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仮面をした男性(その5)

「都会で生きる男性の多くは仮面をかぶっている。やましいことがある者はたいてい仮面をかぶっている」

仮面をした男性は頭を切り替えた。
「じゃあ、次はあの小説について考えてみよう」と。
仮面をした男性は頭を切り替えた。
「じゃあ、次はあの漫画について考えてみよう」と。
仮面をした男性は頭を切り替えた。
「じゃあ、次はあのテレビ番組について考えてみよう」と。
仮面をした男性は頭を切り替えた。
「じゃあ、次はあの時事について考えてみよう」と。
仮面をした男性は頭を切り替えた。
「じゃあ、次はあの事柄について考えてみよう」と。
仮面をした男性は頭を切り替えた。
「じゃあ、次はこの間あった出来事について考えてみよう」と……。

仮面をした男性は何度も何度も頭を切り替えている。
何か困った事でもあったのだろうか?……。
基本、仮面をした男性が困るのは悪事(仕事)が行き詰まった時だろう……。
それなら、仮面をした男性がこのような行為を繰り返しているのは、世間的に良い事なのでは?……。

うーん……やっぱり、手放しでは喜べない……。
確かに仮面をした男性は困っているのだろうが、この場合、男性は自分が持っているたくさんの選択肢の中で単に都合が良いものを選んでいるだけのような気もするし……。
それに選択肢が多いということは、それなりにゆとりがあるということにもなるので、何だかんだ言っても、この男性は満たされているのかもしれない……。


それで、この男性はこれからどんな答えを出し、どう動くのか?……。


仮面をした男性は頭を切り替えた。
「じゃあ、次はあの作家について考えてみよう」と。
仮面をした男性は頭を切り替えた。
「じゃあ、次はあの商品について考えてみよう」と。
仮面をした男性は頭を切り替えた。
「じゃあ、次はあのキャラクターについて考えてみよう」と……。

それにしても、色々な対象が出てくるな……。
一体、この男性は何者なんだ?……。

仮面をした男性は頭を切り替えた。
「じゃあ、次は◯◯について考えてみよう」と。
仮面をした男性は頭を切り替えた。
「じゃあ、次は△△について考えてみよう」と。
仮面をした男性は頭を切り替えた。
「じゃあ、次は□□について考えてみよう」と……。

何だ!?……今度は聞き慣れなくて、変わってそうな名称の物?が出てきたぞ……。
この男性、意外と高度なことを考えているのかもしれない……。


「ちょっと、あなた…...」
はい?……私ですか?
「うん」
何でしょう?
「あなた、少し前に雑学がどうのこうのって言ってたよね?」
ああ……はい……。
「だから、その仮面の人が考えている事こそ雑学なんじゃないの?……」
ああ!……はい、そういうことですね!………。
「うん、そういうこと……」
ありがとうございます。何か、私すっかり抜けていました。
「うん、気づけてよかったね……まあ、がんばりなよ……」
ありがとうございます。
「うん……」

仮面をした男性は頭を切り替えた。
「じゃあ、次は仲の良い作家について考えてみよう」と。
仮面をした男性は頭を切り替えた。
「じゃあ、次は交流のある作家について考えてみよう」と。
仮面をした男性は頭を切り替えた。
「じゃあ、次は自分を評価してくれている作家について考えてみよう」と。
仮面をした男性は頭を切り替えた。
「じゃあ、次は自分の味方になってくれている作家について考えてみよう」と。
仮面をした男性は頭を切り替えた。
「じゃあ、次は自分と考えが合いそうな作家について考えてみよう」と。
仮面をした男性は頭を切り替えた。
「じゃあ、次は自分の悪事(仕事)に付き合ってくれる作家について考えてみよう」と……。

「都会で生きる男性の多くは仮面をかぶっている。やましいことがある者はたいてい仮面をかぶっている」


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