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2022年4月の記事一覧

『ベストSF2021』大森望(編)

サイエンスといより、少し不思議的SFオムニバス。作者あとがきで、これがSFだと初めて知ったというコメントが続いたのにウケた。 一番好きなのは、伴名練「全てのアイドルが老いない世界」。2位が柴田勝家「クランツマンの秘仏」、3位が勝山海百合「あれは真珠というものかしら」と麦原遼「それでもわたしは永遠に働きたい」。5位が藤野可織「いつかたったひとつの最高のかばんで」。 アタリが多かった印象だが、麦原遼という作家を知れたのが、この本最大の収穫。単行本が待ち遠しいよ。 以下個別感

『旅する小舟』ペーター・ヴァン・デン・エンデ(著)

絵だけの絵本。セリフなど一切なく、モノクロで濃密な線画の連続にため息がでる。 油絵の傑作を見ると感動しか感じないが、なまじ線画だと労力も想像できるのでため息が濃くなる。 お話としては、大きな紙で作られた小舟が海から陸に流れてゆくだけなのだが、道中がファンタジー世界で、巨大海洋生物とか普通にいるので、その迫力に感動する。 一応人間もいて、自然破壊風刺がちょっとあるのだが、この世界をみてると、健気に頑張っとるね、としか思えず微笑ましかった。 ラストにちょっと予想外の展開があ