった過去を訪ねる旅は終わった
行きたくない過去へは
旅立ったりしない





お墓じゃなくて馬頭観音
石段だったころに何回も通った



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