後がない無職男。再就職をかけた面接【転落人生-倒産編4/8】
ここまでのお話と今回のあらすじ
バイト帰りに都会のビル群を眺めては絶望する毎日。この時の光景はいまだに忘れることができない。
そんななか、やっとの思いで見つけたお宝求人。この求人に出会えたのは奇跡かもしれない。そして、この内定が獲ることができれば、狂った人生の歯車が元に戻るはず。
まずは書類選考を突破するために応募書類の推敲を繰り返し、ダメもとで応募すると、まさかの書類選考通過の連絡が！
やっとの思いでつかんだ面接の機会。
これを逃せば、もう後はないかもしれない。
はたして、無職40代男は内定を勝ち取ることができるのか？
面接の準備は万端か？
面接の数日前に会社の入っているビルまで足を運び、当日に迷子にならないよう道のりを調べてみた。
そのビルは駅から歩いて10分の距離にあった。いよいよ数日後、ここで人生をかけた面接が行われる。
そう思うと、気が引き締まる。
まだ面接を受けてもいないが、ここで働く自分の姿を想像するとモチベーションが上がった。
本当なら、この後はどこか近くの喫茶店で一服したかったが、万が一、関係者が近くにいてはいけない。
何しろ、先方は履歴書でこちらの顔を知っているのだから。
そこで、数駅離れた駅で降りて、そこにある喫茶店で一服することにした。
アイスコーヒーをすすりながら面接の質問内容とそれに対する回答を交互に頭に思い浮かべてみた。
おおむね問題はなさそうだが、どうしても不安が拭えない。
面接当日
あらかじめ道順を下調べしておいたおかげで、当日は道に迷うことはなかった。
インターホンで面接に来たことを告げると、受付の女性が出てきて部屋に案内してくれた。椅子に座って緊張しながら待っていると、5分ほどして面接官2人が部屋に入ってきた。
もしここで働くことになれば、おそらく、この二人が私の上司となるのだろう。
しかしこの二人、やや顔色が悪い。寝不足なのか？寝不足になるほど仕事が忙しいのか？
ついつい、色々なことを勘繰ってしまう。
そして一見すると不愛想な感じのする人たちに見えたが、実際に話してみるとそうではなかった。どちらかというと、柔らかな物腰だった。
面接自体はオーソドックスなもので、志望動機や前職の退職理由など一般的な内容を質問されたが、時折、突っ込んだ内容もあった。
とっておきの面接対策
この面接には自分なりの対策をたてていた。その対策とは、ありのままを話すという作戦だ。
面接では通常、ネガティブなことは前向きな内容に置き換えるのがセオリーだ。しかしそんなことは相手方も承知のうえ。
わざわざ遠回りなことを言うとかえっていろいろと詮索される。そこで私はこれまでのことをありのままに話すことにした。
新卒入社の会社を辞めてまで大学院に入学したものの、そこを中退した理由。そして、その後に入社した会社では最大限努力してみたものの、結局やりがいを見出せず、そのうえ半ば干され気味だったこと...
一見、マイナスなことばかりで逆効果のようにも思えるが、そこに私なりの狙いがあった。
それは、他の応募者との違いを作るためだ。これが本来の意味での『違い』なのかと言われれば、正直言って微妙だ。
むしろ悪い意味で印象に残ってしまう。
しかし目立った経歴がない以上、他の人と同じような受け答えでは、違いを生み出せない。そこで、通常のセオリーに逆行する形で、腹を割ってありのままをさらけ出すことにしたのだ。
名付けてハイリスク・ハイリターン戦法。逆張り先方ともいう。今思うと、半ばヤケクソだったのかもしれない。
これが功を奏したのかどうかは分からないが、後日、一次面接通過の連絡があった。
このハイリスク・ハイリターン戦法が効果を発揮したのもきっと、この会社となにかの縁があったからだろう。
ただ、この面接は一次面接だ。次の最終面接がまだ残されている。
まだまだ油断はできない。
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