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【映画感想】「君たちはまだ長いトンネルの中」は大人の青春映画かも?

なんとなく今風でお洒落なタイトルに惹かれて、前情報なく観にいってきた。”社会派青春ストーリー”という謳い文句も、好みの香りだったので。

観始めて、最初はひたすら説明風な経済の話が続いて、正直失敗したと思った。作者の思想が先行し、ストーリーが後付けに感じられた。主人公兼ヒロインのアサミに対しても感情移入が難しかった。

…しかし、中盤から様々な”大人たち”が登場し、物語が絡み合うことで、じわじわと面白さが追いかけてくる。”大人たち”も、かつてはアサミたちのように、ひたむきに目指すべき場所へ突き進んでいたのだろう。ただ、”大人たち”には、抗えない現実があって、いずれは己の夢も諦めてしまう。それが彼らにとって正解ではないのかもしれないが、同時に間違いでもないからだ。”大人”には守らなくてはいけない日々の生活がある。

だからこそ、ラスト10分のカタルシスが堪らない。この映画はこのシーンのためにあるのではと思わせるほどだった。

武藤の演説・・・とも言えないような叫びに不覚にも泣いてしまった。まさかこの映画で泣くとは思ってもなかった。なぜこんなに感動してしまうのだろう。武藤に感情移入してしまうからだろうか。自分も、日常のしがらみから解き放たれて、ただ自分が正しいと思うもののために戦いたいと思わされるからだろうか。誰もが心の中では、武藤のような正義のヒーローになりたいと思っているのではないだろうか。

そしてまた同時に、現実世界にも武藤のような正義のヒーローの登場を、誰もが切望していると思う。

ぼくは政治にも経済にも詳しくない。アサミや武藤の話をなるほどと相槌を打ち、感心しながら聞いていた程だ。だが、今の政治家たちに武藤のような熱意がないことはなんとなく感じ取れる。日々世間を騒がせるのは、仄暗い政治の闇ばかりだ。 

この映画で繰り返し主張されている積極財政派が本当にこの国を救うのかどうかは分からない。ただ、停滞するこの国には変化が必要だと思う。多くの人にこの映画を観てもらって、議論を活性化させることが必要なのは間違いない。

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