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経営戦略総論(5):パストフル

経営戦略に関する書籍で、最近、これは面白い!と思った本に出合ったので紹介しておきます。

一橋ビジネススクールの楠木建教授と社史研究家 杉浦泰さんの共著
「逆・タイムマシン経営論」です。

楠木先生は私とほぼ同世代で、助教授時代にお話しを聞いたことがありますが、南アフリカで幼少期を過ごされ、お堅い経営学の先生といった従来の学者の枠を超えて、視点・切り口が斬新で講義も滅茶苦茶、面白かったのを鮮明に記憶しています。
その後、出版された『ストーリーとしての競争戦略』『「好き嫌い」と経営』がベストセラーになり、様々なセミナーで講師をされているのでご存知の方も多いと思います。

一方、杉浦さん社史研究家と聞きなれない職業になっていますが、週末にWebサイト『The社史』を個人で編纂するほど、企業の歴史に詳しく社史研究にハマっている方のようです。

この二人が組んで、過去の記事を紐解いていく試みが昨年11月に日経ビジネスの連載として始まり、本書はそれを書籍化したものです。

経営学やコンサルの自己否定的な書籍は以前、経営総論(3)で紹介し、本書もその一角を占める位置づけにはなりますが、日経ビジネス自らが過去の記事をネタにされることを良く了解したものだと彼らの懐の広さに少し関心しました。

本書で述べられている分析の軸(同時代性の罠)は3つ。

飛び道具トラップ:サブスク、ERP、SIS、組織改革等
激動期トラップ :インターネット、革新的製品、×.0 論等
遠近歪曲トラップ:シリコンバレー礼賛、日本的経営、海外スターCEO等

です。

あー、あの頃、こういった記事や書籍を読んで知った気になり、バズワードを盛んに使っていたよな。今から振り返ってみると、何だったのだろうと恥ずかしくなる方も多いのではないでしょうか?(自分もですが。。)

この書籍のおわりに、著者が「新聞・雑誌は10年寝かせて読め」「歴史はそれ自体『ファクトフル』なもの」『パストフル』と呼んでいます。

歴史に学ぶこと、温故知新はいまも昔も変わらず重要なことですね。

少し前にベストセラーになった『ファクトフルネス』も統計的なデータに基づき、バイアスをかけずに事実を正しく認識することの重要性を理解する上では目から鱗の本でした。まだの方はこちらも合わせて読んでみてはいかがでしょう。


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