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"エヴァ"と"ぼく"の14年間


シンエヴァが公開されて早4ヶ月が経とうとしている。
終映が迫る中、先日10回目の鑑賞を終えた。

同じ映画を映画館で10回見るなんて最初で最後だろうと思う。正直言うと7回目以降はもうほとんど特典目当てでしかない。(それにしても最終特典のポスターが絵柄ランダムなのはもうなんぼなんでも興行収入100億取ったるぞという強い意志を感じる)

とは言え、長年新劇場版シリーズを追い続けた僕にとって、今回の完結編は複数回見るに値する作品であることは間違いない。

エヴァにハマったのは僕がまだ中学生の頃。それから現在まで14年間、"エヴァ"ほど一つのコンテンツに対して長期に渡りのめり込んだ(時には離れ)事は他に無いと思う。そこで、この14年の歴史をなんらかの形に残したく、今回noteへ投稿する事にした。
※考察や批評は一切なし。ただの思い出話です


ファーストインパクト:出会い

エヴァとの初対面は小学生の頃だった。
父親に連れられて名古屋市大須にある電気街へ行った際、ある店内のテレビで流れている映像を見たのが最初。今でも覚えているのはそれが"劇場版Air/まごころを君に"の弐号機VS量産型のシーンだったからだ。
当時、アニメなぞ夕方アニメかドラゴンボールくらいしか知らない無垢なガキんちょにとってはあまりにも刺激が強すぎた。
その後、無事トラウマとなり血が出るロボットアニメとして脳内に刷り込まれた。

セカンドインパクト:再会

二度目の出会いがあった。
中学1年生の時、友達の家で貞エヴァ(漫画版)の6巻を読んだ。アニメ版でいう18話。主人公シンジのクラスメイトであるトウジが参号機のパイロットに抜擢され搭乗するも敵の使徒に乗っ取られてしまい、結果シンジの初号機によって参号機ごと殲滅されてしまう話である。(漫画版ではパイロットのトウジも死亡してしまうさらにヘビィな展開)
そう、またもトラウマ回である。

しかし、中学生という多感な時期の僕はこれに対して不快感よりももっと見たいという好奇心に駆り立てられた。
中坊のエログロ探求心は伊達じゃない。

サードインパクト:入信

この再会を機に、"TV版新世紀エヴァンゲリオン全26話"+"劇場版Air/まごころを君に" を履修。
そこからはもう完全にエヴァ狂いと化した。

朝読の時間にはエヴァの謎本を読み耽り、
国語の自由作文ではエヴァについて語り散らし、
カッターナイフを手にしてはガギエル戦の弐号機の真似をするなどした。

もちろんクラスメイトからはいじられ、国語の先生からは冷ややかなコメントをもらい散々である。しかし、そんなことを気に留めるほどの正気は既に残っておらずひたすらにのめり込んでいった。
自分と同じ14歳の内向的な主人公、難解なストーリーと用語、エロスとグロ。とにかくエヴァの持つすべての要素が当時の僕にぶっ刺さりまくった。

新劇場版:破 公開

そして、エヴァ狂いの最中、"新劇場版:破"が公開される。受験を控えた中3のテスト期間中だったが、前作"新劇場版:序"はタイミングを逃し映画館で見れていない事もあり、居ても立っても居られず授業終わりに映画館へダッシュした。初めて映画館で見るエヴァ、新キャラの登場によるTV版とは違う新展開等、事前情報だけで毎日がワクワクだった。(特典付き前売りに並んだり、毎号のEVA-EXTRAの為に電車でアニメイトへ繰り出したのはいい思い出)

そして、はちきれんばかりの期待を胸に見た"破"は文句なしの傑作だった。
当時、アスカは俺の嫁(こんな言い回しあったね)と豪語していた身としては3号機のあの展開に胸が締め付けられ、ラストの覚醒初号機(シンジ)には鳥肌が止まらなかった。
初めて映画館で涙した。
サントラを聴きながら脳内で映像を流せる程繰り返し見に行った。あの時期に破を見れた事は間違いなくそれまでの人生で一番の映画体験だった。それくらい破の感動は大きかった。
破に触発され、ますます沼へとハマっていった僕は、誇張なしで年中エヴァのことを考えていた。

ちなみにその年の受験、しっかり志望校を落とした。

新劇場版:Q  公開


高校生になり、エヴァ以外のアニメを貪るように見た。この頃には完全に立派なヲタクとなっていた。深夜アニメをリアルタイムで見る為夜更かしをしたり、アニメのグッズを買い漁り使うことのないクリアファイルばかりが増えていった。

自分の中のトレンドが半期毎に移り変わるようになり、エヴァ熱は中学時代からしたら下火になっていた。そんな中、"新劇場版:Q"の公開が決定した。
たしか公開日決定の特報は終始鍵盤のCGが流れているだけで、それ以降金曜ロードショーで流れた冒頭映像を除き、あなど事前情報なしだったと記憶している。
謎に包まれたまま公開が迫るにつれ、ふつふつと燻っていたエヴァ熱に再び火が灯った。
公開初日、土曜日ではあったがあいにくの登校日。初めてのズル休みを決行し、初日初回上映を観るため早朝から映画館へ並んだ。こういう時のオタクの行動力はほんとすごい。

