夜とアルコール

履き潰した靴の中は既にぬかるんで
音を立てながら街を歩いている
池袋の街にジャズは似合わず
安物のハイハットが小気味よく4つに8つ刻んでいる

小さな車両で隣り合わせた 茶色い髪の長い女の子が
可愛いか美人かのギャンブルに毎日溺れている
この子は美しいに違いないな
痛いくらいに抱き合いたいな

とか言って 飲んで 吐いて 最低

な夜も最高だったのだ
タイトルも無いような夜が
延々と続くと思っていた
じきに 朝が来る

退屈した僕は絶妙に浮ついて
音を立てながら街を歩いている
池袋の街に夏はまだ来ず
安物のワンピースは家の隅でずっとずっと眠っている

陳腐な酒場でまた居合わせた 傷んだ髪を弄る女の子が
昔の男など肴に酒に溺れている
この子は寂しいに違いないな
癒えるのならば抱き合いたいな

とか言って 寄ってたかって 最低

だと言うと逃げ去った
甲斐性もないような僕は
延々と街を彷徨った
じきに 朝が来る

君が可愛いと言った服も
君が欲しいとねだった靴も
甘く深いその香りも
無理に笑って別れた夜も

まだ覚えているなんて 最低

えもいわれぬ様な日々だ
誰が 醜いか 美しいか
何が 正しいか 間違いか
推し量らんとすれば 傷つき 気付く日々だ

最低な夜が最高だったのだ
タイトルなんてないほうがいいな
永遠に続くと思っておこう
君とまた眠る


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