現実へ戻って行く日々

スマホが手元に戻ってきた。
操作は困らずに使えたし、これでだいぶと入院生活が変わった。
コロナ禍で誰にも会えなかったけれど、この電話のおかげで寂しさは回避していた。
ただ、わたしが送るメッセージは、誤字だらけで支離滅裂だった。
今読み返してもぞっとする。

命が終わらないと判断されてからは、リハビリが始まった。
ST(言語聴覚士)のリハビリで、認知症の検査の長谷川式をした。
あらかじめ見せられた3つの物を覚えて、会話を挟んだ後に布で隠された先ほどの3つを思い出すという検査だ。
認知症の私の母は1つ思い出せたが、私は1つも思い出せなかった。

色々なリハビリをしたが、どれも恐怖と途轍もない疲労感と、したくないという強い拒否感だった。
中でも、迷路を解くのがとても怖かった。一生出られないんじゃないかという恐怖。
机上だからそんなわけはないけれど、怯えた。
それと、簡単な数字合わせや、例えば、野菜の名前を3つ言うという事ができない。
野菜は頭に浮かんでくるが、その名前が出てこなかった。これには打ちひしがれた。
でもこれが、10個言える日がやってきた時には、とんでもなく喜んだ事を覚えている。

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