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話題性が期限切れした舞台四畳半の話の供養をさせてください

情報というのは常々、日向に置いた生魚の如き早さで劣化していきます。それ故に、時間が経つにつれ情報の価値は下がっていくのです。

舞台版四畳半神話大系。もはや記憶に懐かしい単語となりました。

にもかかわらずあいも変わらず僕のアイコンは“私”のままです。賞味期限どころか消費期限をとうに超えてます。
なので。ここらで一つ、解釈じみたものを供養させてください。

先に言っておきます。今回、長いです。

閑話休題



※注意※
ここから先は舞台版四畳半のみならず
四畳半神話大系関連の作品においての
多大なネタバレを含むことがあります。
予めご了承ください。



さて。

当然ではございますが、舞台版四畳半神話大系には原作ともアニメとも違う描写がございます。
その中でも一際(当社比)目を引くのが

コロッセオ

です。

「なんですかそりゃ」
と言いたくなるでしょうその気持ちを抑えてこのまま読んでください。

お気付きの方も多いと思いますが、舞台版にするにあたり原作から泣く泣くカットをするなどして、結果コロッセオの扱いが微妙に異なっているんです。

表題で「舞台」としたのは、ここから先の話でそういった差異から他では成り立たなくなるかもしれないからなんですね。

さて、そんなコロッセオをめぐってたどり着いた四畳半世界。そこから私は無事に脱出できるわけですが

なんでや。

と。

てかなんで閉じ込められたんや。

と。
とある日の私は思ったのです。

そりゃそうです。わけもわからず閉じ込められた四畳半世界で、私は「コロッセオ」に気づいて四畳半世界を抜け出します。

そのコロッセオは私曰く「呪い」、占い師曰く「好機の印」
であるとすれば、いずれにしてもしっくりきません。

例えば呪いなのだったら、それまでのコロッセオが呪いじみていなかったことで違和感が。

例えば好機の印だとしても、最後のコロッセオは好機のスケールが大きすぎる。

こうして私は四畳半世界の私よろしく、コロッセオについて思考に耽る……ほどではないですが、その謎に頭を悩ませることになるのです。

そうして何日か頭を悩ませ、結果たどり着いた答えはとても単純で明快な答えでした。

それ故に、もしかしたら皆様も辿り着いた答えかもしれませんが悪しからず。


なぜ抜け出せたのか

それでは、まず考えるにあたって、この時の僕の思考回路をリフレインしてみます。

思考①:なぜコロッセオなのか

僕はまずこう考えます。

「コロッセオなんてめっちゃ象徴的なものなんだから、ここに答えがあるに違いない!!!!」

そう。わざわざ「コロッセオ」としているんです。かの歴史遺物が意味し、連想させるものはたくさんあるのです。

つまり、その構成要素を突き詰めれば、四畳半世界から抜け出せた理由にたどり着けるはずなのです。

そうして僕は考えていきます。

戦い、イタリア、世界遺産……。

もしここに答えがあるのであれば、きっと僕がローマに行った時に気づくことができるのでしょう。
しかし、ローマに行ったことのない僕には、結局ここに答えを見つけられなかったのです。

そうして次に僕はこんな思考に入りました。

思考②:コロッセオってなんやねん

①の命題の出し方とは天と地の差です。

しかし、これもれっきとした命題。言い方をよくすれば、疑問がより一般化された命題へと姿を変えたのです。
苦しい言い訳ですね。

しかしこれ、僕の中では意外にも結論へ辿り着く立派な足がかりとなったのです。

ここまで僕は「コロッセオとは何か」
すなわち、コロッセオ自体における意味を見出そうとしていたのです。
それに対してここでは「コロッセオは何か」
すなわち、コロッセオから何を意味させようとしているのか、もっと簡単に言い換えれば

思考③:コロッセオは何のメタファーなのか

ここに辿り着くことができたわけです。
言語化が難しいですね。

ここから僕の思考は、本格的に解釈へと近づいていきます。

それでは、それを説明するために舞台四畳半のコロッセオを振り返ってみましょう。

第一章 貪り食ったカステラの形
第ニ章 なぜか家にあった大金入りのバッグ
第三章 羽貫さんのネックレス
第四章 最初の部屋に置いた「0」の紙

これが舞台版のコロッセオ一覧です。

コロッセオが何を表現しているのか。
これを考える上で、これらの「コロッセオ」を構成するものから考える方法をとります。

すなわち、

これらのコロッセオたちに共通する点

をあぶり出すんです。

そしてそれは至極単純なものでした。
それは、

です。

だってそうでしょう、最初は食べ物、次は絵、次はアクセサリー、次は文字です。

別の観点でも異なります。
最初は黄色系統、次は黒色の絵柄、次はシルバーでしょう、最後は黒のインク
他にも、ロケーションだって、コロッセオの形状だってそれぞれ違うわけです。

