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光男の枠下人生〜第7章〜バスツアーはスリッパでお見送り

光男は暇つぶしにYouTubeやTikTokのライブ配信を観ているのだが、大抵は素っ頓狂なコメントでもしない限りは配信者から返しの一言はあるのだが、何故か光男は「居ない者」として飛ばされる事が圧倒的に多い。
それがちょっとエッチなネタを配信する人でもである。「オナニーはしないと前立腺ガンのリスクが高まるからしてね」と、配信者の女性がしていて光男は「してます☺️」とコメントを打っても他の同様のコメントを打っている御殿方には返してくれるのだが、光男だけはスルーなのである。
他の女性配信者からも同様にバラの🌹アイコンを送ろうが光男だけはスルーなので承認欲求が満たされ無かった光男はライブ配信とやらを早々に辞めた。
「あれこれ理由を付けたところで現実は変わらない訳だから早々に撤退して静かに暮らそう、こんな気温の低い寒い日曜日の午後は熱い玉露でも入れてガッチガチに硬い揚げ餅でも食べよう、そして曇り空の薄暗い部屋でフジテレビの競馬中継のCM前のジングルでも聴いておこう、私の人生に所詮トキメキみたいなものは無いのだからな、もういっそのこと〇ンポちょん切ってしまおうか?私はとにかく女性にうまいこと近寄って、おっぱいやおしりを触りたいだけなのだ、しかし釣れないなぁ、全く釣れない、総じてみんな逃げていく、、」
そんな光男は「ねるとん紅鯨団」のとあるシーンを思い出していた。
あの、素人参加型マッチング番組はとんねるずの二人にイジられることで視聴者側はいつしか出演者に感情移入していき「〇〇さん頑張れ!」みたいに終盤の告白タイムではいつの間にか自分事のように応援していたりする訳だが、収録中何が有ったのかは分からないが、なんだかチャラそうな男性が序盤の紹介の時だけ出ていて、告白タイムのシーンですらカットされている回が有ったのだ。
当時光男はそれを観て思ったのであった「アレは、まさに自分の様ではないか!」と。
そのチャラい男はなんていうか、おそらく本当はチャラくはなくて、なんていうか、この番組に出る為に相当な気合いを入れてチャラいのを無理矢理演じようとしていたように見えた。まるでワ〇〇本舗の〇カ〇カジャンが「今から面白い事をやりますよ~だので皆様どうぞ笑って下さい」みたいなアケスケジャンな感じがしたのであった。(アケスケジャン、)(そしてこんな比喩表現を考えついたのは、かの大槻ケンヂさんな訳で、筆者兼光男がそんなボキャブラリーに富んだ表現を出来るハズも無く、知らない人は騙せても、知ってるファンからすれば反吐が出る人間性、それが光男なのであることを伝えておこう、〇カ〇カジャンと「アケスケ(明け透け)ジャン」をかけて表現したのは光男のオリジナルであるがお察し下さい、世の中には学会芸以下の可哀想な人間だって居るのです、、)
これは自分の特性と似ている、この、何をやっても報われない感が、、、しかも司会進行は関東お笑いの頂点ともいえる位置に君臨している二人だ、相手の素人出演者が何者であろうともそこはいくらでも拾えたハズなのに編集カット、、きっとのっぴきならない何かがあったのだろう。
まだそれが出演者が輩気質で収録中トラブルになって干されたのであればまぁしゃあないねそれはと、まだ救いがあるような気もするのだが、もしもそれが全力で笑いを拾ってもらおうと、全身全霊を注いだにも関わらず「なんかオマエ、ちげぇし」と総スカンを喰らっていたとしたらそれは輩さんが逆ギレして干されるよりある意味痛々しいのだ。光男は高校生の頃にこのシーンを観ながら少し複雑な気持ちになった事が有る。もしかしてコレは自分なのではないのだろうか?と。
素人とはいえ、ブラウン管の向こう側の世界に足を踏み入れるところまでは行ったのにも関わらずOAで切られる位の地獄トークにしかならなかった本人の無念、、それは光男が20歳の頃に勤めていた会社の飲み会でも巻き起こった事が有る。「普通であれ」と、決して〇ハハのような押しつけがましい学会芸にならぬ様に徹したのだが、やはり相手にもされない。
