後編

「#じぶんにいいこと はじめよう」 イベントレポート(後編)

ユニ・チャームから、オーガニックコットン採用の新ラインナップ「ソフィORGANIC®オーガニックコットン」シリーズが誕生。その発売を記念したトークイベントが、5月13日(月)に開催されました。

後編となる本記事は、質疑応答のやりとりをレポート。会場やSNSから寄せられた質問に、illuminate・ハヤカワ五味さんとEMILY WEEK・柿沼あき子さんが回答しました。


「『汚物入れ』という表現、名称は変えていきたい」

——それでは、引き続いて質疑応答に移りたいと思います。

<質問1>
ハヤカワさんと柿沼さんは自宅のトイレにサニタリーボックスを置いていますか?

ハヤカワ 私はまちまちですね。けっこう置いてる方って多いのかな?

——そもそも生理用品を捨てる箱を何て呼べばいいのか問題もありますよね。

ハヤカワ 昔は汚物入れって呼んでましたよね。

柿沼 でも、汚物という表現は自尊心が傷ついて嫌な気持ちになりませんか? すごく変えていきたいところですね。

ハヤカワ 「サニタリーボックス」という呼び方になっただけでもかなり改善されたと思うんですけど、上の世代だと「汚物入れ」という認識は強そう。そういう世代間のコミュニケーションの齟齬も気になるところなので、今後のプロジェクトで追っていけたらいいなと思います。

——ちなみに、そういった生理に関する世代間の違いだったり、生理の歴史を学べる本でおすすめはありますか?

ハヤカワ 『生理用品の社会史』っていう田中ひかるさんの本はオススメです。あと、その前提条件となる知識をおさえるために『偏見や差別はなぜ起こる?』を呼んでおくと理解が深まると思います。


<質問2>生理が辛いときはどうやって仕事とのバランスを取っていますか?

柿沼 チームで個々の生理週間を共有していて、基本的に休めるときは休むようにしています。あと、急な腹痛には薬草ホットパッドでお腹を温めると薬ぐらい即効で痛みが和らぐのでいいですよ。レンジで暖めて当てるだけなのですごく簡単ですし。

——ハヤカワさんはいかがですか?

ハヤカワ 私、生理用品のプロジェクトをやってるから重い方だと勘違いされるんですけど、けっこう軽くて特段何かしていることはないんですよね。ただ、普段から自分のことを甘やかしているかも。お菓子を毎日食べたりとか(笑)。


<質問3>
「#NoBagForMe」で生理用品はつくらないのですか? また、日本以外の国の生理用品事情についてご存知でしたら教えてください。

ハヤカワ 生理用品自体をつくらないのかっていう話なんですけど、国内でつくろうとすると、工場の整備からはじめないといけないので莫大なお金がかかるんですね。それこそ10億円くらい。それはさすがに現実的ではないじゃないですか。じゃあ輸入をしようと思っても、それは法律的な問題で難しくて。

そもそも日本の生理用品ってすごく品質が良いので、そこはユニ・チャームさんの力を借りてパッケージデザインからはじめたいと考えています。それがすごく好評だったら生理用品自体もつくれる可能性も出てくるので、発売されたらぜひ購入してみてください(笑)。

次に海外の生理用品事情についてですが、本当に国によってまちまちなんですよね。例えば、アメリカは日本よりもオープンで話しやすい。逆に東南アジアの国だと日本よりも過酷で。生理を不浄視されているので、そもそもナプキンを使っていなかったりします。しかも、そういう国にナプキンを送ったとしても、月経血を吸わせたナプキンを捨てる場所がないので使えなかったりして。この前上映されていたインド映画の『パッドマン』もそうですけど、国によって状況は違っていて、いろんな取り組みが行われていますよね。

柿沼 廃棄の問題を抱えているインドやケニアでは、土に還る繊維でできた安全性と廃棄性を兼ね備えた生理用品がつくられていて、けっこう面白くなってます。


<質問4>ハヤカワさんは月経カップをどのように使っていますか? 交換するタイミングなどについて知りたいです。

ハヤカワ 除菌用のウェットティッシュを持ち歩いて、経血が溜まっていると感じたら取り出して拭いてから戻しています。あとは生理になる前に煮沸しておいたり、気になる人は毎日消毒してもいいと思います。ただ、1日中付けっぱなしにするのはしんどいし、病気になるリスクもあるので、夜はナプキンを使うようにしています。


「卑弥呼はPMSで女帝になった」? 生理がタブー視されてきた歴史

——あと、事前にいただいていた質問があるので、そちらも回答していただければと思います。「生理はどうして恥ずかしくて、小声で話すことなのでしょうか」とのことです。

柿沼 それこそ、さっきハヤカワさんが紹介していた本とかを読んでみると、生理がタブー視されてきた歴史が書いてあって面白いですよね。

ハヤカワ そうですね。例えば、魔女狩りの犠牲者になった女性が生理だったんじゃないかとか、卑弥呼が女帝になれたのは生理前のPMSでイライラしていたのが神秘的に映ったからだとか、いろいろな逸話が書いてあるんですよ。

柿沼 昔は生理のことが医学的にもあまり解明されていなかったから、神秘的に崇める人と怖がる人に分かれて歴史が発展しているんですよね。タブー視されることの方が多いですけど。

