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ペコロスの母に会いに行く

気になっていた映画だった。
かなり離れたところからはるばる会いに行くのかと思ったら
同居していて、認知症がひどくなり、施設に入居して。
入居した母に会いに行く話だった。

漫画描いたり音楽をやったり
サボりながら仕事をして、仕事はやがてクビになる。
ばあちゃんの面倒をよく見る息子は出てくるが、妻はいない。
最初、ペコロス(ゆういち)と孫息子(まさき)が
二人で一人分の介護をしているようにも思えたくらいだったが。

子どもは親の認知症は受け入れがたいものである。
やがて、子どもの顔も存在も、まだらになっていくのである。
(私の母も、ほとんどの時間を自分の結婚前の時代にいるのではないか)
そういう意味では、心理的に遠いところに会いに行くという感じはする。

ゆういちはハゲを隠さない。帽子をかぶっている。
帽子をかぶった息子に怯える母が、頭を見て息子とわかる。
かつらを被った竹中直人が、やはり母親にわかってもらえず。

母の記憶が行ったり来たりする場面とゆういちが回想する場面とが
まとまりが微妙だったかもしれない。

子どもを背負った妻に、自分は手ぶらな夫が荷物まで持たせるのが普通だった時代の夫婦である。金を奪われたり、妻を八つ当たりで殴ったり。
死んでからの方が会いに来てくれる と懐かしむ妻は、良いことしか思い出さないのか、それとも男性作者たちの願望も含まれるのか。

この時赤木春恵さんは実年齢が88歳だったそうだ。
最高齢の主演女優でギネスに載ったそうだ。
あれだけの演技で。
駐車場で夜まで息子を待っていたり橋で歌を歌ったり。
「怒らんで」「泣かんで」がやさしかった。
息子の名を呼ぶ切なげな声が、なんだか未来の自分に重なる。

若いときの役の原田貴和子さんも存在感があった。


映画やドラマが公開されたころは、まだ親の認知症も
まだまだ先の事だと思っていたかもしれない。




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