ERP会計:4-1-0 戦略的購買 売買パワーマトリクスによる基本的アプローチ

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 購買によるコストダウンというと「乾いた雑巾を絞る」ような連想、ひいては、なんともブラックな企業をイメージする向きがあるかもしれない。この章では、そうした精神論にとどまることなく、より戦略的なアプローチによってコスト削減を可能にする術について考察しよう。

 最初のテクストとしたいのが、A.T.カーニー監修による『最強の調達戦略』だ。

売買パワーのマトリクス(調達改革の方向性)

 同書では、調達サイド(自社)とサプライヤ(仕入先)の力関係の強弱の組み合わせ(マトリクス)による4象限を定義し、各象限ごとに適用すべき戦略が異なると解く。

キャプチャ

 サプライヤの交渉力の源泉には、同業界への参入障壁を始めとする希少性や特殊性、逆に調達サイドの交渉力は、発注量やシェア、長期に渡る取引関係等が上げられる。

 たとえば、双方の力関係が弱いとは、当社も必ずしも当該仕入先から調達する必然性はなく、サプライヤ側も、仮に当社1社を失ったとしても、逸失利益は致命的なものではないという関係だ。営業所ごとに購入されている文房具など、汎用性の高いうえに数量も限定的な取引がこれの代表だ。
 サプライヤの力が調達側よりも強い例としては、特殊な技術や知財・規制等により、そのサプライヤから調達せざるを得ない必然性が高いことを意味し、逆に調達側の力が強いとは、そのサプライヤが当社以外に販売先の選択肢を多く持たないことを意味する。

 ここでは、各象限ごとに、どのような調達改革があり得るのか、同書の主張の要旨を紹介しつつ、ERPを始めとするITシステムが、そこにどのような貢献を果たし得るのかを考察しよう。

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