臭いはあなたに訴えかけてる。
最近、父の加齢臭が気になるようになった。
それはふとした瞬間なのだ。
朝、食卓で先にご飯を食べている私の隣に、どすん、と座ったとき。
「それとって」と、私の近くにある調味料に手を伸ばしたとき。
洗面所ですれ違ったとき。
とかね。
最初は、「え、何なの、この匂いは」と口には出さないけれど、少し引いてしまった。顔に出てたかな。
一瞬だけど、
まさか熟年の色気とかを求めて、変な香水つけ始めたんじゃないでしょうね?
と、父を疑った(気づかれないように睨んだ)。
洗濯物も家族みんな一緒の洗剤で洗っているし、
父は整髪料やスキンケア用品を変えたわけでもなさそうだし。
休日の夕食の時間、普段着の状態で再びプン、と匂わせながら横に座った父に対して、悟った。
うん、これはもう老いの匂いだね。
どうしても身体から滲み出て、生理的に止めることのできない匂いだわ。
そっかあああ。年取ったんだなあ父も。
湯船の中で、ハアーーと溜息をつきながら考えた。
数年前から白髪が増えたなあとは思ったけど、
白髪は若者でも生えるわけだし、あまり気にしていなかった。
でも、嗅覚ってやっぱり訴えかけるものがあった。
ここ最近の父は、仕事で毎日毎日働きづめで、
電話しながらもイライラしているのを聞いては、
なんだかこちらまで鬱憤がたまっていた。
でも、父がいなければ、自分は学生でいることができなかった。
毎日、安心して布団で眠ることさえできなかったかもしれない。
だからね、かぐわしい匂いでは決してありません。が、
お父さん、しばらくは口に出さないでおくね。
この匂いは、私に、
「普段、父に塩対応すぎやしないか。今更思春期到来なわけ?」
「大学まで通わせてもらってること、もっと感謝しなきゃ」
と、思わせてくれる。
お、
父の加齢臭って、意外と良い効果を発揮しているんじゃない?
なんてね。