ERP会計:4-1-1a 戦略的購買 売買パワーが「ともに弱い」ケース(その1)

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 本章でのテキスト『最強の調達戦略』では、調達サイド(自社)とサプライヤ、双方のパワーバランスの組み合わせの強弱で4象限を作り、各象限ごとに適切な戦略は異なるとしたうえで、各象限ごとに、具体的な4つの対応指針を示す。初めに見るのは、両者のパワーバランスが「ともに弱い」場合だ。具体例として、営業所ごとに購入されている文房具など、汎用性の高いうえに数量も限定的な取引を代表例として前項に上げた。

調達4象限ー左下

「ともに弱い」ケースの対応指針

1. 需要管理
2. 共同調達
3. 調達集約
4. 調達データ分析

 はじめに「1. 需要管理」だが、端的に言えば、購入する材・サービスの総量を減らすための取り組みだ。不要(オーバースペックを含む)なものを購入しないために、取引条件と発注手続きを標準化・共通化し、所定のプロセスを踏ませる中で、必要性の低いものをスクリーニングする。
 購入という語句に引っ張られると意外に見落としてしまいそうだが、旅費の類もこの範疇の見直し対象となるとテキストでは指摘する(注1)。
 手続き的には、購入材・サービスおよび金額ごとに、必要な承認レベルを定め、このプロセスをワークフローシステムに乗せることで、確実なルール遵守、ひいては発注総量を抑制する。また、単価や支払い条件等についても、あらかじめシステムに登録しておくことで、ルール外での発注が行われることを抑止するとともに、取引ごとに折衝する手間(=コスト)も省けるということになる。
 本来、ITシステムが最も得意とする領域のはずだが、まだまだ全面的な導入には二の足を踏むケースも散見される。推測するに、必要以上のレアケースを想定し、これにワークフローシステムが対応できないことを過度に心配する向きも多いのではないか。ある意味、開き直りだが、すべてのコミュニケーションをワークフローシステム内で完結させようとせず、口頭での相談やEメール等も併用し、実務を回して行くスタンスがあれば、実装は案外難しいものではない(執筆現在、日本チームのマネージャを務める筆者が、オーストラリア勤務の直属上司、在米の2段階上の上長の承認を求めるケースも頻繁に発生するが、実務上の不便を覚えることはなく、むしろ時差等を考慮すると、ITシステム化のメリットをより大きく感じている)。

注1)今回のコロナ禍で、オンライン会議の利用頻度が増えているが、旅費(交通費)だけでなく、移動時間というコスト削減効果についても実感される向きが多いのではなかろうか。

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