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2021年4月の記事一覧

読むと唆界に落ちる『驚愕の曠野』筒井康隆(著)

幾層にも夢見られ、語られ、発見された書物の中の書物。その内なる広野で悪夢の旋律に踊る人間=魔物たちの繰りひろげる、終末のファンタジー。 構成がえぐい。小説とはなんぞや、という問いが剛速球で飛んでくる。 というのも、数百巻ある本の折り返し地点からお話が始まるからである。しかもそれを音読してるお姉さんが若干のネタバレまでしてくる。はたして自分は何を読まされているのか、という気分ちになるが、語られるお話は殺伐としているがさすがの筆力で引き込まれる。 未来のような過去のようなほ

夢のような幻想!『内なる町から来た話』ショーン・タン(著)岸本佐知子(訳)

上の階に住むワニ、空を覆い尽くす蝶の群れ。町にいる動物たちをめぐる、不思議で懐かしい25の物語。『遠い町から来た話』の姉妹編、著者待望の最新作! オールカラー。 初ショーン・タン。大人の絵本として名高いので読んでみたが、絵も文章も予想以上に幻想的。絵本というより、夢の絵日記という方がしっくりくる。 本書は動物をテーマに、掌編と短編集がみっちりつまっており、全てに表紙のような美麗絵がついてる。(というか表紙絵は描き下ろしではなく、作中の流用。犬の話だけ絵が沢山。犬好き?)

怖いというより不気味『夜市』恒川光太郎(著)

妖怪たちが様々な品物を売る不思議な市場「夜市」。ここでは望むものが何でも手に入る。小学生の時に夜市に迷い込んだ裕司は、自分の弟と引き換えに「野球の才能」を買った。野球部のヒーローとして成長した裕司だったが、弟を売ったことに罪悪感を抱き続けてきた。そして今夜、弟を買い戻すため、裕司は再び夜市を訪れた――。奇跡的な美しさに満ちた感動のエンディング! 魂を揺さぶる、日本ホラー小説大賞受賞作。 『竜が最後に帰る場所』で恒川光太郎にはまったのでデビュー作から読んでゆく。 デビュー作

超美麗『星界の紋章 全8巻』米村孝一郎(作) 森岡浩之(原作)

天翔ける迷惑が宇宙へ飛翔する! 狂気の逃走劇の果て―――ジントとラフィールは【棺桶】に乗り、惑星クラスビュールからの脱出に成功する。宇宙に帰還した2人を出迎えたのは【惑乱の淑女】スポールだった。シリーズ累計200万部突破の名作スペースオペラ、コミック版、ついに完結! ラフィール、そしてジントの運命は――!? 『ポリフォニカ・ザ・ブラック』以来、米村孝一郎ファン(氏の描く美女は本当に眼福)なので原作未読で手に取ったが、SFとしても大傑作。一つの文化、言語を丸々作り上げる森岡浩

タイムマシン×館もの『時空旅行者の砂時計』方丈貴恵(著)

瀕死の妻のために謎の声に従い、2018年から1960年にタイムトラベルした主人公・加茂。妻の祖先・竜泉家の人々が殺害され、後に起こった土砂崩れで一族のほとんどが亡くなった「死野の惨劇」の真相の解明が、彼女の命を救うことに繋がるという。タイムリミットは、土砂崩れがすべてを吞み込むまでの四日間。閉ざされた館の中で起こる不可能犯罪の真犯人を暴き、加茂は2018年に戻ることができるのか!? “令和のアルフレッド・ベスター”による、SF設定を本格ミステリに盛り込んだ、第29回鮎川哲也賞

安楽椅子探偵の完成形『ママは何でも知っている』ジェイムズ・ヤッフェ(著)小尾芙佐(訳)

毎週金曜の夜、刑事のデイビッドは妻を連れ、ブロンクスの実家へママを訪れる。ディナーの席でいつもママが聞きたがるのは捜査中の殺人事件の話。ママは"簡単な質問"をいくつかするだけで、何週間も警察を悩ませている事件をいともたやすく解決してしまう。用いるのは世間一般の常識、人間心理を見抜く目、豊富な人生経験のみ。安楽椅子探偵ものの最高峰と称される〈ブロンクスのママ〉シリーズ、傑作短篇8篇を収録。 キレッキレの安楽椅子探偵ミステリ8個。どれも晩餐中の雑談でママが瞬殺するのが最高。 自

驚愕のラスト『medium 霊媒探偵城塚翡翠』相沢沙呼(著)

推理作家として難事件を解決してきた香月史郎は、心に傷を負った女性、城塚翡翠と出逢う。彼女は霊媒として死者の言葉を伝えることができる。しかしそこに証拠能力はなく、香月は霊視と論理の力を組み合わせながら、事件に立ち向かう。一方、巷では連続殺人鬼が人々を脅かしていた。証拠を残さない殺人鬼を追い詰められるのは、翡翠の力のみ。だが殺人鬼の魔手は密かに彼女へと迫っていた――。 ★第20回本格ミステリ大賞受賞 ★このミステリーがすごい! 1位 ★本格ミステリ・ベスト10 1位 ★SRの会ミ