なんとか爪痕を残したかった光男は女子グループがマイクロバスで帰るのを見送る事にしてなんというか、誠実なイメージだけでも残しておこうと玄関先まで出て両手で手を振りながら満面の笑みで「お疲れ様~っ!お疲れ様~!」と叫んだ。すると、窓を開ける女性が、、こんなに嬉しい事は無い、きっと何かしら返してくれるのだろうと期待に胸を膨らませていたのだがバスの去り際に女性から放たれた言葉は「あのう、スリッパのままですけどいいんですか?それ、土足になりますし、もう少し周りの迷惑を考えた方がいいですよ?」と、蔑むような目でそう捨て台詞気味に放されてしまった事が有る。一方、その飲み会にはスリッパ小暮とは引き換えに「風間トオル」似の同僚が人気の全てをかっさらって行き、トオル君はただ微笑みながら何も話さなかったけど女子が5人位寄って行き取り囲んでいた。トオル君はミニクーパーに乗っていて、レゲエやダンスミュージックが好きで、ブレイクダンス的なのも踊れた。一方、光男といえば、臆病過ぎる自分をなんとか克服しようとして傾倒したパンクミュージックというか、とにかくエグイ感じでカッコいいやつを聞いていた。とはいえ、洋楽ではセックスピストルズしか知らない。だのでたまたまジャケ買いした日本のバンド、マッドカプセルマーケッツを聴いていた。マッドカプセルマーケッツは今でも本当にカッコイイ、この飲みの席にもしもマッドカプセルマーケッツが来ていたらおそらくちょっとおっかなくても女子レーダーは敏感にそれをキャッチしてチヤホヤされたであろう。
だからこそ光男はそれに賭けていた、マッドカプセルマーケッツのような渋谷のチーマーみたいなスタイルでちょっと怖カッコいい感じにしといて実は気さくな感じのギャップ萌え路線で行こうと考えていたのだ、全てはおっぱいやおしりを触りたいがために、、。
しかしながら、体型に全く合って無いリーバイスの501と、IKKOさんしか着ない様なモコモコがたくさんついた上着とか着て、髪型はモミアゲ斜めの床屋カットで参戦し、つまり、全然マッドさんじゃない(芸人みたいに呼ぶな)そりゃ警戒もされるだろう、なんてったって得体が知れない訳だから。
ある意味でヒットマンスタイル、平気で人を殺めかねない雰囲気、そんな奴が靴も履き替えずに玄関先で満面の笑みで手を振って見送られる側の身にもなってみろといったところだろう、想像力の欠如というのは
こういう事を言うのだろうか、
それは女子達にも、スリッパで外に出られた施設側も、そして引き合いに出されたマッドさん達にも失礼極まり無かったに違いない。
時は現在に戻り、そんなことをぼんやり思い出しながら自分だけ無反応なライバーさんとかいうスマホの向こう側の女性のみなさんにアディオス!と、世代ならではのロケットダイブの歌詞を、hideさんしかカッコ良くはキマらないセリフを持ち出しているのがこれまた悲壮感が漂う日曜日の夕暮れ時の暗い部屋の片隅で、カッコを付ければ付ける程深みにハマり、笑いを取りに行っても相手の体力をただひたすらに奪うだけで、真面目に振舞ってもちょっとヤベー奴来たと思われる光男が履いているまっ黄色な、流通センターで買ったオリジナルシューズは光男が履くからこそ独特の異彩を発揮し、傍から見ればそれはつまり警戒色であり、事前に相手に知らせる点についてはある意味親切なのかもしれない。これが足が長くて色黒でDJみたいな髪型をしているイケメンDJみたいな人が黄色い靴ならばそれはおそらくナイスガイなのだろう、それに引き換え低身長でガニ股で2等身の失敗した非公認のゆるキャラみたいな体型の光男は己の身分、身の程をわきまえずに傾く(かぶく)ものだからそりゃあ生存率は著しく低いということになるのである。
そうやってアレもコレも売るものが無いのであれば貝のようにじっとして生きるしか無いだろう、、光男はなんだか少し寂しくなって涙腺が少し緩んだ。「ああ、、、じゃまーるにパンクバンド好きな、しかも、独りで住んでるギャルはいねえがぁ?、、いねえよなぁ、、じゃあ今晩の作品は、デッサンモデルのバイトと言われて来たのにいろいろされてしまうシリーズにするからな!覚悟しておけ!えへへ、えへへ、、」
真夜中にニュータッチチャーシューメンを頬張りながらむせび泣く光男であった。







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