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生成AI(創造)と検索の違い

学校でAIを導入する前に心に留めて置くべきこと

最近、教育現場に少しずつ生成AIが導入されつつあるので、2019年から中等部でAIの授業をしている経験から、「学校でAIを導入する前に心に留めて置くべきこと」をちょっと話したいと思います。このテーマは、特にこれからの教育現場でのAIの適切な使い方を考える上でとても重要なことだと思います。

まず、生成AIとは、簡単に言うと情報を生成し、創造的な解答を提供する技術です。例えば、特定のテーマに沿った文章の作成、画像の生成、あるいはコードの提案など、創造的な活動をサポートすることができます。これに対して、従来の検索エンジンは、インターネット上の既存の情報を検索して提示することに特化しています。

AIは嘘をつく

中等部で過去4年間Pythonプログラミングを交えてAIについてのしくみを教えてきたのですが、自分がまず最初にやることはAIは確率的に物事を判断するので当然間違いがあることの説明です。これは実際にたくさんのデータ(教師データという)を学習させ、その結果(学習モデルという)で考察させているので、生徒はなんとなく「AIはたくさん学習させると賢くなるけど、完璧に正しい答えを出すとは限らない」と肌感覚で理解しています。このように生成AIを使う際には、それが確率的な判断を行うシステムであり、必ずしも完璧な答えを提供するわけではないことを理解しておく必要があります。

AIに対する根本的な知識の欠落

大切なことなので2回言いますが、生成AIは大量のデータを学習しており、その結果として出力される情報は、あくまでその学習データに基づくものです。なので、生成AIからの答えが必ずしも正しいとは限らないのです。よくニュースなどで「AIは嘘をつく」「事実とは異なる内容や、文脈と無関係な内容(ハルシネーション)を発言する」という人がいますが、当たり前のこと過ぎて、「ああ、この人たちはAIについて根本的な知識が欠落しているんだなぁ」と感じています。

子供たちはAIの発言を疑わず鵜呑みにする

特に子供たちにとっては、AIの発言を疑わず鵜呑みにしてしまう傾向があります。これは、大人でも同じで、私が教員研修をしたときによく見るのが、AIをまずは使ってみましょうというと、「今日の天気は?」や「日本の首都は?」のような、本来は検索を使うべき質問を生成AIに向けるケースです。大人であれば、もしAIが「日本の首都は千葉です」と答えたとしても、それが間違いであることを理解できますが、子供たちはそうはいきません。

非常に危険な行為

残念ながら、AIを効果的に使う前に必要な基礎知識を省略して、「これがAIを活用したの授業実践です」と高らかに紹介していることがあります。これは、生成AI(創造)と検索の本質的な違いを理解していない実践で、その前提なしで、AIを子供たちに使わせる非常に危険な行為なのではないかと危惧しています。

創造と検索の違い

生成AI(創造)と検索の違いを理解し、これらを適切に使い分けることが、子供たちが自分の考えを持ち、創造的に考える力を育む鍵です。私たちは、子供たちがAIを利用して創造的な作業を行いながらも、その出力が常に正しいとは限らないということを理解させる必要があります。

間違いを許容できる生徒の育成

子供たちの利用の仕方の理想としては、生成AIが「日本の首都は千葉です」と答えたならば、子供たちは「それは面白い答えだね!もし首都が千葉だったら…」というような議論を展開できるようになることです。子供たちは単に情報を受け取るだけでなく、批判的に考え、創造的な、しかも好奇心にあふれた議論を行う能力を身につけることができると考えています。これは、未来の日本を担う人材を育成する上で非常に重要なことです。生成AIと検索の違いをしっかりと理解し、それぞれのツールを適切に使いこなす能力を身につけること。これが、これからの教育の鍵じゃないかなと思います。

あとがき

普段は動画ばっかりで文章を書かないのですが、下記のURLにある東京学芸大学附属小金井小学校 鈴木秀樹教諭の授業に感動して文章書いちゃいました。この授業スタイルを参考にAIを教育に導入するといいと思います。

https://edu.watch.impress.co.jp/docs/report/1551206.html


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