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「女性のためだけの生理休暇は不公平?」職場の相互理解のために「生理」を学ぶ。みんなの生理研修@群馬県大泉町

企業向け研修プログラム『みんなの生理研修』を、「#NoBagForMe」プロジェクトで提供開始して1年が経ちました。

生理にまつわる知識向上や、職場での相互理解の促進を目指し、2020年には21社で研修を実施。2021年に入ってからは申し込みが急増し、自治体や大学からも依頼が届いています。

社会が生理と向き合おうとする背景には、どんな思いがあるのでしょうか。浜松市での市民向けイベントに続き、今回は自治体の職員向けとしては初の『みんなの生理研修』をレポート。群馬県のとある町役場で実施された様子をお届けします。

多様な文化が共生する町を目指して@群馬県大泉町


群馬県東南部に位置する大泉町は、総人口4万人超のうち約19%にあたる7888人が外国籍の方々です(※2021年7月末現在)。ブラジルやペルーといった南米系の方を中心に、文化や言語の異なる人たちが共に暮らしています。
また、県内で初めてLGBTカップルを公的に認めるパートナーシップ制度を導入したほか、男女共同参画社会の実現にも力を入れている自治体です。

そんな町を支える大泉町役場が、職員向けに「みんなの生理研修」を実施。希望者のみの1日限定の研修にもかかわらず、午前と午後で計51名もの職員の方々が参加してくれました。

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「みんなの生理研修」の基本の講義内容は、生理の仕組みや女性のカラダについて知るパートと、生理ケア用品の選択肢や使い方を学ぶパートの2部構成です。それらに加えて、それぞれの企業や団体が講義で学んだことをより深めつつ、お互いの相互理解を深める目的でディスカッションやワークショップの場を設けることもあります。

大泉町の研修では、体調不良の女性とのコミュニケーションを具体的なケースから考える個人ワークを用意。知識を身につけるだけにとどまらない、さまざまな工夫がされた充実の内容でした。

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なかでも、災害時における生理ケアについて学ぶパートを設けていたのは、多くの方々の命と生活を守る自治体ならではのアイデア。

ソフィの担当者からは、災害時に生理になった女性の困りごとや、女性にとって必要な防災備蓄品についてなど、有事の際の助けとなる情報をまとめて、職員のみなさんにお伝えしました。

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研修を手掛けたのは、大泉町役場の企画部 多文化協働課。中心となってリードした上地泰樹さんと森あやさんに、研修を終えての思いを伺いました。

支援は「どんなものか」を知ることから


──今回の「みんなの生理研修」は、どんなきっかけでスタートしたのですか。

上地:最近、いろんな自治体で「生理の貧困」にまつわる支援事業が活発になっています。自分たちも何かしようと考えたときに、そもそも「生理についての知識がほとんどない」と気づいたんです。

森:女性である私自身、記憶をさかのぼっても、生理について詳しく教わった記憶はほとんどありません。

私たち多文化協働課は、男女共同参画の担当部署でもあります。町民の方々へのセミナーのほか、職員向けの内部研修も企画します。
メディアで「生理の貧困」が話題になり、課内でもいろいろ議論しましたが、生理が何かをわかっていなければ、どんな配慮や支援も的外れになってしまう。まずは正しい知識を身につける必要性を感じました。

上地:働き方改革やワークライフバランスの見直し、産休・育休の取得は声高に訴えられていますが、それらに比べて生理休暇については言及がされず、むしろ消極的な対応にとどまっている印象を受けます。
そういった部分から変えていかなければと思っていた矢先に「みんなの生理研修」を知って、申し込みました。

垣間見えた、タブー視のリアル


──職員の方々からはどんな反応がありましたか?

上地:生理は今、行政でも注目されているテーマなので、予想以上に多くの人が興味を持ってくれたように思います。
ただ、いつものような座学をイメージしていた人は、入り口すぐに設けた生理用品の展示ブースを見て、考えが変わったみたいです(笑)。

森:ナプキンをブックスタンドに貼り付けて展示したんですよ。最初に2人で準備しているときに、上地が少し戸惑っているのを見て、パートナーに言われて生理用品を買ったことがある男性でも、たしかに中身まで見る機会はないよなあ、と。せっかくなら、そこまで知っておいたほうがいいのでは?と考えました。

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上地:公務員なのでカタい空気があるし、管理職は8割以上が男性という環境。少なからず生理をタブー視しているところもあるようで、特に研修中に生理用品を触ってみるパートでは、戸惑いを示した人もいました。センシティブなテーマを扱う難しさを感じましたね。

──ただ、任意参加の「みんなの生理研修」を上の方が率先して受講されるのは、組織として非常に大きな意味があると思います。

森:そうですね。参加者の多くは興味を持って講義を聞き、生理ケア用品をあれこれ手に取ってくれていました。男性職員から「この製品をパートナーに教えてみようかな」という反応もあって、おおむね好感触でした。

