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観た映画の感想 #42『岸辺露伴 ルーヴルへ行く』

『岸辺露伴 ルーヴルへ行く』を観ました。

監督:渡辺一貴
脚本:小林靖子
出演:高橋一生、飯豊まりえ、木村文乃、長尾謙杜、安藤政信、美波、他

相手を本にして生い立ちや秘密を読み、指示を書き込むこともできる特殊能力「ヘブンズ・ドアー」を備えた漫画家・岸辺露伴。青年時代、露伴は淡い思いを抱いていた女性から、この世で最も邪悪な「最も黒い絵」の噂を聞いた。それから時がたち、その絵がフランスのルーブル美術館に所蔵されていることを知った露伴は新作執筆の取材と、かつてのかすかな慕情のためにフランスを訪れる。しかし、美術館職員に「黒い絵」の存在を知る者はなく、データベースによってヒットしたその保管場所は、今はもう使われていないはずの地下倉庫「Z-13倉庫」だった。
(映画.comより)

https://eiga.com/movie/98646/

TV映画は基本的に面白い

「TVドラマの劇場版」って観に行く人にとっては全て面白いものだと思います。だってドラマが面白いと思ったから映画も観に行くわけだし。極論を言えば映画としてよく出来ている必要もそんなにない……というか基本的にはドラマの味わいをそのまま見せてくれればいいのであって、80点もあれば十分満足、そこに加点要素があれば良い拾い物したなあラッキー! くらいのテンションで観に行くのが丁度いいくらいだと思ってます。

今回で言えば小林靖子さんの脚本×高橋一生さんの露伴という座組に加えてドラマ3シーズンぶんの圧倒的な信頼があるわけで、劇場版になろうと「実写版岸辺露伴」の面白さに関しては何の心配もしてなかったわけです。ドラマ版のファンとしては。

個人的な感想~良かったところ編

それでも今作には劇場版で良かった、テレビではなく映画館で観る作品だからこその良さが一つ確実にあって、それはです。

具体的に言うとルーヴル美術館パートでのキャラクター達の足音なんですけど、「コツーン、コツーン……」っていう硬い靴音が、ものすごく天井が高くて広い空間に響いてるのを肌で感じるあの感覚。あれは家のテレビでは絶対に味わえないし、個人的にはあれだけでもう映画館に来た意味あったよ! って大興奮しちゃいまして、なんていうか、その、下品なんですが、フフ……

高橋一生さんと飯豊まりえさんは勿論ドラマから引き続き文句なしに良かったんですけど、ヤング露伴の長尾謙杜くんがまた予想以上に良くて。今までそういう風に見たことなかったんですけど、この世界観の中に入ると思ってた以上にジョジョ顔なんですよね。高橋さんの露伴があくまで原作の岸辺露伴のエッセンスを最大限に吸収した実写版の岸辺露伴なのに対して、長尾くんの露伴は原作の岸辺露伴の実写化って感じ。ニュアンスとしてすごい微妙な違いなんですけど……

そんなヤング露伴をファムファタール的に惹きつける木村文乃さんがまた良かった。ああいう役のイメージそんなになかったんですけど、ちょっと不健康そうな感じなのも現世から浮いた存在感があったとても良かった。そういえば『麒麟がくる』の時も晩年の熙子さんが妙に色っぽかったな……
あんなに魅力的な”題材”を目の前にして「読まない」を選択する露伴の青さも良かったですね。これは長尾くんの露伴だから出せた味わい。高橋露伴は相手が内田理央さんでも容赦なく読んでたので(笑)

原作だと露伴一人でルーヴルに行ってるのを泉女史との二人旅にして、美術館側のキャラクターとのやり取りを増やしたりしたのは2時間の映画にするための肉付けの意味合いも多分にあるとは思うんですが、これも良かったですね。原作だと露伴が脳内で考えて一人で結論を出すような場面を、泉女史が何か言う→それに対して露伴がツッコむって流れにして、説明台詞っぽさを出さずに会話で物語を進められるようにしたのは本当に画期的な発明だったと思います。そのせいで泉女史がどんどん「究極の無垢、究極の善」みたいなキャラクターになっていってますけど(笑) 今の泉女史ならジョジョ本編の世界に行っても死ななそう。

個人的な感想~原作のほうが好み編

ヤング露伴時代の過去回想とか仁左衛門が生きてた頃の話とかは俳優さん達の演技自体は良かったんですけど、映画全体の尺に対してちょっと重いかなーと思わなくもなかった。特に仁左衛門の話は映画の「1から100まで全部見せます!」って描写だと説明過多に感じてしまって、想像の余地がある原作のほうが個人的には好みでした。
ただ原作だと若干の唐突感がある露伴と絵の因縁を、贋作絵画の闇取引グループと絡めてミステリ風味に改変したのはドラマ的な味付けとして好きなものだったのでこれは良くも悪くもという感じ。

今年の年末も楽しみだ

今回の映画で海外ロケもできたことだし、『懺悔室』の実写化もいけるはず。『動かない』の原作ストックもまだあるし、ジョジョ本編のエピソードも4部のメインキャラクター抜きでドラマ化できたんだから「ハイウェイ・スター」の回とかもやりようによっては十分いけると思うんですよ。ここ数年ですっかりNHK年末の風物詩になった感もありますし、今年もきっとやってくれることでしょう。むしろやって欲しい。お願いしますよ!

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