【ネタバレ有】『アナと雪の女王2』初見感想

『アナと雪の女王2』を観てきた。この記事にはネタバレしかないのでご注意。初見なので間違ってるとこもあるかも。


まず面白かったかどうかでいうと、面白かった。物語は様々な問題を織り込んで混沌としており、正直よくわからない部分もあったが、結末は前作とは違うところに辿り着いた。

前作はエルサという危険な異分子が社会とどう共存するかということが一つの大きな主題であるインクルージョンの物語だったけれど、今作はその先を描いている。姉妹は大人になり、エルサは自由な魔法使いに、アナはアレンデールの女王になった。今作は大きくいえば二人が自分たちのルーツを辿り、それぞれがいるべき場所を見つけたという話なんだろうと思う。

「大人になる」こと

「ずっとかわらないもの」やオラフの「おとなになったら」、アナの「わたしにできること」などのミュージカルシーンや人を変えるという魔法の森は、「変わること」「大人になること」が今作の一つの主題であることを強調している。

今回特に成長したなあと思ったのはアナ。前作から考えると、彼女が姉も恋人も伴わず、愛する彼らを救おうとするのでもなく、「世界のためにすべきこと」を考えて行動したのを初めて見た気がする。

これまでのディズニーの(だけでなくおとぎ話の)プリンセスは専ら私的な領域で描かれることが多かった。「大人しく家事労働をがんばっていれば素敵な王子様が見初めてくれて、お城で彼と幸せに暮らせる」というのが最初期で、「プリンセスも能動的に恋や冒険をして自分で選んだ自分らしい人生を生きていい」というのが次に来たけれど、彼女たちはプリンセス(王女)でありクイーン(女王)ではない、未だ統治者としての責任や公的な責務を負うことのない存在に留まっていた。

今年公開された実写版『アラジン』、『マレフィセント2』、そして今作『アナと雪の女王2』は、かつてプリンセスだったヒロイン(ジャスミン、オーロラ、アナ)がクイーンになっているという共通点を持つ。彼女たちは皆「自分と家族と恋人」という私的な範囲を超えた視野を持ち、公的領域での自分の役割や立ち位置について考えながら行動している。

子ども向けの映画でどこまでやるべきかというのは議論の余地があると思うけど、政治や経済の責任ある立場にも女性が(日本は全然だけど世界的に見ると)増えてきた世の中なのだから、この流れ自体は良いなと思う。

ただ、君主制をリアルに描くほどその問題点も見えやすくなるので難しいところだよなと思う。民主制の方がええやんって思う場面が出てきちゃう。今回のアナの行動(ダムの破壊)も、そんな国民への被害が甚大なことを王女の一存で決めるの良くないんじゃない?って思う人絶対いると思う。私は思った。別に話し合いでなんでもうまく行くとは思わんけども……

アナはおそらく(敵である父を助けた母のように)自国の利益よりも倫理的正しさを優先するタイプで、うまくいけばよき統治者になるかもしれない。まあ上に立つのはまともな倫理観の人であってほしいよね。自国第一主義への批判なのかな。
エルサの死と再生についてはもうちょっと説明してほしかったけど、エルサはなんだか別の存在に生まれ変わったみたいに見えた。前からすごい魔力で強かったけど、もっと神様っぽくなった気がする。「女王」はあんまり向いてなかったのかな?居心地の良いところで自由になれてよかったねという印象。前作のラストをひっくり返したようでもあるけど。

あとエルサがアセクシャルであろうということが冒頭の遊びのシーンとかでも強調されてた。

歴史と真実と語りの問題

この映画は歴史認識の問題も扱っていて、それでちょっと難しくなってるところもある。

作中ではしばしば「真実」という言葉が使われる。エルサは超自然的存在と魔法によって過去の「真実」を知り、自分たちが父から聞いていた話に嘘や誤りがあったことを知る。それを最後の力でアナに伝えてエルサは凍りついてしまう。アナはその「真実」から自分の国が過ちと加害の上に立っていることを知り、国土を犠牲にしてもそれを正そうと決意する。

これはおそらく歴史修正主義の問題を念頭に、戦争や紛争の歴史を語り継ぐことについて回る客観性や信頼性の問題に取り組んだ部分で、さすがに意欲的だなと思う反面ある種の危うさも感じる。

エルサとアナが発見した「真実」は自分たちの祖父の罪だったけれど、現実社会で問題となっているネットなどで発見される「真実」は、発見者の祖父を免罪するものであることが多い。

それに現実には当時の状況を客観的に再現してくれる神様や魔法の雪像はなく、人々は双方の証言を記録し、加えてできる限りの物的・状況的証拠を積み重ねて判断するしかないのだ。

「自国で教わる歴史」や「みんなが信じている歴史」は正しくないかもしれないというメッセージ(それ自体は別に間違ってはいない)を子どもに伝えるならば、その扱いは慎重にしないと良くない方向の影響があるんじゃないかという気がしなくもない。

先住民とディズニーの先進国目線の問題

ディズニーは昔からどうも「先住民族=自然」対「西洋人=文明」という対照で描くところがあり、今回もそんな感じがあるなあと思った

あとアナとエルサが双方の民の血を引いているということで国家間の架け橋になるというのはわかりやすいけれど、アレンデールで生まれ育った二人が急に架け橋になれるのかなーという気がちょっとしてしまう。
血は繋がってないけど妖精に育てられたから妖精の女王もやっている『マレフィセント2』のオーロラ姫とは逆のパターンで、最近のディズニーはマージナルな存在に多様な社会の集団同士を結ぶ「架け橋」としての可能性を見出しているのだろうと思う。
それはいいんだけれども、どちらも妖精たち/ノーサルドラの人たちが(オーロラ、アナ、エルサがいくら善良で素敵だとはいえ)無邪気に彼女たちを歓待してるのにはちょっと違和感というかディズニーの先進国目線みたいなのを感じなくもなくて毎度ちょっともやる。まあ今回エルサはノーサルドラの女王になったわけでは多分ないのでまあ……いいか……

男の話

「男の話」とわざわざ書いて思い出さなければならないほど、今作は男の影が薄い。メインと言える男性はクリストフ(とスヴェンとオラフ)だけだったし、クリストフは中盤のコミカルな見せ場以降しばらく退場してしまう。

でも今作のクリストフはかなり面白かった。そして間違いなく作中で一番恋愛してた。歌も良かった。あまり間抜けに描かれるのは気の毒な気もするが、今作も徹頭徹尾いい奴だった。今回ライダーが出てきて、クリストフとのシスターフッドならぬブラザーフッドが描かれていたのもディズニーにしては新しくて興味深い。男友達に恋愛相談する男性主人公は女友達に恋愛相談するプリンセスと同じくらい今までのディズニーにはいなかったと思う。恋愛相談以外の話ができる方がさらに良いわけだが。
(そもそもヒーローもヒロインも友達がいないことが多いよね)

まとめ

だらだら書いたけど、アナもエルサもクリストフも、最新のディズニーのヒロイン・ヒーロー像として今作も面白い変化を遂げていたと思う。

最近は昔の名作のリメイクが多くて、それらがオリジナルからどう変わってるかをみるのも面白いものだけど、『アナと雪の女王』は最新のプリンセスもので、(『雪の女王』という原作はあれど)ほとんどオリジナルに近いので自由度が高く、詰めたいテーマ詰めたんだろうなという感じ。

もう一回ぐらいは観に行くと思います。

#映画レビュー #アナ雪2 #ディズニー

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