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【映画感想】パーフェクト・ドライバー

【※ネタバレありです※】
それなりに前情報を入れて、パーフェクト・ドライバーを観てきた。
こういったカーアクションモノを観るのは初めてだったのだけど、何が起こっているかよくわからないシーンもあったものの、手に汗握るスリルの連続で、エンディングまであっという間だった。(もちろん、映画としてのクオリティがとても高かったということを含めて)
物語として続いていかなければならないから、当然と言えば当然なのだが、パク・ソダム扮するウナの圧倒的なドライブテクニックに、敵勢力は翻弄され、次々に退けられていく。分かってはいても、これがなんとも気持ちがよく、スクリーンに釘付けになってしまう。電車と間一髪の接触を避ける瞬間は、思わず唸り声が出た。水戸黄門が世代を超えて愛される理由と同じなのだろう。

主演は、あの「パラサイト」で長女ギジョンを演じていたパク・ソダムだ。個人的にギジョンは、あの曲者ぞろいの一家の中でも、一際好きなキャラクターである。一家の中で、最も才に溢れていたと思うし、下水が逆流するトイレの蓋を押し込めながら、一服する姿は、滅茶苦茶クールで格好良い。そのパク・ソダムが、「パラサイト」のダソン役であるチョン・ヒョンジュンと再び共演するということで、(個人的な)話題性は抜群だった。ただ、パンフレットで知ったことだが、本作のキャスティング時点では、パラサイトで二人が共演することは明らかでなかったらしい!…なんという偶然。

アクションには明るいわけではないため、細かい感想は述べられないが、違和感のようなものは全く感じなかったので、パク・ソダムは相当の努力を重ねて撮影に臨んだのだと思う。特に肝となる運転シーンは、ハンドルの切り方やクラッチの入れ方などの見栄えが素晴らしかった。

本作は、派手なアクションシーンもさることながら、ウナの細やかな心理描写も必見だ。そして、そこにこそパク・ソダムの演技力が遺憾なく発揮されていると思っている。特にソウォンとの出逢い、交流を経て、凍てつく心が少しずつ溶かされていく表現はお見事。
個人的に、公園で仲介業者にソウォンを引き渡しながらも、葛藤の末にソウォンを取り返す(?)シーンが好きだ。数少ないウナの迷いが描かれており、この展開があって後、ソウォンを守り抜く決意を固めるのだろう。
ソウォンへの特別な感情の背景に、ウナは脱北者であり、家族を全員を失っているというバックグラウンドがある。深い哀しみを背負うウナだからこそ、ソウォンに共感し、そして救い出そうとしているのだという、説得力がある。そんな物語の重層感も、本作の魅力の一つだろう。
ウナを、ただクールで格好いい天才ドライバーで終わらせるのではなく、人間としての厚み、奥行きを持たせていること、そして、その情報が徐々に明かされていくという構造が、物語への没入感を高めているのではないだろうか。
それを成立させるパク・ソダムはやはり特出した女優だろう。

本作は、他のキャラクターもみな魅力的だ。悪徳刑事であり、ヤクザでもあるチョ・ギョンピルを演じたソン・セビョクは、冷徹で殺人も厭わない恐ろしさを持ちつつも、どこか憎めないコミカルさも滲み出ており、物語が必要以上に暗くなりすぎることを防いでくれていたと思う。

最後に!本作は、特に映画館で観て良かった映画だ。ぼくは基本的に映画は映画館で観るのが一番楽しめると思っているが、本作は特にそう思った。

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