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はじめまして、a.s.k です。水彩画を描いています。自分で撮った写真を基に気持ちをフ…

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はじめまして、a.s.k です。水彩画を描いています。自分で撮った写真を基に気持ちをフィルターにして、 なるべく遠くを意識して描くようにしています。 描き溜めた絵をタイトルのようにして、文章を添える作業もしています。 見ていただいて、何かを感じてもらえたら嬉しいです。

最近の記事

水彩で綴る 「曲がり道」

「曲がり道」   言い合いも、言い訳も、 独り言も、沈黙も、 ぜんぶ窓の外に捨ててしまえ。 風を切るスピードで、 晩夏の青い空に 吸い込まれていくのを見届ける。 ラジオからの夕立の予報を 深呼吸しながら聴いていた。 ひんやりとクーラーの風が頬にあたる。 信号の点滅のリズムに合わせるように アゲハ蝶がゆらゆらと道を横切る 午後3時。   にわかに黒い雲が覆い被さり 大きな粒がぽつりぽつりと 乾いた地面に模様をかいていく。 気付いた時には、 辺りはもう流れる水の膜の中。 不思議と

    • 水彩で綴る 「この夏のこと」

      今回は、以前に製作したコラージュから。 夏の海辺の、ある午後をイメージしたものです。 「この夏のこと」 とにかく蒸し暑くて、 なんとか耐え抜こうと 体力の維持に力を注ぐ毎日。 バランス良く食べて、ちゃんと汗をかいて 水分を摂って。 特に食にはいつもより気を遣うように。 朝、味噌汁を作る、フルーツを添える、 かつお節やじゃこをご飯にかける、などなど。 水分補給は、もっぱら麦茶と炭酸水、 時々ルイボス。 余裕のある時にミントティー。   そんな今年の夏の、私のエナジーチャージ

      • 水彩で綴る 「umikaze」

        「umikaze」 海の見える部屋から、ゆっくり進む貨物船を ただ眺める。 少しだけ開けた窓からは、湿気を含んだ風が 潮の匂いと一緒に吹き込んでくる。 夏は、 やっぱり海を見ながら過ごしたいと思ってしまう。 人気の少ない早朝や夕方に、のそっと海岸に出かけて 貝殻を拾いに行くのがいい。 角のとれたガラスや木のかけらが見つかると ちょっと嬉しいし、 黒っぽい海藻の編み物に足を取られるのも楽しい。 ヤドカリや小さなカニの速足、波打ち際の粋な模様のヒトデ、 丸い穴の開いた小石に気を

        • 水彩で綴る 「夕凪」

          「夕凪」 「夕凪」 熱い空気の膜が張り付いてるみたいで 息ができない。 振り払おうと夢中で海岸まで走る。 強く吹く風に救けをもとめたはずなのに、 低い雲は形を変えずに知らん顔。 夕焼けが少し始まって 陸の風と海の風が、お互いに黙り込んで しまう時。 蝉の声が背中の向こうでかすかにうねる。 海はただ鈍色に じっと時が過ぎるのを待つ。 立ち止まって、ゆっくりと息を吐く。 空と海の間が薄紫色に滲んでいる辺りに もう何かの灯りがひとつふたつ。 小さな真珠の粒の淡い光を 手にかざし

        水彩で綴る 「曲がり道」

          水彩で綴る 「川岸」

          「川岸」   流れを挟んだ向こう岸に、ビルや家々が並び、 一直線に車が走る。信号機の点滅。 程よい風に草がなびいて、 ふと子どもの頃に立った丘の草地を思い出す。 足元に広がる街は遠くなるほど霞んで、 大気に溶けていくみたい。 若いススキの葉が強い風にびゅうとなる中で、 負けない声で名まえを呼んだ、 同い年の従兄弟。 君がいなくなって、ずいぶん歳もとって、 いろいろなことがどんどん変わっていくけど、 変わらないことが沢山あるのだとわかった。 わかるために、 時が経った。

          水彩で綴る 「川岸」

          水彩で綴る 「空」

          「空」 薄水色の広がりに、指で平らに伸ばした綿のような、 それをすうーと引っ張った白い筋のような。 陽の当たるところが泡立てたクリームのように 光っていたり、 その下には薄い灰色のかたまりの中に 所々が貝殻の裏みたいな薄紫が 滲んでいたり。 少しもじっとしていない雲の流れを追っていたら 時間なんていくらあっても足りない。   空を見上げる。 どこまでも果てしない青に圧倒される日もあれば、 雨の匂いが辺りに漂う重たい鼠色の日。 どこからが空なのか分からないほど、 真っ白な空間に