ハヤカワ 血って感染の媒介になってしまうので、医療がそれほど発展していなかった時代は避けるべき存在とされていたんですよね。特に昔は、今よりも若いうちから子どもを産む機会が多かったので、生理の回数が10分の1とか20分の1とかなんですよ。そうすると、怪我もしていないのに身体のなかから血が突然出るのを怖がるのも当然なのかなって。ただ、現在はそういう状況ではないので、生理についてもっと知っていく方がいいと思います。

「女性同士でも分かり合えないことがあるのが生理」

——男性からも「パートナーが生理のときにどう接したらいいのか」という質問がきています。

柿沼 生理中の私のことを普段どう考えているのか夫に聞いてみたんです。そしたら「風邪以上インフルエンザ未満だと思っている」と言っていて。確かに風邪を引いていても、ちょっと頑張れば動けるじゃないですか。でも時々インフルエンザくらい不可抗力なこともあって。だから、間違ってないかなとは思いました。つまり、状態を察して気を遣ってほしいんですよね。

ハヤカワ あとは扁桃腺炎とかに近い気がして。私自身は生理が軽いし、PMSもほぼないのでけっこうピンピンしているんですけど、妹は扁桃腺が弱くて月に1度は39度とかの熱を出しているんですね。それって当事者でない限りどれくらいしんどいのかわからないじゃないですか。だから、たまに心ない言葉を言ってしまうこともあったんですけど、そういう人ってなりたくてそうなっているわけではないので、受け入れる気持ちが大事だと思います。

——実は生理って女性同士でも分かり合えないことも多いわけですよね。

柿沼 そうですね。人によって生理の重い軽いは違いますから。

ハヤカワ それで頑張りを押し付けられることもありますよね。「私は生理でつらいのにこんなに頑張ってるんだ」って。でも、耐えられる度合いは人にとって違うから、お互いの状況を理解し合うのが大切なんですよね。


——「生理に興味がない男性投資家へのロジカルなプレゼンの方法が知りたいです」とのことです。これはハヤカワさんへの質問かと思うのですが、いかがでしょうか?

ハヤカワ ポイントはひとつで、いかに数字を持ってくるか。男女とかフェミニズムの話って感情的になりやすいんですよね。でも、そこで重要になるのが根拠の部分。例えば、「生理用品の普及ってカラーテレビの後なんですよ」って説明をしただけで、歴史はまだ浅いんだってわかるじゃないですか。しかも、人口の半分がマーケットになる事業ってなかなかないと思うんですよ。

柿沼 男性が知らないことが多いのは逆にチャンスですよね。私も「EMILY WEEK」を立ち上げるときに役員に対していろいろ説明したことがあるんですけど、意外と男性の共感を得やすいなって。なかには娘さんがいらっしゃる方もいるので、気にしてなくはないんですよね。

——日本は生理教育がすごく遅れていると感じます。そういう意味では、お二人の活動は今日ここに来ている人たち以外へのアプローチが重要になってくると思うのですが、それについて具体的に考えていることはありますか?

ハヤカワ 今はふたつの方法を考えています。ひとつは広告主へのアプローチ。現状、社会にはいろいろな課題があると思っています。それは生理用品のことだけじゃなくて。例えば、脱毛サロンの広告もすごく刷り込みがあるじゃないですか。そういうところを変えていきたいなと思っています。

もうひとつは教育を変えていくこと。私はこれがいちばん重要だなと思っています。今までの世代を変えるより、これからの世代が変わっていく方が健全だと思っているので。例えば、天動説と地動説の話があるじゃないですか。あれってなぜ地動説が主流になったかというと、天動説派の人が老衰で次々に亡くなったかららしいんですね。そうやって私たちより上の世代は淘汰されていくので、私たち世代から変えていけたらいいなと思っています。

柿沼 「EMILY WEEK」のターゲット層を25〜30代の女性にしているのもハヤカワさんが言っていることと同じで。これから母親になっていく世代が子どもに対してオープンに性を語れるようになればいいなと思っています。というのも、私自身が初潮のときにすごくトラウマがあって。友人には相談できないし、母親も紙ナプキンを渡してくるだけで生理について詳しく教えてくれない。そういう生理との不幸な出会いを変えていきたいんですよね。

ハヤカワ お祝いで出てくるお赤飯とかもそうじゃないですか。すごく恥ずかしい。

柿沼 私には兄がいるのですが、特に理由も告げられずに夕食でお赤飯が出てきて「何で?」と疑問に思ったはずなんですよね。当事者である私ですら戸惑ったわけですから。

ハヤカワ 個人的にはキルフェボンのタルトとかに変えた方が、女性としては嬉しいと思うんですけどね。

柿沼 はじめての生理との出会いの時に、親から娘へ生理への知識や対処方法、身体を大切にすることなどがきちんと話される場になると良いと思います。そのときに素敵なアイテムが一緒に渡される世界を「EMILY WEEK」ではずっと考えています。

——残念ながら時間が来てしまいました。本日はありがとうございました!

* * *

ハヤカワさんも柿沼さんもまだまだ話し足りなそうな雰囲気でしたが、本日はここまで。この続きは、今後みなさんと一緒に考えていきたいと思います。もちろん、女性だけでなく男性も大歓迎!

もっとフラットでオープンな社会をつくっていくために、SNSで「#じぶんにいいこと」や「#NoBagForMe」のハッシュタグをつけて、みなさんの意見を聞かせてください。

(構成:村上広大

EMILY WEEK特製ポーチのプレゼントキャンペーンや、she isとのコラボレーションも実施中です。どちらも締め切りは2019年6月19日まで。ご応募お待ちしております!



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