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電話相談員をしていた

Twitterで自殺関連のことを検索すると、東京自殺防止センターの問い合わせが表示され、自殺を水際で防ぐのを目的としているが、この取り組みに対して、否定・中傷的意見が散見しているのが現状だ。

電話してもつながらない、はよく目にする意見で、自殺防止センターだけでなくいのちの電話、よりそいホットラインでも同じことが言える。

また、自殺を助長されるようなことを言われた、説教をされたなどの意見も多くあり、かけないほうがよいという見解が多く存在する。

やっと電話がつながったのも関わらず、そんな風に突き放されたとしたら、夜孤独でいるであろうその方がさらに深い闇へと埋没しかねない。だから説教なんてあり得ないし、自分の経験、または一般論からのアドバイスなど、基本的には行わないとされている。

その一方で、特に希死念慮(死にたいと思う気持ち)が発生してしまった人に対して一時でも「死ぬ」を選ばなかったという意味において、電話して助けられている人も多くいるのではないかと思う。

自殺防止センターもいのちの電話も、今にももう死んでしまいたいという人をせめて一時でも、水際でなんとか死にたい気持ちを落ち着かせることが目的だ。

でも、その人が次の日、または数時間後に死ぬことを選ばないかと言えば決してそうではない。電話をかけてくれた人がその後どうなったのか、知る由もないことが、相談員をしてたころ片隅そんな思いが居続けた。

電話の最中、その後の支援に繋がるような会話なったことはなく、いわばその場限りの繋がりで、相手の方が今の気持ちを話すだけが最良のことだったのかどうか分からなかった。

今日Twitterのトレンドで新宿での出来事を知り、その度に東京自殺防止センターに対しての否定的意見、または否定意見が多いと言う人を見るので昔のことを思い出した。

ただTwitterに否定的な意見の方が多いのは当然かなと思う理由があり、希死念慮が取り払われたからといって辛い状況が激変するわけではなく、電話かけてよかったとツイートする人は多くないだろうし、人は褒めるよりも苛立ちの言語化能力の方が長けているので、SNS全般において否定的な意見が多くなりがちだ。実際、「自殺防止センター 良かった」でTwitter検索してみたら、数は少ないけれど「良かった」と思っている人たちがいて、もうかなりの過去のことなのに私がちょっと救われた気持ちになる。

自殺防止センターで相談員になるため、10年ぐらい前のときは以下の流れで電話に出るようになり、そのつながりでよりそいホットラインでも電話相談員やTwitterのDMで相談を受けるアカウントを運用していた。

相談員になるために以下のような養成講座を受けた。

・半年間、週1回の講義・ロールプレイング
・その後、スーパーバイザーとともに電話に出る
・後日、電話の振り返りをスーパーバイザーと行うx十数回

実際私の応対はどうだったのだろうか。説教をするほど自分の意見に自信なんてないので行った記憶はないのだけれど、助長させてしまったことはもしかしたらあるのかもしれない。何故なら、電話をかけてくれた方の意志を尊重する、がもっとも大切なことだからだ。

「死んでほしくない・自殺を止めたい」と「死にたい気持ち、自殺すること」を尊重するという、一見矛盾しているようだが、それは両立する。死んで欲しくないために、自殺はダメだ、ではなくて、死にたいという気持ちを聞かせてもらい、その気持ちを一緒に見つめ合い、そのときに感じた気持ちからさらに死が近づくのであれば、その死に一緒に近づくことになるから、その行為が死を助長する、ということになるのかもしれない。

そして、ある日ふと相談員を辞めてしまった。
ある方からの一言が心にずっしり残り、電話窓口が終わった朝方、家に帰ることが出来ず終着駅まで行ってずっとそのことを考えていた。

「私には生きる権利がないんです」

「権利」という言葉について、考えをめぐらせた。どんなものを持ち合わせたら権利が獲得できるだろうかと。何日も何日も権利について考えたけど、でもその方に何を話せばよかったのだろうか、何一つ答えがでなかった。

でも今思うは「権利」という言葉に私は囚われすぎてしまっていた。どんな権利なのかは、きっとその方にしかわからない。だから「権利」を想像することではなく、その権利を手にできないと思う辛い気持ちに寄り添えていたらと。今でも後悔をしている。

その後悔を私は忘れたくない。
カウンセリングの勉強を始めたいま、こういった出来事に対して文章を残しておくのもいいなと思い書いてみた。

話は逸れるが、Twitter社は自殺願望がある人に対して、支援団体につなぐ施策をしているのだから、だったらトレンドにそのようなワードが上がってきた段階で非表示にするようなことはしないのか、と疑問に思う。ウェルテル効果を防ぐために真っ先にやるべきことではないのだろうか。


最後まで読んでいただきありがとうございます。頂いたサポートをどのように活用できるかまだわからないです・・・。決まるまで置いておこうと思います。