見出し画像

NHKさん、これ大河にしましょうよ! ジャニーズで!『傾城徳川家康』大塚卓嗣(著)

表紙に心射抜かれ、日本史全然詳しくないけど手に取る。
本当に失礼な話だが、正直あんまり期待してなかったが、面白くてびっくり。

あらすじ

松平家の嫡男にして、尾張国の人質・竹千代は、その才を織田信長に気に入られるも、今川家との人質交換で、三河国へと移される。そこで竹千代は、申楽の師・観世十郎と出会い、駿府館で今川義元に近づく機会を得る。しかし、宿敵・義元からは、その眉目秀麗な容姿と才能を、歪んだ形で寵愛される。狂おしいほどの殺意を秘め、舞台は運命の桶狭間の合戦へと向かうのだが……。圧倒的熱量で描かれる超弩級のエンタメ歴史小説!

ネタバレ感想

一顧すれば人の城を傾け、再顧すれば人の国を傾く。
そんな色気を振りまく竹千代君が今川義元に手篭めにされ復讐するお話。桶狭間の合戦までがメインストーリー。

お話はそれだけだが、なんと言っても魅力はキャラクター。特に主人公二人が強烈。竹千代の妖艶さと、義元の狂気が凄まじく、他が完全に霞んでしまうほど。織田信長など完全に空気。
いい仕事していたのは、服部半蔵、十郎太夫、前田利家、木下藤吉郎くらいか。利家はその実直さが好ましいし、松との掛け合いも笑えるのでナンバーワン脇役。しかし振り返ると、本編には何ら絡んでいなかったな…。

とはいえ、主人公二人の描写だけで、十分お腹いっぱい。
裸に薄絹1枚で申楽を踊る竹千代、竹千代に化粧する義元、義元の秘密の蔵、嵐の中師匠を殺そうとする竹千代、等々、中盤以降の怒涛の展開は、絵面を想像するだけで幸福。
まぁ竹千代君は親子2代に渡って手篭めにされていることを知り、殺意が育つ一方だが、それがさらなる艶となるところが皮肉。

衆道(BL)シーンは、耐性がないのでウヒャーと思いながら読んだが、控えめだし耽美だしで、初心者向。中学生でも問題ないレベル。表紙絵でイメージできるのも良いね。義元は髭面の爺だけど。

あと、お話の柱の一つが申楽。
十郎太夫が竹千代に申楽を仕込むことが、全ての始まりになっている。
見事な舞でのし上がってゆく竹千代に、十郎太夫は秘匿する世阿弥の奥義書(風姿花伝)を託す。
「秘すれば花なり」と、殺意を隠し、義元の元で学び、抱かれて、義元を、駿府を滅ぼすチャンスを待つが、実は義元にはすべて見透かされており、秘策は全て潰される。そんな中でクライマックスの桶狭間を迎える。
竹千代(この頃は元康だが)は、不意を打てるのか、とかなりドキドキハラハラで夜を徹して読んでしまった。

LGBTの権利が叫ばれ、きのう何食べた? がドラマ化される昨今なら、この程度実写化できるのではないだろうか? とTV見ないくせにタイトルで大河ドラマ化を提案してみたが、ちょっと調べたら、2017年大河ドラマ『おんな城主直虎』で徳川家康と万千代の関係が描かれてたのね。これは本書ではエピローグで描かれるが、正直、桶狭間以後は蛇足かな。

表紙絵

表紙絵かいてる yoco 氏の tumblr はこちら。


この記事が参加している募集

読書感想文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?