【読書感想】『平熱のまま、この世界に熱狂したい』
なんともキャッチーなタイトルである。
そして、すごく共感できる。”平熱のまま”というのは、自分を失わず、社会の枠からはみ出さず、繰り返す日常を享受しながら、それでもこの世界に熱狂したい、人生を精一杯楽しみたいと考えている、自分にすごく響いた。そして、同じように考えている現代人は結構多いのではないだろうか。
まず、帯の文章をそのまま引用したい。
うーん…惹かれる。
というのも、ぼくもお酒が大好きだからだ。就職後はほぼ毎日お酒を飲んでいる。元々は仕事のストレスの発散のためだと思っていて、もちろんそれも多少はあるのだけれど、それよりも大きいのはより人生が楽しく豊かになると思っているから。
ぼくは、お酒というのは”万能感情増幅器”だと思っている。そして、豊かな人生というのは、どれだけ大きく感情の振り幅が持てるかだとも思っている。すなわち”万能感情増幅器”であるお酒=人生を豊かにする万能品!となるのである。
例えば、家でネットフリックスの映画を観る。すごく良い映画だ。感動する。涙が出そうだ。
そんな映画をぼくがウィスキーでも嗜みながら飲んだら、嗚咽が止まらなくなるだろう。登場人物に共感し、背景や音楽に感動し、観終わった後は感想文(駄文)を書き殴っているだろう。
同じ時間をかけて同じ映画を観るなら、感動する方が絶対に良い。だからお酒を飲むのである。
(ちなみにぼくは映画館で映画を観るのも大好きで、その時はお酒を飲まない。家で映画を観るのと映画館で映画を観るのはほぼ別ジャンルだと思っている)
そんなぼくに本文のとある箇所がものすごく刺さった。町田康のエッセイを引用しながら綴っている以下である。
この文章を読んで、比喩ではなく、腰を抜かした。何度も何度も反芻した。
まさか、ここまで自分の中のお酒を飲む理由を、言語化されてしまうとは。
この世界は、曖昧で、不確かで、寄る辺がない。それでも――――。
お酒だけは絶対に裏切らない。お酒を飲めば確実に人生を豊かにできる(と思ってしまう)。だからお酒を飲んでしまう。
そんな酒飲みの心情を、ここまで見事に暴いてしまう著者がどうやって断酒に取り組んだのか。どうやって世界を見つめ直したのか、それは是非とも本著を読んで欲しいと思う。
ただ、それが酒飲みのぼくにも響いたのは事実である。
…と格好よく書いたものの、ぼくはまだお酒をやめられそうにないし、やめるつもりもない。ただ、やめなくて済むよう設けている休肝日、どうしようもなく退屈でつまらなかった休肝日でも、この世界に熱狂できる術を教えてもらうことができたと思う。
ぼくも平熱のまま、この世界に熱狂してやろう。
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