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やさしさ検定


ちょうど最近、「やさしさ」にまつわるこんな夢を見た。
最初に夢の話ですよ、と言ってしまうのはどうなのかとも思ったのだが、読み進めた物語が夢オチだと分かれば一気に“さめて”しまう気がして……苦笑 だから最初に書いておこうと思う。

こんな夢を見た。

【やさしさ検定へ受験される方はこちら】という立て看板。       進んでいくとそこには受付の人、ではなくロボット。背丈は100㎝位で銀色のいかにもロボットだ。そのロボットがタブレットのようなものを差し出してくる。画面には「やさしくしてください」とそれだけが書かれている。戸惑いながら周りを見渡す。

《突然、場面変わる》
私は電車の中、座っている。すると目の前におばあさんが現れる。私は急いで席を譲る。おばあさんに「どうもありがとう」と言われた。嬉しくなる。
ロボットがピンポン!という軽い音とともに赤丸を掲げる。正解のようだ。次に進む。

《再び、場面変わる》 
今度は外だ。二人組の外国人観光客が周りを見渡して困った様子でいる。
私はその人達に向かって歩いていき、英語で話しかける。どうやら行きたいお店の場所が分からなくて困っていたようだ。私はすらすらと英語で道を教える。(ん?私こんなに英語話せたっけ?まあいいか)
「Thank You~!」と言われ、笑顔で手を振り別れる。良かったー。
するとすかさず、ロボットがこちらにやってきてピンポン!という軽い音を出す。(だんだん不気味になって来たな・・・・・・)
ロボットは「デハサイゴノモンダイデス」と、抑揚のない機械的な声で言う。お、はじめて喋った。

《またまた、場面変わる》 夢だからずいぶんと都合が良い。
部屋に人が何人かいる。同じ受験者のようだ。最後は一斉審査なのかと思う。ん?これは学校だ。学校の教室。
私は待ち構える。やさしさ検定に受かるために必死だ。
するとその教室の隅にいた一人の少女がしずかに泣き出す。       何か言いたげに唇を震わしながら。
みんなわれ先にとその少女のもとへ走りだす。私も夢中で走る。
私が一番だ。「どうして泣いてるの?大丈夫?」 
よし!これで合格だ!そう思って私は思わず笑みをこぼした。
するとロボットは床を滑らせながらこっちへ向かってくる。ブー、
「不合格です。不合格です。不合格です。不合格です、、、、、、」   バグが起こったようにロボットは抑揚のない声で言い続ける。
だんだんとその声はゆっくりになり低くて重い声になる。        「ふごうかく~。ふ~ごうかく~。ふ~ご~う~か~く~~~」    (やめて。やめて。やめて。)やめて!


そこではっと目が覚めた。スマホを見ると夜中の3時だった。汗びっしょりである。なんか心がざわざわするような変な夢を見てしまったなと思った。
でもこの奇妙な夢が何だか気になった。                なぜこんな夢を見たのだろうか。                   最後の正解とは何だったのか。                    やさしさとは何かを考える。暗闇の中。

私は最後、受かるために必死だった。もちろん夢の中での話。
その少女のことは考えていなかった。どうして泣いていたのか、何か言いたいことがあったのか、ちゃんと心から聞こうとはしなかった。      軽いピンポン!という音、それを聞くためだけにやさしくしたんだと思う。
私の最後の笑みがあまりに不気味だった。どこかで見たことあるような笑み。また心がざわざわとなった。

ロボットは行動そのものではなく、私の心を審査していたのだ。     やさしい心で接しているか、相手と心を通わせているか。        実際には誰にも審査することができない心の中を。

やさしさとは、心から出てくるもの。                 誰かが見ているからとか、そうしなければならないとかではなくて、その人のことを心から思ったときにやさしさは生まれるのだと強く気付かされた。やさしさとは何かをロボットが私に教えてくれたのだ。         あんなに無機質なロボットだったのに(笑)              

ありがとう。ロボット。                       不思議とまた無機質でやさしいロボットに会いたくなった。

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