上地:職員たちの表情に手応えを感じましたね。自分も研修準備にあたって、ナプキンやタンポンを実際に触って、使い方を勉強しました。パートナーに頼まれて買いに行ったことはあったけど、取り替える頻度や捨て方までは考えたこともありませんでした。
こうした体験のおかげで、生理がどんなものなのか、自分の中に落ちてきた実感があります。

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ゴールは「お互いを考えるきっかけづくり」

──研修は「正しい知識を身につける」が目的とのことでしたが、生理ケア用品の展示のほかにも、さまざまな工夫をされていましたね。

上地:研修のもっと先に目指しているのは、性別を問わず体調について相談ができて、働きやすい職場だからですね。その第一歩として、生理をテーマにした研修が、お互いについて考えるきっかけになることを期待していました。

実は、今まで私は「自分は女性にやさしいほうだな」と自負していたんです。でも、全然そんなことなくて……。研修の準備を進めながら、森と生理について話していたら、まるで配慮できていなかったと気づいたんです。
参加者にもそんなふうに、過去の対応を振り返ったりこれから何ができるか考えたりしてもらいたい。どうしたら当事者になってもらえるかと議論して、個人ワークの時間を設けました。

森:生理は一人ひとり違うものだと思うので、単なる知識としてインプットするのではなくて、生理を身近なものとして考えてもらいたい。そう考えて、個人ワークの課題は、できるだけリアルに想像できるシチュエーション設定にこだわりました。

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上地:症状も千差万別で、痛みがつらいだけではなくて、気分が落ち込んで話しかけられたくない人もいる。そういったことを、男性は想像することが難しいです。

以前は自分も配慮のつもりで「甘いものを買ってきたら、きっと女性は喜んでくれるのかな?」と考えていました。でも森が自分の生理の症状などをあれこれ説明しつつ、「生理は症状も捉え方も、人それぞれ違うもの」という理解を促してくれました。

「女性特有の生理だから」ではなく、「性別にかかわらず、お互いが理解し合うには何が必要なのか」という視点で話し合うと、生理についてもっと学びたい、みんなにも知ってほしいという気持ちが自然に湧きます。今回の研修に参加した人にも、そんなふうに感じてもらえたら嬉しいですね。

──質疑応答の最後に「女性のためだけの生理休暇は不公平感がある。逆差別では?」という質問を紹介されたのも印象的でした。

上地:制度に対する否定的な意見も、私は耳を傾けるべきだと思っています。座学を受けて、アンケートに答えて終わりにはしたくなかったので、いろんな見方や考え方に触れて、自分の中でモヤモヤと考えてもらえたらと、あの質問を投げかけてみました。

ソフィの担当者さんが、「生理休暇」という名称ではなく、不妊治療やその他の体調不良でも活用できる制度にしている企業事例を紹介してくれて、個人的にも視野が広がりましたね。

継続的なサポートと“女性の視点”の広がりを

──研修では防災備蓄品としての生理ケア用品についても触れましたが、自治体として女性のための災害時にどんな備えをされているのでしょう。

森:防災担当の総務部安全安心課では、昨年度、備蓄専用の生理用ナプキンを購入しました。密封されていて10年の長期保存が可能なタイプです。ほかにも、新しく着替えや授乳などができるプライベートテントも用意しました。

また女性に限らずですが、大泉町は外国籍の住民が多いので、私たち多文化協働課がサポートして、外国人向けの標示やマニュアルの整備も行いました。

──「みんなの生理研修」に関連して、これから大泉町としてチャレンジしたい取り組みはありますか?

上地:女性の健康については、今回の研修で一石を投じられたと思います。そこから広げて、男性特有の健康問題やアンコンシャス・バイアスなど、男女共同参画のためのさまざまな切り口で施策を展開したいですね。

森:知識の習得は、自分を守ることでもあり、周囲を尊重することもでもあります。たとえば、PMSだって知らなければ、気分をコントロールできない自分に落ち込みますが、勉強すれば「仕方ない」と割り切れたり、対策がとれたりもする。周囲への対応も変わります。

だから、もっとみなさんに「ジェンダーについて学びたい」と思ってもらえるような企画に、引き続き取り組んでいけたらいいですね。

「みんなの生理研修2021」お申し込み受付中

「みんなの生理研修」実施初年度の2020年は、サイボウズ様やLINE様など複数の企業で開催し、受講者の満足度は9割以上となりました。
2021年も、受講を希望される企業のお申し込みを開始しています。今年は「動画などで好きな日時に自由に受講できると良い」というお声にお応えし、ご活用しやすい研修動画をご用意しました。

お申し込みは以下のフォームから。お申し込みをお待ちしています!

文:中道薫
写真提供:群馬県大泉町役場多文化協働課

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