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美少年とお近づきになりたいのに、きっかけが掴めない


ベニスに死す / 1971

映画が面白かったとか面白くなかったとか、内容のことはともかく、あの主人公のおっさんはただのストーカーよ、傍から見れば。
ただずっと美少年を追いかけて彷徨ってるだけ、みたいな。
自分から声をかけることもできず、かといって自分と関わることもないだろうし、っていい意味で諦めることもしないで。
「あの子は今日どこにいるんだろう? 家族とどこに行くんだろう? なんであの子は自分のことを見てくるんだろう? ああもう気になる! 気になって気になって君のことしか考えられない!」って毎日毎日男の子の姿を探してしまう感じ。
たしかにあの男の子は美少年だった。
まあ個人的に言えば、美しすぎる顔は意外と惹かれないんだけど、まあそれはいいか。

あの子は絶対見られてることを意識してる。
「何見てんだこのおっさん、気持ちわりい」っていう感じじゃなくて、「おっ今日も見てる。おっ今日も付いてきてる。一体いつになったら話しかけてくるんだこのおっさん」ぐらいまでは興味を持ってる感じがする。
とはいえそこはただの好奇心的なものでしかなくて、誘ってはいるけど自分からは仕掛けない。
興味がある方から話しかけろよ、ぐらいにしか思っていないはず。
逆に何日も見られて付きまとわれて、話しかける気あんのかこいつ、さっさと話しかけてこいよ、ぐらいは思ってるかもしれない。
意外とあの映画の中では何日も経ってるはずなので、そろそろイライラしててもおかしくない。
それにしても彼の登場シーンはスポットライト当たってた。
まあ周りのご婦人方が色調落とし目の中で、彼だけが真っ白の服を着てたから、それだけで目立ってたんだけど。

こういう中年以降の男性が 10代の若い男子を遠目から眺めて愛でる、みたいな構図は昔にもあったらしい。
よくは知らないけど、紀元前のギリシャとかローマあたりでは、可愛い美少年を側においたり愛でたりしていたらしい。
それが男性愛まで含んでいたかは分からないけど、「美しい」ものは追い求めていたらしい。
音楽や絵画と同じように、「若さ」も美しさの一つとして考えられているから、若ければ若いほど良い。
若くて顔もスタイルもいい男子なんかは女子と同じように神聖なものである、みたいな感じで、美少年は愛でられていたらしい。
昔はそういう文化だったから普通だったけど、今はそういう人はちょっとオカシイとか気持ち悪いとか思われても仕方ない。
特におっさんから目をつけられるってそれだけで気持ち悪いのに、ストーカーまでされるとちょっと引くでしょう、って感じはする。

でもまあ自分好みの美少年が同じホテルに泊まっていて、見るタイミングがあったらそりゃ見ちゃうよね。
自分だって見るよそりゃあ。
そういう時に何気なく話しかけられる性格だったら良いなあ、って思うことはある。
だからこのおじさんのように話しかけたいけどなんて話しかけたらいいかわからない、っていう気持ちはよくわかる。
ストーカーしたい気持ちもよくわかる。
けどさすがにちょっと行き過ぎでは、と思うのであった。

それにしても上流階級の人たちはあんなに毎回着飾ってすごい。
それが上流のマナーでありエチケットであり証でありスタイルなんだろうけど、ピシッとした格好じゃないとビーチにも出られないなんてのはちょっと、大変だ。

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