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スペクトラム

逆さ文字を書く子どもだった
「の」の字さえ逆回転
「き」とか「か」とか
どちらに棒がくるのかわからなかった。

落ち着きもなかった
机の下で折り紙を折っている と
それでも問われたときに正しく答えられるので
きっと 
昔気質の先生には嫌われていただろう

小学校二年の集合写真
私だけ帽子をかぶって写っている
母が編んだリング編みの帽子が
とても気に入っていたらしい

とっとちゃんの母とは違い
私の母は字の練習をさせようとしたが
私は頑として書かなかったそうだ
根負けした母が
一文字書いたら遊びに行っても良い というと
本当に一文字だけ書いて遊びに行ったとか

雑巾の絞り方が他人と反対でびっくりしたこともある


中学生になって英語を習ったら
大文字の「E」とカタカナの「ヨ」
長いこと迷った

仮名の元になった漢字を知って
書く文字の形は少しは良くなったか


扁桃腺
アデノイド
蓄膿症
喘息

眠れない理由は多々あったが
落ち着きのない子であったことが
一番大きかったのだと 
今は思う

注意欠陥 なんて言葉もなく
スペクトラムという言葉もなく

何か落ち着かないものを抱え
やればできるのにと叱られて
気持ちは上がったり下がったり


そんなことは誰にでもあるんだけどね
誰にでもあるんだろうけどね


いろいろ間違ってきたんだろう過去を
ときどき振り返り
戻れないことに安心したりするのだ




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