結果、観た感想は"よくわからん"だった。
単純に、作中のシンジ君の如く物語に追いつけなかった。TV版とは全く別物の超展開に頭が処理しきれず、槍を抜けだの抜くなだのであれよという間にエンドロール。
複数回見たが、結局ピンと来なかった。謎が謎を呼ぶ展開にこれぞエヴァ!とも言えず、かと言って"駄作"と切り捨てることもできなかった。
結局のところ、"破"のようなエンタメ全振りな作品を期待してしまっていたのだ。
あろうことか、エヴァでそれを見たいと思っていた。
あの、難解でアングラな魅力に惹かれていたはずのエヴァで。

そんな"Q"だが一つ大好きなシーンがある。
物語のラスト、希望を失ったシンジをアスカが引っ張り、その後をレイがついていき、3人が赤い大地を歩いて行くシーンだ。辛い場面の多いQだが、その最後のカットがある事で救われた気分になった。劇中のカヲル君の言葉通り、少なくとも3人にはまだ希望が残されているような、素敵な終わり方だ。


※ちなみにQは見返すたび好きになり、シンエヴァ鑑賞後に見たら更に魅力が増すとんでもスルメ映画だった


空白の8年間


大学生を経て社会人になった。
その間、エヴァを含むアニメに対しての興味は少しずつ消え失せていった。

シンエヴァ公開までの8年間、エヴァに関するアナウンスがほとんど無かった事も要因の一つだろう。(Blu-rayBOX発売や貞エヴァ完結等はあったが)

やがてシンエヴァ冒頭映像が公開されたが、冷却期間が長すぎたせいか、特に湧き上がるものはなかった。

が、やはりそこは腐ってもエヴァオタ。なんだかんだで公開日が近づくにつれ、そわそわし始めた。

伝説のロックバンドが初期メンバーで再結成を果たすように、
長いブランクを経てかつてのスター選手が現役復帰するように、
昔夢中になっていたあの娘と8年越しに同窓会で再会するように、
我が青春を捧げた作品が「お待たせ」と完結編を引っ提げて帰ってくるのだ。
そう、期待と不安しかない。

土壇場での公開日延期も相まって、ボルテージは最高潮となった。


シン・エヴァンゲリオン 公開


時に、西暦2021年
3月8日 月曜日、初日初回上映。

Q公開日に学校をサボった高校生は、
やがて大人になり会社に有給申請を行い、
ちゃんとした休みを取るまでに成長していた。

映画館は前倒しオープン。グッズ販売には整理券を配布。長蛇の列に並ぶも上映間に合うかドキドキ。ポスターとパンフレット、あと勢いで原画集も購入。
このお祭り騒ぎ感が久しぶりで嬉しかった。

ドリンク片手に座席に座る。
食べる暇はないだろうからポップコーンは買わない。
いつも通り近日公開映画の予告が流れるも全く頭に入ってこない。

"これまでのヱヴァンゲリヲン新劇場版"が終わり、
マリの歌う''真実一路のマーチ"と共に東宝のオープニングロゴが流れ……

(ここから先の2時間35分は長くなるので割愛)

終劇


白バックに"終劇"の二文字が映し出された。
これを見るのは"Air/まごころを君に"以来だった。

エヴァが終わった。本当に終わりやがった。
完結編とは名ばかりの総集編でもなく、
途中で"魂のルフラン"が流れる事もなく、
真っ当に終わった。

初見では理解できなかった部分もあったし、
渚司令という終盤のパワーワードが頭から離れなかったり、
恥ずかしながら"ケンケン"にモヤっとしてしまったり、
何より大好きな作品が綺麗さっぱり終わったという事実、色んな感情が渦巻いていた。
そんな中、一番クリーンな場所から自然に出てきた気持ちは、"ハッピーエンドで良かった"だった。
なんだかアホみたいだが本当に心の底から思った。
みんなが救われて良かった、と。

思えばチルドレン達と同じ14歳という多感な時期に見たエヴァンゲリオンは、難解なストーリーやグロテスク、エロティックな描写、暗く救いのない展開。そういった部分に魅力を感じていたし、「気持ち悪い」で締めるラストにゾクゾクした。

今でもそのアングラな雰囲気は好きだし、魅力の一つであることは理解できる。
しかし、14年前と今の自分では考え方も趣味趣向も変化しているわけで、バッドエンドよりハッピーエンドを望むようになった。
(個人的にEOEがバッドエンドとは思っていない)

この、今の自分が望む形のエンディングを"エヴァンゲリオン"で見れた事がたまらなく嬉しい


あの場所、あのアスカに対してのシンジのあの言葉を聞けて良かった。(東京ラブストーリーではない)

"ここでしか生きられない"レイの、そこじゃない場所で生きる姿を見れて嬉しかった。

二人の写真という宝物と共に最後まで戦ったカッコいいミサトさんに胸が熱くなった。

ゲンドウが吐露した想いには呆れながらも、彼の初めて見せた人間臭さにグッと来た。

そして、シンジは自分の意思で再びエヴァに乗り、父と対話し、最後は文字通りみんなを救済し、自身もマリによって救われる。

本当に、この上ない救いの物語だ。

僕の中では14年、月並みな表現だがエヴァと共に成長し、最高のフィナーレを見届けることができ幸せだ。


青春時代を共に過ごせて本当によかった。
14年間ありがとう、エヴァンゲリオン。

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