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「箱にならない」が告げられた、未利用魚問題の新たな側面【No Fish No Life活動日記 vol.8】

こんにちは!
未利用魚加工事業「No Fish No Life」のメンバーの乙川 翔太郎です。
私たち「使われないをなくす。〜自分たちで獲った資源への責任を持つ〜」というビジョンを掲げて未利用魚の加工事業に取り組んでおります。

最近はメンテナンス期間で漁が少ない日が続いていましたが、今週は久しぶりに漁があり、加工作業を行うことができました。今回も新たな発見がたくさんありましたので、その報告をさせていただきます!

今週の活動もぜひご覧ください!
楽しんでお読みいただければ幸いです!


①予期せぬ天候の問題

今回も早朝7時に大敷網での仕入れを予定していましたが、大雨により海が荒れ、2時間近く漁が遅れるという事態に遭遇しました。自然の力には逆らうことができず、このような天候による予定変更も今後起こりうることを学べただけでも大きな収穫でした。

改めて、この大雨の中で漁を行う漁師さんたちの姿に尊敬の念を抱かずにはいられません。本当にいつもありがとうございます。
9時過ぎになってようやく仕入れを終え、その後加工場に移動して作業を開始しました。

②魚種ごとのメニュー開発と課題発見

本日仕入れた未利用魚①
本日仕入れた未利用魚②

▪️今回仕入れた魚
・サバ
・カワハギ
・イサキ
・アカバ
・イシガキダイ

普段から仕入れているイサキやカワハギに加えて、本来であれば高価で取引されるイシガキダイや、傷がついて出荷できないアカバなども仕入れることができました。

この魚が未利用魚になってしまう理由

・サバ

綺麗に並べたサバ

海士町ではサバが多く獲れるシーズンがあり、そのシーズンには大量のサバが未利用魚になることが予測されます。この大量のサバが未利用魚になってしまう理由は箱いっぱいに詰めても出荷しても値がつきにくい傾向にあるとのことでした。配送料の関係で本土なら出荷できるものが全部未利用魚になってしまうのは、まさに離島ならではの未利用魚問題だと感じました。

サバには栄養価が高く、特にオメガ3脂肪酸などの貴重な栄養素が豊富に含まれています。このような優れた特徴を持つ魚が使われないのは非常にもったいないので、今後はメイン商品として展開していきたいと考えています。

試作品&僕らのまかない。

・アカバ

傷がついて出荷できないアカバ

アカバは隠岐諸島の海士町で水揚げされるカンパチの若魚の呼び名です。今回仕入れたアカバは傷がついてしまっているため市場に出すことができません。しかし、味には全く問題がないため、十分に食用として活用できます。

このように見た目の問題で市場に出回らないものの、十分に美味しく食べられる魚がたくさんあることを、この事業を通じて実感しています。私たちは、このような市場価値を見出されていない魚をしっかりと活用する活動を続けていきたいと思います。

・イシガキダイ&カワハギ

立派なサイズのイシガキダイ(未利用魚)
立派なサイズのカワハギ(未利用魚)

イシガキダイは、暖かい海域に向かう高級魚の一つです。 体長60cm前後まで成長する大型の魚で、体側面はから見て楕円形で、銀白色の地に黒い縦縞模様が特徴です。

主に岩礁域に生息し、サンゴ礁の周辺でもよく見られます。 名前の由来は、石垣(岩場)付近に生息していることから付けられたと言われています。

身は白身で、脂が程よくあります、透明感のある上品な味わいが特徴です。 刺身、炙り、煮付けなど様々な調理法で楽しまれ、特に刺身での人気が高いです。

今年は養殖も行われていますが、天然物は数が少なく、高値で取引される高級魚として知られています。沖縄や南西諸島では「グルクン」の仲間として親しまれています。

イシガキダイの説明

③「箱にならない」という新たな課題発見

カワハギ、イシガキダイが未利用魚になった理由

今回の活動で特に印象的だったのは、漁労長の大窪さんから聞いた「箱にならない」という未利用魚が発生する新たな理由でした。

通常、魚は箱単位で出荷され、1箱あたり1050〜1200円ほどの経費がかかります。市場では箱ごとに取引が行われ、箱の中身を分けて購入することはありません。例えば、イシガキダイは通常キロ1,000〜2,000円で取引される高級魚ですが、少量しかない場合は約500円程度まで価値が下がってしまいます。

さらに、異なる魚種を混ぜて出荷すると単価が下がってしまうため、イシガキダイはイシガキダイだけ、カワハギはカワハギだけというように、魚種ごとに分けて出荷する必要があります。

この「箱にならない」という問題は、特に小規模漁師さんが抱える大きな課題となっています。良質な魚を釣っても、一匹では販売方法が限られてしまうのです。

カワハギとイシガキダイ

過去には海士町全体の漁師の魚を集めて効率的に同じ魚種を箱にまとめる試みもあったそうですが、漁師ごとの魚の管理や品質の差を区別することが難しく、継続することができなかったとのことでした。

このような現状を知ることで、改めて私たちの活動の意義を見出すことができました。規模の問題で市場に出回れない魚たちに、新たな価値を見出していく。それこそが私たちの使命なのだと実感しています。

④商品開発への新たな挑戦

今回は2つの新商品開発に挑戦させていただきました。

イシガキダイを捌く様子

・こじょみそを使ったサバの味噌煮

海士町の誇る特産品「こじょうゆ味噌」を活用し、サバの味噌煮を試作してみました。商品化を見据え、食べやすさにこだわり、腹骨や中骨まで丁寧に手作業で取り除く工程を取り入れています。既存の味噌煮とは一線を画す、海士町ならではの商品に仕上げることを目指しています。

・地魚3種の漬けパック(アカバ・カワハギ・イシガキダイ)

地元で獲れる上質な魚を活かした漬けパックの開発に取り組みました。アカバ、カワハギ、イシガキダイという異なる食感と味わいを持つ3種の魚を使用することで、海鮮丼などさまざまな料理に展開できる可能性を秘めた商品を目指しています。

両商品とも冷凍保存し、来週の試食会で味の確認を行う予定です。未利用魚の新たな可能性を引き出せる商品として期待を寄せています。

パック詰めした試作品

本日の感想

今週の活動を通じて、未利用魚が発生する構造的な問題について、より深い理解を得ることができました。特に「箱にならない」という市場取引の現実は、私たちの活動の方向性を考える上で重要な示唆を与えてくれました。

このような課題に対して、私たちができることは何か。それは、規模の論理では救えない魚たちに、新たな価値を見出していくこと。そして、その価値を多くの人に伝えていくことなのだと考えています。

引き続き、応援してくださる方々への感謝を忘れず、一つ一つの発見を大切にしながら活動を続けていきたいと思います。

改めて今後とも「No Fish No Life」をよろしくお願いします。

最後まで読んでくださりありがとうございます。

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