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『沈みかけの船より、愛をこめて 幻夢コレクション』乙一、中田永一、山白朝子(著)

破綻しかけた家庭の中で、親を選択することを強いられる子どもたちの受難と驚くべき結末を描いた表題作ほか、「時間跳躍機構」を用いて時間軸移動をくり返す驚愕の物語「地球に磔(はりつけ)にされた男」など全11編、奇想と叙情、バラエティーにあふれた「ひとり」アンソロジー。

乙一は大好きな作家だが、最近のは読んでないし、他名義も読んだことなかった。そんな折、丁度良く他名義も集めたアンソロ短編集があると知り、手に取る。

どういう使い分けか不明だが、全部普通に乙一。文体を使い分けてると思ってたのでやや拍子抜けかな。しかし毎度死角から心の柔らかい所をつついてくる手腕は健在。正直傑作は無かったが普通に楽しめた。

ちなみに、解説の安達寛高は乙一の本名。なのでセルフ解説なのだが、〇〇らしいとか他人事で評していて笑える。

また、Amazon限定で本にならないと思って買ったカー・オブ・ザ・デッドが入っており吃驚。

以下好きなやつピックアップ。

五分間の永遠

いじめられっ子が、クラスメイトに500円渡し、5分間友達のふりをしてもらうお話。

ベタな展開、ベタなオチ、それが良い! とはいえこんな切ない話勘弁してくれ。

沈みかけの船より、愛をこめて

両親が離婚することになり、どちらについて行くべきか慎重に査定するお話。

母と父、どちらが好きかではなく、金と生活能力で選んでゆく主人公に共感しかない。自分も子供の頃、母親が「離婚したらどっちについていく?」と聞いてきたことがあるので、同様に悩んだ記憶があるが、この主人公の冷静さには舌を巻くよ。しかしそれより、父親が気持ち悪すぎてホラー。なにからなにまで終始気持ち悪い。このホラー具合は意図されてるのだろうか? 悪い意味で印象深い一遍。

二つの顔と表面

宗教2世の娘に人面疽ができ、クラスで発生した猫殺害事件を二人(?)で捜査するお話。

今話題の宗教2世のお話。彼にも人面疽がいれば、あんな凶行には及ばなかったろうに、と思わずにおれないほど、このお話の人面疽は良いやつ(笑)
人面疽が出てきた時点でホラーかと思いきや、まさかの探偵もので、意表を突かれる。まぁこの謎自体は無理筋だと思うが、人面疽が可愛いので許せる。そしてラストに明かされる(というか示唆される)人面疽の正体も予想外で良かった。後日譚が気になって仕方ない。

#読書感想 #読了 #ネタバレ  

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