しかし、ただ一つ同じと言ってもいいだろうものに、大きな概念で捉えた時の、それは丸である。という概念があるわけです。

そして丸は言い方を変えれば

円・輪

となり、それを音で捉えれば

縁・和

となり、そこから連想される言葉といえば、

人との縁・人との和(輪)

ということになるわけです。

これを三章までのストーリーに当てはめると

第一章:カステラを貪り食った先で明石さんとの縁(恋)に辿り着く。
第ニ章:コロッセオのバッグに入った金で束子を買い、樋口師匠や、小津との縁を選ぶ。
第三章:コロッセオのネックレスをした羽貫さんとの縁(恋)の可能性があった。(それを断ち切る形でストーリーは進行)

このようにバッチリ当てはまるんですね。

ほらそこ、羽貫さんは脈なしだったとか言わない。
ただ、一応そこに関しては、断ち切ってしまったために、3人の女性(?)との恋愛劇を全て棒に振ってしまったのだと解釈しています。

さて、それでは問題の四章です。
ですがここからはトントン拍子に解釈を進めます。

まず、コロッセオがこれで正しい解釈だと仮定すると、次に必要なのは四畳半世界が何かということになるのですが、これは

引きこもり

この状態のメタファーと考えられます。
これこそ単純明快で、“私”にとって四畳半とは愛すべき城であって、同時に、孤独になる場所なのです。

しかし、私には小津という悪友がおり、奴は事あるごとに下宿に押しかけてきます。

つまり。

小津によって、私の孤独は否定され続けた

というわけです。

しかしながら、四章の私は、福猫飯店を辞めることで世間との縁を断ち、かつ、小津から戻るかを尋ねられた時も戻らず、結果、小津を家から追い出す日々を続けます。
しかしそれは当然、自分が一人になりたいという自分の意志からのものでした。

そうして奇しくも時を同じくして、小津は悪行が祟って私の家に来ることが無くなります。

これによって私の四畳半はどこまでも続く孤独の象徴となってしまったのです。

ここまで来ればなぜ閉じ込められたのかはなんとなくわかります。
どちらかといえば自身を閉じ込めたと言った方がきっと正しい解釈になるわけです。

さて、ここで命題に戻ります。なぜ抜け出せたのか?

これは自身の中で紆余曲折ございましたが以下のような結論になりました。

まず、プロセスを整理しましょう

①最後の繋がりの小津を突き放し閉じ込められる。
②数多の自分のifの並行世界を旅する。
③それらを旅する中で最初の部屋0につく。
④0と自分の辿った道を重ねコロッセオに気づく。
⑤出る。

こんな感じですかね。ではこれを追っていきましょう。

①はさっき解決しました。

次に②ですが、並行世界とは何かを考えてみると、第一〜三章から推測するに、「様々なコロッセオを見つけた自分の人生たち」ということになります。

すなわち、先の定義と合わせれば、「様々な人との縁の形を見つけた自分の人生たち」と言い換えれます。
四畳半世界に私以外の私が存在しないのもそのためでしょう。

それらを巡った先で私は自分の四畳半に戻る。すなわち③は他の人生から自分の人生へ、言い換えれば自分の人生を振り返ることであると言えるでしょう。
実際に振り返りますしね。

そうして④で自分の人生たる0の紙を見ながら呟くのです。

「80日もかけて大きな円を描いてきただけなのか……?

コロッセオみたいだな。」

つまり、自分の人生と他の自分の人生を重ね、自分の人生の縁を再度見つめ直すのです。

抜け出すための鍵は「コロッセオ」。私はコロッセオに気づくことでこの世界から出ます。それ故、この点では疑いの余地がありません。

すなわち、私が人との縁に気づくこと、人との繋がり、人との支え合いで今の自分がいることに気づくことが抜け出す鍵であるわけです。

ここまで来れば私が出れたことにも納得がいきます。

そしてコロッセオが好機とも呪いともなる。それすらも納得がいく気がするのです。

舞台四畳半神話大系の最大の謎とも言えるコロッセオと四畳半世界。これについての僕の見解はこれが全てです。

これを思うと僕は本当に私自身だったのだなと思います。

あの公演で色々な人に支えられました。そしてきっといろんな人を支えてたんだと思います。
冬公はそれに気づくきっかけになった公演だったなと。今思えばそう思います。

せっかく思いついたので世に出したいという気も当然ありました。
ので、せっかくだからとここで書かせていただきました。

そうじゃないだろという意見も、なるほどなという意見もあって当然です。
ただこんな四畳半もあるんだなくらいの気分でいていただければ僕としては嬉しいです。

それでは、またの不定期更新をお待ちください。

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