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明け放った窓から、遠くの花火の音がささやきかける。あれから五度目の夏が来た。遅れそうだと…
巡り合えて三度目の逢瀬の宵。私は思い切って不治の持病を彼に打ち明けた。一呼吸あったにせよ…
あれが宵の明星だよ!迫る夕闇の彼方を指した彼の指先が、街灯の明かりの中で僅に震えている…
確かに消して出掛けたはずの私の部屋に、明かりがついている。合鍵を持たせたあの人が、突然…
父の介護は近くに住む妹に任せっきりだった。今夜が峠だと知らされ、最終の新幹線で駆けつける…
分析にあたり分担を決め分業する。余分の時間を排除し、分陰を惜しみ、通常かかる半分の時間で…
あなたは私のことが、分からなくなったとぼやいた。あの時、私こそと言い返さなかったのは、まだ愛情の欠片があったからだ。無神経で、自己中で、不器用で、分からず屋で、不仲なあなたと、今だに一緒にいる私。赤い糸というのも烏滸がましい夫婦関係。私の方こそ自己中の分からず屋なのかもしれない。 【超短編小説】分(その5)を読む 👉
部長から企画書を突き返され、コメントを受けた。このプロジェクトの成否の分水嶺が、ボクには…
不倫関係を二十年近く続けている。別れ話が出るどころか、関係がますます夫婦以上に深まる。そ…
部屋が片付いていないと機嫌が悪くなる妻の性分。結婚当初は、痘痕もエクボと愛情で丸め込んで…
「剪定に伺いました」「ただいま住職は禅定中でして」応対に出た妖婦に、絶句する植木屋。定評…
「課長!これでいいでしょうか」斎藤が稟議書の下書きを見せた。私はそれを斜め読みし、肯定も…
杓子定規に応対する若い店員に、定年過ぎのオヤジが切れた。「物も言いようで角が立つ」と言わ…
私の「定期落としましたよ」との声かけで、妻と交際し始めたのは半世紀前のこと。何をどうしてこうして、こうなったのか。今じゃ何もかもが定かでない。私は今日で、後期高齢者。めでたいのだろうか、そうでないのか。妻はいつもの通りの仏頂面で無関心。夫婦は空気のようだ!と断定できる私の近況だ。 定(その1)も読んでみる👉