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【やまのぼ ブックレビュー No.23】「すごいトシヨリBOOK」池内 紀・著<毎日新聞出版>を読んだ。

<やまのぼ>はサブタイトルに惹かれて本書を読んだ。

そのサブタイトルとは<トシをとると楽しみがふえる>である。人生100年なら、古希過ぎの<やまのぼ>なら、あと30年ほどある。もう~ひと花どころか、ふた花でも咲かせられるかもと読み始めた。

ところが、ドイツの詩人が、若いころ「老人は醜い」という、短い詩を書いたと、いきなり冷や水を浴びせられる。人生は単なる順番であるのに。

若者を憂うな!自分も歩んできた道。老人を憂うな!自分もやがて進み行く道なのだゾ!「自分に見捨てられ、言葉に見捨てられ、世間から見捨てられるというのが、老人の特性です」と、著者は追い打ちをかける。

高名なドイツ文学者である著者は、70歳を迎えたときから「自分の観察手帳」をつけ始めたそうである。本書はその手帳に記された「老い」に関する数々の気付きを踏まえた、著者なりの「楽しく老いる秘訣」を著したもの。

軽妙洒脱な文章で、日常生活の中でふとした瞬間に感じる「老い」の現実を端的に描き出した内容が、読者に支持されているのだ。

意外にも読者の半数が女性だとか。会社でのかつての肩書きや、とっくにブチ切れた人脈に頼ろうとし、いつまでも自立できない男性たちへの著者の厳しい視線が、女性陣の指示を得ているのだろう。

ところで、「目歯マラ」という言葉をご存知だろうか?
男が老いてゆく順番だそうだ。

そういえば、<やまのぼ>の場合も、老いの始まりは、知らず知らずに新聞を読む距離を、前後させている自分に気づき始めたときだった。

100均で初めて老眼鏡を買った時に観念したことを憶えている。だが、今のところ歯とマラは大丈夫である。特にマラは老いても、ますますご盛んな方で、困ったもので正真正銘の現役である。

著者はまたいう。

「人間というのはなぜ生まれてきたのか、なぜ死ぬのか、それはもう誰にもわからない。誰にもわからないし、理由なんかないんです。生まれたのも偶然だし、死ぬのも偶然・・・」と。

そこで<やまのぼ>は悟る。

<トシをとると楽しみがふえる>とは、老人に残された「人生のご褒美の時間」なのだと。誰にも気がねなく、人生を謳歌できるのが「老人の特権」なのだ。

世間体がなんだ!社会規範がなんだ!少々のワルがなんだ!<トシをとると楽しみがふえる>ことを追い求め、それを立証する人生を送ろうではないか!

たった一度の人生だ!御同輩!


<やまのぼ>のお薦め度 ★★★☆☆
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<やまのぼ>のお薦め度規準
(独断と偏見です。あしからず)
★★★★★ 蔵書にして読み返したい
★★★★☆ 読みごたえありでお薦め
★★★☆☆ そこそこ読みごたえあり
★★☆☆☆ 時間つぶしにはなります
★☆☆☆☆ 本屋での立ち読みで充分
☆☆☆☆☆ 時間の無駄使いだけです



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