すい星

夕方の終わりのほう。
空が、ゆっくりと私には見えない色に沈んでいく頃、
きみは何も知らないままこの星から離れていく。

私にはなんでもお見通しだから。
悟ったかのような表情を浮かべる彼女の横顔は、水族館を漂うクラゲのようで、僕には到底掴めないような気がして、曖昧に笑って誤魔化すしか出来なかった。
彼女は今夜、もとの状態に、もとあった場所に、もどっていく。
何事も無かったかのように。
誰にも知られないように。
この100年足らずが138億年に溶けていく。

ほんとうに最初っから何も起こっていなかったのかもしれないな。
これからも。これまでも。

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