水彩で綴る 「空」
「空」
薄水色の広がりに、指で平らに伸ばした綿のような、
それをすうーと引っ張った白い筋のような。
陽の当たるところが泡立てたクリームのように
光っていたり、
その下には薄い灰色のかたまりの中に
所々が貝殻の裏みたいな薄紫が
滲んでいたり。
少しもじっとしていない雲の流れを追っていたら
時間なんていくらあっても足りない。
空を見上げる。
どこまでも果てしない青に圧倒される日もあれば、
雨の匂いが辺りに漂う重たい鼠色の日。
どこからが空なのか分からないほど、
真っ白な空間にぽつんと放り込まれる日。
茜色から目を離した隙に、もう紫色が囲み始めていて
やがて群青色に溶け出していく夕闇手前のほんの半時。
人が空を見上げるのは、
明日の天気を占うため。
ちょっと深呼吸するように。
絡んだ気持ちをほぐそうとして。
地上からいなくなった人を想いながら。
きっと大丈夫と自らを励まして。
私はといえば、
遠い遠い空の向こうがこの場所からでも
見えるのかもしれないと、
期待しながら「空」を描いてみる。