第八章 傷⑪
やっとの思いで帰宅して、鏡の前に立った。
真っ白なガーゼがテープで固定されている。
そーっとそのテープを剝がしてみて、あたしは愕然としたのだった。
「……嘘……」
そこには。
あたしではないあたしが映っていた。
頬に、一本筋の……とても消えなさそうな傷が残っていた。
あたしは、思わずその場に座り込んでしまった。
ヘナヘナと、身体中の力が抜けるように。
信じられない、こんな傷。
そして、必死の思いでアイフォンを手に取った。
「せ、先生!さっきは症状も何も聞かなかったけど……この傷、消えるんですか?!」
必死になり、あたしは医者に尋ねた。
「縫わなかっただけ良かったですがね。多分、傷跡は残ってしまうと思いますよ」
無言のまま、電話を切る……。
こんな顔じゃ……。
外も出られないよ。
誰が悪いの?
あのギャル達?
鈴?
充?
一哉?
……あたし?
てか、一哉、朝来るって言っていたっけ。
こんな顔……見せられるわけがない。
明日は仕事。
こんな顔で……働けるわけがない。
あたしは、ただただとめどもなく流れてくる涙を止める事ができずにいた。
悔しくて……。
悲しいんじゃない。
悔しいんだ。
あたしのプライドは……。
あのギャル達に、ズタズタに踏みにじられたのだった。
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