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「Mid90s ミッドナインティーズ」

題名の通り、90年代半ばのロサンゼルスの話。
13歳のスティービー(サニー・スリッチ)は、シングルマザーの母(キャサリン・ウォーターストン)と、5歳上の兄イアン(ルーカス・ヘッジズ)と暮らしていた。
スティービーは、慕ってる兄にいじめられているが、大好きな兄のために部屋のCDの棚を見て、彼の誕生日にCDを買ってあげるような優しい男の子だ(←兄はもらっても嬉しい顔をしないが)。

ある日、街でスケボーやってるグループを見て、自分もやりたいなと思うスティービー。兄の中古のスケボーを、自分の大事なDiscmanと交換して、練習を始めるが、転んでばかり。

自分が憧れるスケボーのグループがたむろってるお店で、彼らと仲良くなれたスティービーは、やがて不良グループの仲間になっていく。

これは、一人の少年が、青年になっていく話。脚本・監督のジョナ・ヒル自身の体験なのだろう。ジョナ・ヒルは面白いコメディアンのイメージが強いが、この作品はちょっとセンチな青春映画にまとめている。

不良に憧れたり、なってしまうのは、不幸な家庭の子供たちが通る通過儀礼のようなもの。ここに出てくる黒人、白人、南米系の少年たちも、それぞれにひどい家庭環境の中で育っている。だから、仲間でつるむし、馴染みの店にたむろするのだ。

アフリカ系アメリカ人のレイ(ナケル・スミス)に、「黒人も日焼けするの?」と聞いて、サンバーンというあだ名になるスティーヴィー。フォースグレード(ライダー・マクラフリン)というあだ名は、学校の4年生並みの頭という意味なのだろう。ファックシット(オーラン・プレナット)なんて、なんともはやなあだ名だ(笑)。彼は、長い金髪でキャップ姿なので「そのシェリル・クロウみたいなやつ」と言われるのも、90年代だな。

会話の内容のレベルの低さは、だから落ちこぼれた奴らなんだ、というリアルなもの。ルーベン(ジオ・ガリシア)のセリフ「サンキューなんて言うのはホモ(Faggot)だけだ」なんて、90年代にしても、言っちゃいかんだろう。

今は2020年なので、90年代がノスタルジーになるのは、当たり前なのだが、昭和のおっさん世代には、90年代なんて一昨日くらいの感覚だ(苦笑)
青春映画がこんな時代を描くようになったのか、ということは自分が歳をとったということ。

主役のサニー・スリッチ(プロのスケートボーダーなんだね)は、「ペイパー・ムーン」(73年)や「がんばれベアーズ」(76年)のテイタム・オニールに似てるなぁ、なんて思ったくらいだから(笑)

もう若い人たちの「時代」なのだ。それを実感した。そういう意味で、おじさんにはほろ苦い映画でした。

てなことで。

05-Sep-20 by nobu

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