見出し画像

もう少し楽に買い物がしたい

その商品をなぜ買うのか。どうして買いたいのか。理由がないと買い物ができない人がいる。まあつまり自分のことなのだけど。
例えば、ほしい服が合ったとする。すると、頭の中でこんな会議が行われている。

ポジティブな自分:この服可愛い!
ネガティブな自分:けど予算オーバーだ。
ポジティブ自分:でもこの組み合わせ素敵!
ネガティブ自分:それ以外にどの服と組み合わせていいかわからない。
ポジティブ自分:それに今家に大量に服があるし。

こうしてネガティブ意見が過半数を占めることで「悩んだけど買わない」という状況が生まれるのである。

ネガティブ意見が半数を占めてなくても買うのに躊躇するときがある。1万円以上の買い物をする時だ。
それがパソコンや冷蔵庫など生活必需品であれば特に迷わないが、ゲーム、CD、DVDなど、娯楽とカテゴライズされるものを買う時はどうしても躊躇してしまう。わかっている、自分が買うことで制作者がちょっといいご飯を食べられるようになったり、ちょっといい機材が買えるようになったりするのはわかってる。そしてまた自分にとって、日本にとって、世界にとって忘れられない楽曲やゲーム、世界が広がっていくのはわかっているのだ。なのに、躊躇してしまう。どうしてももう一押し、背中を押してほしくなってしまう。

星野源さんのライブDVDを買う時も、同じ心境だった。総額3万円。自分にとっては大金である。
実は以前、「ご祝儀」という名目で星野源さんのCDを大人買いした過去がある。その時の総額も3万円だった。今回も「ご祝儀」という名目で飼おうとしたのだが、よく考えてほしい。もしここで「何がいけないのか?」と首を傾げた人、ぜひこのマナーは覚えておいた方がいい。

結婚で2回以上言葉を重ねるのは良くないとされている。結婚を2回以上するということは、離婚をしなければいけないからだ。だから結婚式場で「なるほどなるほど」なんて2回頷いた日には、豪華な食事が取り上げられ屈強な男たちに両腕を拘束されてブーケトスのようにぽいと放り投げられるのである。

「しまった、ご祝儀という手はもう使えないぞ」これはもう、口に出して言うほどしまったと思った。

これは困った。いやはや、本当に困った。「そんな余計な事考えずにぽちっと買っちゃえばいいじゃない」という意見もわかる。なんなら数秒に1回脳内の自分が同じことを言っているのである。「You、欲しいなら買っちまえよ」
だがしかし、これをきっかけに買いたいものを無秩序に買いあさる魔物になるのだけは避けたい。お財布も貯金箱も口座もすっからかんになって、買いあさったことを後悔するような自分にだけはなりたくない。それは制作者様にも大変申し訳が立たない。

それはもうよく考えた。よくよく買ってもいい言い訳を考えた。買ってもいい言い訳を考えるぐらいなら本当に買っちまえと何回も思うのだが、それに気づかないぐらい必死に買ってもいい言い訳を考えた。考えて5日立った日のことである。

奇跡の連続が起こった。

奇跡その1。星野源さんのオールナイトニッポンというラジオが毎週火曜日の深夜放送されているのだが、9月4日に初めてのイベントが行われる。そのイベントグッズの販売が現在始まっており、そこではイベントグッズはもちろん、自分が買おうと思っていたライブDVDも同時に買えること。

奇跡その2。Wi-Fiの速度制限とかいう意味が分からないイベントが発生しており、インターネットで動画はおろか音楽でさえもなかなか聞けないこと。家にはテレビがなく、家にいる時間が暇で暇で仕方がないこと。

奇跡その3。スーパーが奇跡の大安売りをしてくれたおかげでしばらく買い物に行く必要もなく、2週間は引きこもりができること。

「これは神がライブDVDを買えと言っていると思いましたね」晴れやかな気持ちで購入完了ボタンを押した自分は、のちにそう語る。

DVDが届くまであと少し。届くまでも、届いてからも、宝物のような時間は続くだろう。

この記事が参加している募集

買ってよかったもの

熱量高めのエッセイを続々更新予定です。お仕事の依頼はなんでも受けます。なんでも書きます。ただただ誠実に書く、それだけをモットーに筆を執ります。それはそれとしてパソコンが壊れかけなので新しいパソコンが欲しい。