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2021年10月の記事一覧

『金色機械』恒川光太郎(著)

触れるだけで相手の命を奪う恐ろしい手を持って生まれてきた少女、自分を殺そうとする父から逃げ、山賊に拾われた男、幼き日に犯した罪を贖おうとするかのように必死に悪を糺す同心、人々の哀しい運命が、謎の存在・金色様を介して交錯する。人にとって善とは何か、悪とは何か。 恒川光太郎の書くスター・ウォーズ外伝! と言いたくなるほど金色様の造形がC-3POで笑ってしまう。 お話は時代小説で、異能を持つ二人(嘘や殺気が見える人、さわるだけで生き物を殺せる人)のお話。それぞれの過去がかたら

『天使と噓』マイケル・ロボサム(著) 越前敏弥(訳)

〈英国推理作家協会賞最優秀長篇賞受賞作〉臨床心理士のサイラスが施設で出会った少女イーヴィは嘘を見抜ける能力を持っていた。そして、彼らは警察の要請で女子スケートチャンピオン殺害事件の捜査に加わる。将来を期待されていた選手に、何が起こったのか――世界各国で激賞された傑作ミステリ 嘘を見抜けるキャラありきの特殊設定ミステリーかと思いきや、普通の刑事ドラマであった。普通におもしろい。正直、嘘が見抜けるとかより、二人の主人公の生い立ちの壮絶さのほうが魅力的。そんな二人が友愛を培ってゆ

『私はフーイー 沖縄怪談短篇集』恒川光太郎(著)

ヨマブリと胡弓の響き、願いを叶えてくれる魔物、ニョラの棲む洞窟、林の奥の小さなパーラー、深夜に走るお化け電車、祭りの夜の不吉な予言、転生を繰り返す少女フーイーが見た島の歴史と運命とは― 短編7編。沖縄土着の怪談アレンジかと思いきや、舞台が沖縄なだけで、いつもの恒川光太郎。ホラー寄りだが、比嘉慂の『美童物語』みたいに洗骨とか黒い歴史にはあまりふれてない。 前半は正直イマイチで、沖縄である意味が薄く、むしろ足をひっぱてる印象だったが、戦争の歴史が絡んでくる後半は呼応するように