          水彩で綴る 「空」

          水彩で綴る 「横須賀の海」

          「横須賀の海」 子どもの頃から親しんだ横須賀の海。 水平線の向こうには大抵ぼんやりと景色が見えて、 湾であることを知らせているけれど、 灯台へ続く道を上っていくと 急に濃い青の海原が広がって、 太平洋だと主張する。 ずっと遠くの国までこのまま青い海が続くような、 ちょっと胸が苦しくなるみたいな 哀しいような満たされたような気持ちになる。 曇りの日、薄いグレーと群青色が混じって、 ただ砕けた波の白い帯がうねっている。 そんなときは雲が形を変えて、 透き間から細い光で海面を鱗のよ

          水彩で綴る 「横須賀の海」

          水彩で綴る 「船窓より」

          「船窓より」 新潟港からジェットフォイルに乗って、佐渡へ。 年に一度真夏に、でも今年は初めて春になりました。 島の影が遠くに見え始めるころ、晴れたおかげで水平線あたりが 白く光って、舳先の波も穏やかに、近くほど濃い青がうねる。 何とかこの瞬間を捉えたくて、 厚いガラスの窓ごしに懸命にレンズを向けて。 そんな一枚から、この絵を描きました。 写真よりももっと、海の深さに緊張するように。 空と海との間に島の影が見える安堵の気持ちが、 ほんの少し滲んでくるような。   春の佐渡は、新

          水彩で綴る 「船窓より」

          水彩で綴る 「コラージュから水彩へ」

          「コラージュから水彩へ」 いつかは絵を描くと、なんとなく思っていましたが、 今になってみると何故か後回しにしていたような気がしています。 それまでは、雑誌や広告などを切り抜いてコラージュをしていました。 かなり作り溜めていましたが、テーマは主に「窓辺からの眺め」でした。 こんな高台の窓辺から眺めたら、海岸はこんな風だろう、とか。 かすかに海の香りがする風にカーテンが揺れて、 気付かぬうちに時間が過ぎている、といった風な。 もう一つのテーマは「夏の庭」。 強めの風が庭の草木を

          水彩で綴る 「コラージュから水彩へ」

          水彩で綴る 「音 満ちる」

          昨年、ずっと支えになっていた音楽を創っていた人がいなくなって、 不在の世界で暮らしていくことの悲しみが、ちくちくと皮膚を刺し、 胸の奥からきゅうっと押し潰される。 今の私にとっての「音の風景」を表したら、こんな風になりました。 ーーーーーーーーーーーーーー 「音 満ちる」 椅子に腰掛け、テーブルに肘をついて、一度ふうーっと息を吐き、 また立ち上がり、冷蔵庫からアイスコーヒーを出してグラスに注ぐ。 今朝は音が要る。 鳥や風の気配も無いし、灰色の雲と淡い陽の光にうってつけの音

          水彩で綴る 「音 満ちる」

          水彩で綴る 「 chosuichi 」 

          「 chosuichi 」 都会の中に、沼なんてないと思っていた。 散歩の途中に見る貯水池は、池というよりどこか沼の気配で 薄暗い木立の中にひっそりと在る。 淀んで深さもわからない。 薄曇りの平たい光を、金属のような鈍い色で受け止める。 或る晴れた朝、深い緑色の水面が蒼い空と木立の姿を映し出すのを見た。 頭上の空とは別のスクリーンが、哀し気なトーンで横たわる。 底へ底へと誘われるような濃い蒼色と 晴れた朝の光る水色が溶けて出来た色。 沼でなければ何と呼ぼう。 ーーーーー

          水彩で綴る 「 chosuichi 」 

          水彩で綴る

          はじめまして、a.s.k(あすく)です。 コロナ禍に始めたコラージュを続けていくうちに、絵の具を使ったら もっとのびのびと世界が広がるような気がしてきて。 家にある水彩絵の具を引っぱり出して、とりあえず気持ちのままに 描いてみました。 二枚三枚進めると、自然に自分のスタイルのようなものが立ち上がり、 水彩絵の具だけれど、油絵のような、時には墨絵のような、 アクリルのような、使い方次第で広がっていく風景に、心が躍りました。 サイズはA4か、八つ切のみ。 本の挿し絵のような気持ち

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