![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/113559976/rectangle_large_type_2_8eae8406801efd5b676c170dfcc50c28.png?width=800)
小説を書いて、朗読をしています。
三分間の物語をお楽しみください。
散々待った挙句、これだ。
昨日一昨日そのまた向こう、
言ったそばから破られる。
あれはまだ堅苦しい敬語で
挨拶を交わし合うほどの、
いわゆる「取引先」という
立場での関係だった。
少し、特に理由もないけれど
気になる相手だった。
何度か食事をして、
互いを認め合い、
そういう仲になった。
年は向こうが少し上。
その割にマメなのは僕なんだけど、
こういうところが鬱陶しいんだろうな、なんて。
全部「性格」で片付けられるじゃないか。
「相性」なんてものアテにならない。
それでいえば僕らのそれは98%、
銀河系で唯一の相手だって、
いつかの露店占い師が鋭く言い放ってた。
そんな寒い冬の日が、今では他に
どうやっても変えられない温かさを纏っている。
駅前の本屋で自慢げに
平置きされた自己啓発本。「鈍感力」か。
こんな気持ちにさえ鈍感になれた時、
そこにあるのは果たして
"幸せ(happy)"なのだろうか。
約束なんて、しなけりゃよかった。
でも、でもね。
一つだけ一度も破られていないことがある。
「ずっとそばにいるよ」
馬鹿じゃないのか、
いないじゃないか、いないじゃないか。
…なんて。
思えば思うほど強く感じる
君の遺した二人の記憶が、
寒さと共に体中を刺す。
君のいない冬が初めて、
僕のもとにやってくる。
会いたいよ。
よろしければサポートをお願いします!音楽活動費用に充てさせて頂きます!