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もう顔も見たくない

僕は温厚な人間ではない。

しかしながら、声を荒げる事は、ほとんど無い。恐らく相手を信用していないからだと思う。どうせ理解してもいない、そんな話題で叱るだけ無駄だ。

ただ、本当に時折例外はある。自分の中でどうしても、それだけは許せない、と言うライン。琴線というか逆鱗というか。あとは、相手が取るに足らない訳では無い、それなりに信用している相手の時。繰り返すようだが、話にならない相手とは話をしない。

そんな僕が、つい先日怒ってしまった。

症例は進行癌stageⅣの症例。家に帰りたいと言って、在宅環境を整えたが、感染症や多臓器障害やらで方針の変更を余儀無くされた。長く病院で過ごすなら他病棟に移る事を容認していたが、予後推定では数週間以内で、進行速度の速い事から急性増悪も考えられる。

そんな症例に対して、信用していた師長から転棟を依頼された。終末期として輸液を絞る指示を出した翌日の朝のことだった。他にもターミナルの患者がいるから部屋調整で出て欲しい、と。思わず激昂した。

その夜、激昂した事自体は詫びたが、僕は今でも納得はしていない。予後予測のアレコレを抜きにして、患者の顔も見ずに判断する看護管理者なら、そんなものは百害あって一利なしだ。

暫くは顔も見たくなければ、口も聞きたくない。こんな人に焦がれていたなんて、恥ずかしくて死にたくなる。

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