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幸せのカルピス


今まで飲んだ中で1番おいしいと思った飲み物。

それは、カルピス。

53年の人生の間に、

おいしい飲み物はいろいろ飲んだ。

でも、小学1年の時に飲んだカルピス以上においしいと思った飲み物はない。


私が通っていたのは1学年1クラスの小さな小学校。

たぶん夏休みだった。

クラスの何人かで担任の先生の家に行った。

なんのために行ったのか思い出せない。

私の家から先生の家まで歩いて20分くらい。

その日はよく晴れていて日差しが眩しかった。

途中にあった用水路の水がとても綺麗で、覗き込んだことを覚えている。

舗装されていない用水路は小さな小川という感じ。

夏の光が澄んだ水に反射してキラキラ光りながら流れていた。



先生の家に着いた頃には喉がカラカラだった。

部屋に通され椅子に座る。

先生が何かカチャカチャしている音が聞こえる。

戻ってきた先生がテーブルに置いたのは、カルピスだった。


ガラスのコップも、コップについた水滴も、中の氷もキラキラしている

(わー、カルピスだ!!)

私はカルピスを飲んだことがなかったのかもしれない。

めちゃくちゃ嬉しかった。

嬉しくて一気に飲んだ。

おいしい!

ホントにおいしい!

カルピスは、あっという間に無くなってしまった。



もっと飲みたい。

そう思ったが、まさかそんなことは言えもせず…

その日、みんなで何を話したのか、何をしたのかまったく覚えていない。

私はからっぽになったコップをずっと見つめていた。



あまりにもおいしくて、カルピスを親にねだった気がする。

カルピスを高級品と感じてた私が、親にねだるのは相当思い切った行為だったと思う。

それほどおいしかった。

その後、家の冷蔵庫にカルピスが入っていることはあったが、

瓶の中のカルピスが少なくなってくると、いつも寂しい気持ちになった。



今も家の冷蔵庫にカルピスが入っている。

薄めて何杯も飲めるカルピスはコスパがいい。

でも、今でもやっぱり高級品のイメージがある。

カルピスの残りが少なくなり、容器が軽くなってくると、今でもやっぱり寂しい気持ちになる。



優しくて大好きな先生のキラキラした笑顔。

キラキラ光る小川の水。

キラキラしたコップと氷と、おいしいカルピス。

なぜあんなにキラキラしていたんだろうと不思議なくらいにキラキラしていた。

あのカルピスを思い出すたび、頭の中にキラキラが蘇る。

幸せな気持ちになれる。



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